サメ類およびオニイトマキエイ属の保護に朗報
和訳協力:木南 誠、校正協力:加藤 哲子
2014年9月11日 IUCN Redlist News Release
ここまで来るのに何が必要だったか、そしてさらに前進するためには何が必要か、と、Manta Trust(マンタトラスト)の保全戦略部門の代表を務め、SOSプログラム(SOS)の助成を受けているIsabel Ender氏は問いかける。
彼女はモルジブからスカイプで話しながら、2014年9月14日から効力を発効するオニイトマキエイ属の種(以降、オニイトマキエイ類とする)と5種のサメ類の商業取引に関するCITES(「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」、通称「ワシントン条約」)の新たに設けられた規制に言及した。
2013年3月にバンコクで開催されたCITESの締約国会議で、科学者、保全活動家、各組織、各国政府は、これらの種に対する脅威の増大や、これらの種を保護することの価値に関して充分な根拠をまとめ、CITES附属書Ⅱへの掲載を達成した。
変化を起こすには時間がかかるもので、粘り強さが必要だ。
オニイトマキエイ類やサメ類がCITESのリストに掲載された日から、掲載に関する規制が効力を発するまで18か月の期間が与えられる。
この期間は、各国への通知をし、税関の職員への訓練を行い、すべての加盟国で政府から漁業担当職員までの関係者らが、取引管理の知識・方法を確実に習得するために重要な期間である。
これらは附属書への掲載そのものと同じくらい重大な課題であり、その中でマンタトラストは他の団体とともに活動を組織立てていく役割を担っている。
保全の優先順位という観点からだけではなく、経済的視点からもオニイトマキエイ属の商業取引を規制することは有意義である。
オニイトマキエイ目的の観光は世界規模で、年間1億4000万USドル(約162億5千万円、11月15日付換算レート:1ドル=116.095円)の経済効果を生んでいるが、混獲や殊にオニイトマキエイそのものを標的にした漁業の影響が増したため、世界中で個体数が減少しているとIsabel氏は話す。
オニイトマキエイの魚肉にはほとんど価値がないが、鰓板という、海水からプランクトンを濃しとって摂取するための鰓内部の部分が、強壮剤としての薬効があるとして取引されており、アジア市場では非常に珍重されるようになった。
CITES附属書Ⅱへの掲載は、必ずしもマンタが絶滅の危機にあることを意味するわけではないが、掲載されている動物の取引は、種の生存が脅かされるようことのないよう管理しなければならない。
Isabel氏によると、オニイトマキエイは繁殖に時間がかかる上に繁殖率も低く、また成長も遅いので、オニイトマキエイ漁はとても続けられるものではないという。
規制の効力が発生すると、CITES加盟国が鰓板などのオニイトマキエイ類の加工物の取引を継続したい場合には、厳格な条件を満たす必要がある。
各国は許可申請をするとともに証拠となるデータを開示し、その取引が個体数に悪影響を与えないという根拠となる綿密な科学的評価をしなければならない。
ほとんどの場合、達成するのが困難、または不可能である。
Ender氏は最近スリランカのコロンボで開催された、PEW Charitable Trust(ピュー・チャリタブル・トラスト)が催した地域的なCITES規制の施行に関するワークショップに、SOSの補助金を受けて参加した。
台湾やパキスタンからインドネシア、セイシェルまで、13カ国から各国政府、環境部局、保護団体および漁業団体の代表者らが参加した。
Manta Trustは、種の特定やオニイトマキエイとイトマキエイの乾燥鰓板の判別におよぶ、オニイトマキエイの保護に必要となる教育のあらゆる面で貢献した。
ニゴンボ(スリランカの都市の名称)の魚市場に出向き、参加者がこれらの種を見るのとともに、実際どのように獲られているのかを直に見る機会も、その一環だ。
総合的に見て、活動は成功であり、出席者はこのCITESの規制の効力発生までの猶予期間中に、規制に対処するツールや改善された技術を実践的に得ることができた。
野生動物を効果的に保護は、よく人々の姿勢と技術によるものだとされるが、タイミングも必須だ。
これらのサメとエイの種の保護にむけたサクセスストーリーはまだ始まったばかりである。
コロンボで開催されたワークショップは世界中でいくつも行われている最前線の活動のひとつである。
その活動は、CITESの規制を支援するために人々を教育・育成するだけでなく、他の手段やツールを利用して我々の自然遺産を保護するためにも、今後も行われる予定である。
支援の意志を見せて欲しい。
9月14日をともに祝い、これらのすばらしい種の保護に関する朗報を共有して欲しい。
また世界規模で保護活動家を鼓舞していきたいと考えている。
もし私たちが共に活動すれば、大きな変化が起こせるはずだから。
ニュースソース
http://www.iucnredlist.org/news/a-good-news-story-unfolds-for-mantas-and-sharks
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