太平洋上の広大な海洋保護区における将来の課題が世界公園会議の焦点に
2014年12月7日 IUCN Redlist News Release
翻訳協力:小松 勝、校正協力:オダウド 陽子
太平洋諸島地域が広大な海洋保護地区の創設を率先して進め続ける中、この広大で世界的に重要な保護地域の管理のために、太平洋諸国が多くの援助を必要とするだろう、というメッセージがWorld Parks Congress (世界公園会議)で発信された。
オーストラリアのシドニーで開催されたIUCN(国際自然保護連合)の世界公園会議2014の主要なテーマの一つが海洋の管理である。
10年に1度の会議がオセアニアで開催されたのは初めてである。
会議はMua Voyageと呼ばれる4隻の伝統的な帆走カヌーの到着で開会した。
これらのカヌーは、海洋管理への協力を呼びかけるために、太平洋諸島からシドニーまで6,000海里もの距離を航海してきた。
シドニー港に到着したカヌーには、3つの太平洋諸国(クック諸島、キリバス、パラオ)の指導者たちが搭乗しており、彼らが先導する国内での大規模な海洋環境の保護活動への参加を世界中に呼びかけた。
これら3カ国は以前から、世界最大級の海洋保護区の設立に力を入れている。
キリバスは広さ408,250㎢におよぶPhoenix Islands Protected Area(フェニックス諸島保護地域)を設立しており、ここは世界で最大かつ最深のユネスコ世界遺産である。
パラオは、exclusive economic zone(EEZ:排他的経済水域)の80%(約500,000㎢)を保護することを約束している。
クック諸島も現在、広さ110万㎢におよぶ海洋公園『Marae Moana』の設立を進めている。会議でクック諸島のHenry Puna首相は、中期的にはMarae Moanaを拡大して、北方諸島をも含めることを約束した。これが実現すれば、Marae Moanaはクック諸島のEEZ全域を網羅することになり、その総面積は約200万㎢となる。
また、大規模な海洋保護区は太平洋諸島の領域外でも設定されている。ニューカレドニアは、約130万㎢におよぶ同国のEEZ全域を含む海洋公園、Natural Park of the Coral Seaを設立することを約束している。米国も、既存のPacific Remote Islands Marine National Monument (PRIMNM:太平洋離島海洋ナショナルモニュメント)を約106万㎢に拡張することを今年発表した。約477万㎢のEEZを所有するフランス領ポリネシアも、間もなく広大な海洋保護区を設定するだろうと期待されている。
これらの公約による保護地域はとてつもなく大きい。広大な海に散在するこれらの小さな国々や領土が、その一部は世界の後発開発途上国であり、どうすればこれらの海洋保護区を管理し、保護していくことができるのだろうか。
IUCNオセアニア地域理事のTaholo Kami氏によれば、その答えは国際開発部局と太平洋諸国間の協力にあるという。
「これは、国際地域機関や開発協力者に向けての海についての警鐘なのです。我々は5年以内に、保護地域かまたは太平洋諸島のEEZにおける、海洋管理のための最大級の要請を受けることになるでしょう。これらの海域は1,000万㎢を超えるようです。これを可能にするには、開発協力者らと共に、協力や支援のあり方を考え直す必要があります」とKami氏は言う。
人間の生命を維持する上での太平洋の役割という意味では、このことは特に重要である。
Food and Agriculture Organization of the United Nations(国連食糧農業機関)によれば、海洋魚は10億人もの人々の重要なタンパク源となっている。
太平洋はこのタンパク源の大部分を供給しているのだ。
しかし、その供給量は魚の乱獲によって減少し続けている。
海洋保護区では漁獲圧を取り除き、漁業資源を回復させることを目指しているが、規制や制限のない漁業活動がこれを脅かしている。
海洋保護区における、規制や制限のない漁業活動についてのコンプライアンスや法施行が最大の課題である。
世界公園会議において、既にキリバスと米国は協力協定の調印に向けての調整を進めている。
『Phoenix Ocean Arc』と呼ばれる2つの保護地域で、キリバスのフェニックス諸島保護区は米国のPRIMNMと境界を共有している。
キリバスのAnote Tong大統領と米国のSally Jewell内務長官は、協力的な管理協定に調印した。
その協定には、法施行、科学的な調査、難破船の除去、海鳥の保全、僻地の環礁からの外来種(ラット等の)の撲滅等の活動などが含まれている。
太平洋諸島の国々や領土内の海洋保護区を、すべての人々の利益のために保全し、維持するためには、設備、専門技術そして資金を提供する協力者の存在が必要不可欠なのだ。
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