オニイトマキエイの取引業者に懲役判決が
和訳協力:山崎 有起枝、校正協力:久保 直子
2015年2月2日 WCS Press Releases
インドネシアでオニイトマキエイ類の取引業者が1年4ヶ月の懲役を宣告される
・判決は、インドネシアの最近のオニイトマキエイ類の国内保護に関する初の法執行となる
・担当する省庁は、野生生物保護協会の野生生物犯罪対策チームと共に捜査を行った
・インドネシアは、世界で最も広く知られるサメとエイの漁業を行っている
インドネシアの裁判所は、オニイトマキエイの体の一部を違法に取引した業者に対し、懲役1年4ヶ月および罰金5,000USドル(約60万円、2015年2月13日付換算レート:1USドル=119.02円、以降同レートとする)を言い渡した。
この判決は、2014年はじめに承認された新たなオニイトマキエイ類の保護法令による初の法執行である。
また、オニイトマキエイ類の保護および違法な漁業や取引を止めさせるインドネシア政府Ministry of Marine Affairs and Fisheries(MMAF:海洋水産省)の厳しい態度および新たな姿勢を表すものである。
Wrdという名の取引業者は、1月27日、西ジャワ州チレボン市の地方裁判所にて、有罪判決を受けた。
Wrdは昨年9月に、4,500USドル(約54万円)相当のオニイトマキエイ類の鰓板(エラの部分)27kgの所持によりMMAFに逮捕され、Fisheries Law(漁業法)の免許規定の違反により告発された。
2014年8月から9月の間、MMAFは、WCS(野生生物保護協会)のWildlife Crimes Unit(野生生物犯罪対策チーム)との働きで、インドラマユとスラバヤのオニイトマキエイの取引の容疑者5名を、ジャワ島とバリ島で逮捕した。
MMAFは、総量138kgのオニイトマキエイ類の鰓板、オニイトマキエイ類まる1匹、オニイトマキエイ類の骨558kgを証拠として押収した。
最近、Sueb、Suheriという名のマンタの鰓板取引の容疑者2名が、それぞれスラバヤとバリで公判中である。
Suebは、昨年8月にスラバヤでオニイトマキエイ類の鰓板8kgの所持で逮捕され、Suheriは、9月にバリでオニイトマキエイ類の鰓板103kgの所持で逮捕された。
Marine, Coastal and Small Island Affairs((仮)海洋・沿岸・小島嶼局)の局長であるSudirman Saad博士は、「オニイトマキエイ類は、絶滅が危惧される魚類であり、その全面的な保護が海洋水産省令04/KEPMEN-KP/2014で明記されています。この法のもと、オニイトマキエイ類とその体の一部を漁獲または取引することは禁止され、違反すると法に基づき刑に処せられるでしょう」と語った。
昨年MMAFは、公式にインドネシアでのオニイトマキエイ類の漁獲および取引を禁止した。
違反者は、漁業法の免許規定により、最長8年の懲役および最高15万USドル(約1800万円)の罰金刑に従わなければならない。
WCSのインドネシアプログラムの代表であるNoviar Andayani博士は、「WCSは、オニイトマキエイ類およびインドネシアの海の生物多様性の保護に関するインドネシア政府の献身的な働きに深く感謝しています。我々は今後、WCSのようなNGOを含む利害関係者への委任や、協力が増えていくことを望んでいます」、と語った。
Reef manta ray(学名:Manta alfredi、ナンヨウマンタ)およびOceanic manta ray(学名:Manta birostris、オニイトマキエイ)は、大型で寿命が長く、プランクトンを食べる軟骨魚鋼で、サメの近縁種である。
オニイトマキエイは、ヒレの先端から先端までの長さが7m(23フィート)、体重は2t以上に達し、また寿命は少なくとも20年以上である。
繁殖率はとても低く、子供を2年毎に1匹だけ産む。
マンタウォッチングを主として業績を伸ばしている観光業は、年間1億4千万ドル(約167億円)相当と概算され、インドネシアは、観光の目的の上位10位のうちの一つに入っている。
オニイトマキエイ類は、餌のプランクトンを濾過する鰓の前部の付属器官である鰓板を目当てにますます狙われるようになった。
