太平洋の海鳥の集団死は、海洋食糧網のもろさを浮き彫りにする
和訳協力: サハデ 美穂、校正協力:佐々木 美穂子
2015年1月30日 Pew Charitable Trust News
2015年の1月に私は、多くの人々に衝撃を与えた残酷な光景を目の当たりにした。
オレゴン州とワシントン州の沿岸で、かつてないほどの規模での海鳥の集団死が起きているのだ。
干潮になったらマテガイの仲間を掘ろうと、その機会を待ちながら海岸に沿って歩いていると、小さな死がいをいくつか見つけた。
今後この2つの州にある多くの海岸で、この光景が悪化することになるということを私はわかっていなかった。
報道によれば、幼鳥の餌の大半を占める小さな殻を持つオキアミ類とカイアシ類の不足から、何千羽ものアメリカウミスズメが飢えているようだった。
全体像はまだ不確かだが、海鳥の集団死は、海洋食糧網が不安定である事実を浮き彫りにする。
つまり、カリフォルニア州の現在の海洋生態系は、最小の餌生物でさえ利用できるかどうかが変動する場合があるということである。
そのため、西海岸の漁業管理者が、生態系に基づくアプローチを適用する先駆者の一員となっていることは良いニュースである。
そのアプローチでは、海洋漁業の管理のために、大局的な考慮がなされている。
Pacific Fishery Management Council(太平洋漁業管理評議会)は、2013年に評議会の初のfishery ecosystem plan(漁業生態計画)を承認し、その計画の最初の具体的な第一歩として、この3月に最終的な措置をとる体制を整えている。
それは、生態系の重要な中間的な繋がりを形成している、数十種類もの餌用の魚の種の基本的保護対策の制定である。
たとえ、それが北西海岸に打ち上げられているアメリカウミスズメの助けにならなかったとしても――オキアミ類とカイアシ類はその初期対策に含まれていないのだが――評議会の取り決めは、次の野生生物の危機に対する予防策となるか、あるいは少なくとも危機を最小限に抑える手助けとなるだろう。
実際、最近のナショナルジオグラフィック誌の記事によると、ある科学者が、食物連鎖の低い位置にあるオキアミ類やカイアシ類に悪影響を及ぼす、現在と同様の有害な海洋状態が、オキアミ類等よりわずかに上位にある小型の種に、今年の春と夏に広がることを予測した。
そのことからも、海鳥や海洋哺乳類、サケ・マグロのような大きな魚類などの餌となる小型の魚類を保護することとなると、漁業管理者にとっても予防策をとることが非常に重要なのである。
現在、サンマ、イカナゴ類およびツツイカ目の数種といった餌用の魚は管理・監視されていないため、食物連鎖に関わるほかの種類への影響を及ぼさない場合には、いつでも漁獲を始められる。
実際に、それらの餌用の魚はまだ西海岸では漁獲の対象となっていない。
しかし、ほかの魚の餌や飼料としての地球規模での需要が増え続けて、捕獲量が増加したため、西海岸の漁業者は賢明な解決策を考案している。
つまり、捕獲の開始を許可する前に、ほかの生態系にかかる影響のコスト評価をするのである。
この生態系へ先手を打つ方針は、幅広い支持を集めてきた。
実際に、この提案についてのオレゴン州の記事において、シーフード産業をリードする会社の代表者が以下のように述べた。
「健全な生態系を維持することは、環境保護団体や漁師が賛同する目標です」。
これらの小型の魚類は大きな問題となっており、餌用の魚の管理において予防的なアプローチをとるようであれば、太平洋漁業管理評議会は正しい方向へ進んでいるといえる。
Paul Shively氏は、Pew Charitable Trusts(ピュー・チャリタブル・トラスト)の西海岸における海洋保全事業の運営管理を行っている。
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