人間の発展と生物多様性の保全は両立できることが研究から明らかに
和訳協力:東川 かよ、校正協力:佐々木 美穂子
2015年1月12日 IUCN International news release
新しい研究によると、エネルギーの大量消費を減らしたライフスタイルにし、肉の消費や農産物の廃棄を減らした開発シナリオは、生物多様性を保護しながら、世界的な開発目標を達成する助けともなりえる。
論文「Projecting global biodiversity indicators under future development scenarios ((仮)未来の開発シナリオのもとでの世界的な生物多様性指標の予想)」は、International Union for Conservation of Nature (IUCN:国際自然保護連合)、Sapienza University of Rome(ローマ・ラ・サピエンツァ大学)、Birdlife international(バードライフ・インターナショナル)を含む10の機関による共著で、学術雑誌Conservation Lettersに掲載された。
この研究では、未来の人間の開発シナリオが、世界中の陸上に生息する肉食動物や有蹄類(ひづめのある哺乳類)に及ぼす影響について評価している。
現状維持のままの開発シナリオでは、森林破壊が進み、炭素の排出が増加して、2050年までに肉食動物と有蹄類の4種に1種の割合で絶滅リスクが高まることを明らかにしている。
「今日の食物、水、エネルギーに対する世界的な需要の増大は、農業生産性を高め、化石燃料やその他のエネルギー源の使用を増やすことで満たされています」と、IUCNのScience and Knowledge Unit((仮)科学・知識ユニット)の代表者で、論文の共著者であるThomas Brooks氏は述べている。
「これは大きな環境コストになっているのです」。
「我々はこの論文で、人間の開発目標と生物多様性の保全は競合する必要がないということを初めて示しました」と、筆頭著者であり、ローマ・ラ・サピエンツァ大学でIUCNのレッドリストに関するGlobal Mammal Assessment
Program((仮)地球規模哺乳類評価プログラム)に関わり、Microsoft Research(マイクロソフトリサーチ)に所属するPiero Visconti氏は述べた。
「私たちは、生物多様性を世界的に豊かにするのと同時に、飢餓や貧困を根絶し、人類の福祉を全般的に改善できる、代案となるシナリオがあることを明らかにしました」。
この『Consumption Change(消費変化)』シナリオでは、先進諸国で1人当たりの消費、特に肉の消費を減らし、同時に農産物の廃棄も減らす一方で、国連のミレニアム開発目標を達成するために、貧しい人々が食物やエネルギー、水を得る機会が増える。
論文によると、こういった行動が野生生物の生息環境の喪失を食い止め、温室効果ガスの排出を削減するはずで、その結果種の絶滅リスクが下がる。
消費の変化と生産手段の効率化とともに、その他の方策も必要になってくるだろう。
これには伐採の削減や、炭素課税、戦略的な保護地域の配置、農作物の収量を上げるための持続可能な農業生産方式の活用など、革新的な環境法の制定が含まれる。
持続可能な開発政策の策定を支援するため、社会、経済、そして環境に関するシナリオとともに、いかにして生物多様性指標を活用するかをこの研究は示している。
「こういった研究は、Intergovernmental Platform on Biodiversity and Ecosystem Services(IPBES:生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム)の活動にとって重要な研究です。というのは、IPBESの目的が現在の生物多様性の危機に取り組むための世界的な政策決定に情報を与えることだからです」と、PBL Netherlands Environmental Assessment Agency(オランダ環境評価庁)に所属し、IPBESのシナリオとモデル評価の技術支援ユニットの代表者でもある、共著者のRob Alkemade氏は述べている。
第3回IPBES総会は2015年1月12日から17日にドイツのボンで開催される。
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