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2015年2月16日 (月)

トラ個体群に新たなる脅威

犬ジステンパーウィルスによりトラ絶滅へ大きく加速の懸念

小集団により大きなリスク

和訳協力:野中 祐子、校正協力:日原 直子

2014年11月10日 WCS Press Releases

生息環境の喪失、密猟や獲物となる種の減少という困難に加え、野生のトラ個体群への新たなる脅威が、犬ジステンパーウィルス(CDV:Canine Distemper Virus)、という疫病の形で現れた。
Wildlife Conservation Society(WCS:野生生物保護協会)とその協力者らの新しい研究によると、CDVがトラを絶滅へと追いやる重大な原動力になる可能性があるとのことだ。

CDVが個体としてのトラの死因であることは最近明らかになっていたが、トラ個体群に対する長期的影響についてはこれまで研究されていなかった。

著者らは、ロシアのSikhote-Alin Biosphere Zapovednik(SABZ:シホテ・アリン国立自然保護区)におけるアムールトラ個体群へのこれらの影響を評価した。
ここでは、トラの個体数が2007年から2012年の間に38頭から9頭へ減少していた。
2009年と2010年には、トラの成体6頭が死亡したか、または保護区で見られなくなり、死亡した2頭のトラからCDVが検出された。
主席研究員らは、個体群全体としての減少にCDVが関係していると確信している。
2003年にCDVがトラで初めて確認されてから、シホテ・アリンにおけるWCSとロシアの研究者たち、そして地域のPrimorye Agricultural College(プリモルスキー農業大学)の獣医師たちは、CDVに関する共同研究に注目し続けている。

この研究における主な発見として、モデルシミュレーションが、CDVによるトラの絶滅の可能性は小集団ほどより高いことを示したことが挙げられる。
個体数が25頭の場合、CDVが発症した場合の今後50年の個体数の減少の可能性は、発症がない場合の1.65倍である。
これは、野生のトラが生き残っているほとんどの生息域において、トラの繁殖可能な成体の数が25頭を下回っている事実を考慮すると、大変憂慮すべき結果である。

科学者らは、CDV感染の影響について、孤立したトラ個体群を様々な規模で想定し、また一連の感染シナリオを通じてシュミレートするために、コンピューターモデルを使った。
これにはトラからトラへの感染、CDVに感染した飼い犬、または感染した野生の肉食動物(例えばキツネ、タヌキまたアナグマなど)の捕食による感染が含まれる。
CDVの有病率およびトラの病源との接触度合いの様々な条件設定をもとに、モデルに用いる高危険度および低危険度のシナリオを作成した。

結果、CDV感染がある場合の50年以内のSABZにおけるトラの絶滅の可能性が、同等の個体数からなる群での、CDV感染がない場合に比べ、55.8%高いことを示した。

「野生下で、トラの個体がCDV感染によって死亡したことはすでに明らかですが、我々はトラの全個体群に対するウィルスの危険性を把握したいと考えています」と、WCSのMartin Gilbert獣医師が述べた。
「しかしトラはつかみどころのない生物で、リスク因子の長期的影響の調査はとても困難です。我々のモデルは、SABZが20年以上にわたり収集したトラの生態に関するデータをもとにしたもので、トラがウィルスに接する可能性のある様々な方法および、それらがトラ個体群の絶滅のリスクに関し、長期にわたってどのように影響を及ぼすかについて、細かく調べました」。

WCSロシアのこの事業の代表者であるDale Miquelle氏は以下のように述べた。
「トラは生息域のいたる所で、密猟から、食料のための人間とのせめぎあいといった、多くの脅威にさらされています。その結果、多くのトラの個体群がより小さく、より分散化していき、そのことがCDVのような疫病への感受性を高めています。我々は、密猟や生息地の破壊といった主要な脅威に注目をし続けなければならない一方で、現在、将来のこのような疫病の出現に対処できるように備えなければなりません」。

著者らによると、今後の調査の優先課題には、CDVの宿主となりえる飼育されたまたは野生の肉食動物、およびトラの感染源としてもっとも可能性の高い生物の特定が含まれる。
トラは頭数が少ないため、CDVを長期間維持することはできない。
従ってCDVは同一環境下のより個体数の豊富な肉食動物に依存しているはずである。
ウィルスの宿主の構造を理解することが、将来の大流行を予防または制御するための方法確立の重要な第一歩となる。

さらに、現在は大きな集団より小さな集団においてCDVなどの疫病に対するリスクが高いことがわかっているため、集団間の近接度に焦点をおいた保護対策が最重要となる。

「ロシアにおけるアムールトラ(Panthera tigris altaica)個体群への犬ディステンパーウィルスの潜在的な影響予測」が現在PloSONEの電子版に掲載されている。
著者は、Martin Gilbert氏(WCSならびにグラスゴー大学のBoyd Orr Centre for Population and Ecosystem Health)、Dale G. Miquelle氏(WCS)、John M. Goodrich氏(Panthera)、Richard Reeve氏、Sarah Cleaveland氏、Louise Matthews氏(以上3名グラスゴー大学Boyd Orr Centre for Population and Ecosystem Health)、Damian Joly氏(WCSならびにMetabiota)である。

記事へのリンクはこちらをクリック。

この調査はMorris Animal Foundation(モリス動物基金)、Zoo Boise Conservation Fund、AZA(世界動物園水族館協会)のTiger Species Survival Plan Tiger Conservation Campaign、Biotechnology and Biological Sciences Research Council(バイオテクノロジー・生物科学研究会議)の多大な支援によって実現された。

獣医師で博士、米国獣医病理学会免許保持者であるモリス動物基金のDiane Brown主席研究員は以下のように述べた。
「モリス動物基金は、アムールトラの保護に対するMiquelle博士とそのチームの支援に感謝の意を表します。我々はこの研究への彼らの勤勉さと尽力を高く評価し、WCSとのさらなる協力関係を希望いたします」。

ニュースソース
http://press.wcs.org/NewsReleases/tabid/13614/articleType/ArticleView/articleId/5047/For-Tiger-Populations-a-New-Threat.aspx

 

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