チチュウカイモンクアザラシ、まだ繁殖中
翻訳協力:小林 木綿子、校正協力:久野 陽子
2014年11月27日 IUCN Redlist News Release
Save Our Species(SOS)から助成を受け、IUCN(国際自然保護連合)の一員でもある自然保護団体CBD-Habitatでプロジェクト技術員を務めるMercedes Muňoz Caňas氏が、モーリタニア・イスラム共和国のカボ・ブランコにあるMediterranean monk seal(学名:Monachus monachus、チチュウカイモンクアザラシ)の保護区から心強い知らせを伝えている。
プロジェクトチームの調べでは、2014年に保護区の群集に生まれたアザラシは、これまでに67頭に上る。
しかも、今回の繁殖期はまだ継続しているそうだ!
これは、Mercedes氏によれば、この絶滅危惧IA類に指定される種の回復への最大の希望ともいえる保護区「Costa de las focas」での新記録だという。
「Costa de las focas」は、全世界におけるチチュウカイモンクアザラシの個体群の約半数が繁殖を行う3つの洞窟を保護する沿岸の陸域と海域を含む保護区である。
1990年代後半に保護活動を開始して以来、群集内の生息数は109頭から250頭へと2倍以上に増えた。
さらに、最近は平均出産数も、年間およそ30頭だったのが60頭へと倍増している。
こうした成功はすべて、日常的な監視なしにはありえなかっただろうとMercedes氏は断言する。
自然繁殖を通じて生息数を回復するためには、まずアザラシが人間からの妨害を受けないようにしなくてはならない。
その一方で、近隣にはモーリタニアで2番目に大きな都市、ヌアディブがあり、人口が増加している。
2001年に保護区が創設される前は、多くの蔓脚類(フジツボやカメノテなど)の採取者や釣り人、ピローグ(海で使うカヌー)漁船がアザラシ群集が繁殖する洞窟付近で活動していた。
これにより、チチュウカイモンクアザラシはストレスが多く危険な状況を強いられた。
チチュウカイモンクアザラシに危害を及ぼす直接的な接触による影響はなかった。
だが、アザラシの生息域内とその周辺で行われていた人間の活動によってアザラシが驚いて逃げてしまい、繁殖期間中、最初に生まれた子供たちが置き去りになってしまった。
そして海中に漁具があったためにこの問題は悪化した。
経験の浅いアザラシの赤ちゃんやアザラシの子どもたちが漁具に絡まり、結果として溺死さえする危険性が高まったのだ。
こちらの短い映像を見ると、若いチチュウカイモンクアザラシにとって混獲がいかに切実な問題となりうるかがわかる。
したがって、67頭の新生児が記録を作り、迫り来る絶滅の影に明かりを灯す一方で、現在行われている監視作業と啓発活動も続ける必要があるのだ。
保護区内、特にアザラシが繁殖する洞窟付近での人間の活動を最小限にすることが重要だとMercedes氏は言う。
しかしそれは、長期にわたる解決策の一部でしかない。
このプロジェクトについての詳細は、こちらをクリックしていただきたい。
絶滅危惧種の保護には非常に重要な意味がある。
なぜなら、私たちが守っているのは私たち自身の生命維持システムだからだ。
ほんの数例だが、野生生物や自然は私たちに食べ物から燃料、雨風をしのぐ場所まで、たくさんの基本的な生活に必要なものをもたらしてくれるうえ、芸術、言語、デザインの分野でインスピレーションまで与えてくれるのだ。
現在、SOSは200を超える種を保護している。
引き続きより多くの自然遺産を保護できるよう、どうかSOSへ寄付いただきたい。
ニュースソース
http://www.iucnredlist.org/news/best-breeding-season-yet-for-mediterranean-monk-seal-colony
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