これらの鰓板は、漢方医学では認められていない滋養強壮剤として使用されており、中国市場で需要がある。
中国では、マンタの鰓板は1kgが250ドル(約3万円)から500ドル(約6万円)で売れ、取引総額は年間3千万ドル(約36億円)に相当する。
この取引の増加が、規制されていない大規模なマンタ漁業を増加させ、マンタの個体群を激減させてきた、または、させている。
ナンヨウマンタ、オニイトマキエイの2種は、世界的な絶滅危惧種リストである絶滅危惧種に関するIUCNレッドリストの絶滅危惧II類に指定されている。
WCSの野生生物犯罪対策チームは、インドネシアで野生生物犯罪の捜査および起訴を支援するため、法執行機関に対しデータ提供や技術的助言をする活動を行っている。
野生生物犯罪対策チームの直近の成果は、昨年はじめにトラの密猟団を壊滅させたインドネシア政府を支援したことである。
インドネシアでのオニイトマキエイ類取引に関する情報は、Jakarta Animal Aid Network(JAAN:ジャカルタ・アニマル・エイド・ネットワーク)によって野生生物犯罪対策チームへと提供された。
WCSの野生生物犯罪対策チームは、Save Our Species Fund(SOS基金)の支援を受けている。
Save Our Species(SOS)は、Global Environment Facility(地球環境ファシリティ)、IUCN(国際自然保護連合)およびWorld Bank(世界銀行)の合同の取り組みである。
野生生物犯罪対策チームは当初、Liz Claiborne and Art Ortenberg FoundationおよびUnited States Fish and Wildlife Service(アメリカ合衆国魚類野生生物局)のMultinational Species Conservation Funds(多国籍種保護基金)の持続的な支援を受け開設された。
基本目標は、絶滅危惧種の長期的な存続と安寧を確保し、生物多様性の保全のために重要な生息地を確保することである。
海洋の野生生物犯罪対策チームを含む、WCSのインドネシアでの海洋保全活動は、John D. and Catherine T. MacArthur Foundation(マッカーサー基金)およびDavid and Lucile Packard Foundation(デイヴィッド&ルシール・パッカード財団)の十分な支援によって営まれている。
加えて、Conservation
International(コンサベーション・インターナショナル)は、このマンタ保全のための法執行の取り組みを目的としたWCSの活動に資金的支援を提供し、そしてマッカーサー基金およびデイヴィッド&ルシール・パッカード財団もまた、コンサベーション・インターナショナルのサメ類とエイ類に関するインドネシアでの政策への取り組みに資金提供をしている。
WCSは、世界的な公約の一部として、サメ類とエイ類の保全を優先的に進めている。
その公約とは、激減し、脅威にさらされている海洋種の個体群回復を促進し、脆弱な海洋生態系の衰退に歯止めをかけ、世界の海洋の至る所にある沿岸地域社会の暮らしの改善や活性化をはかるためのものだ。
WCSは、海洋生態系の衰退を回復させ、脅威にさらされた海洋種の個体群を回復させ、そして沿岸漁業および沿岸域の暮らしを改善させるために、20カ国の領海および五大洋すべてにわたる、長期的で多種多様な海洋景観規模の保全戦略を投じる。
WCSは、ニューヨーク水族館およびニューヨーク市内のWCSが有するすべての動物園で、多くの人々に海洋保全のための活動をすることを促している。
WCSの海洋保護論者は、長期的な保全目標を達成するために、地域の協力者だけでなく、地方自治体および政府と共に、沿岸漁業の運営改善や海洋種に対する脅威の主要因の軽減、有効な海洋保護区域の拡張、海洋産業の持続可能性の強化、気候変動の回復力増加などに向けて活動を行う。
全体として、これらの活動は、一般の人々の広く深い理解を築き、科学的知識を進歩させ、私たちの海洋と生物多様性、またそれらが支える暮らしに対する政治的な関わりを強めることを目的としている。
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