世界トラの日‐個体数が少ないにもかかわらず新たな希望?
和訳協力:佐野 かおり、校正協力:花嶋 みのり
2014年7月29日 IUCN Redlist News Release
野生のトラの数より飼育されているトラの数が多いという奇異な状況の下、今まさにWorld Tiger Day(世界トラの日)を迎えた。
アジアのトラが生息する13か国では、野生のトラはたった3,000頭しかいないと推定されている。
生息域はかなり広く、生息数は非常に少ないといえる。
実際、この100年余りの間に野生のトラの全体数が97%も減少してしまっているのだ。
これほど強い捕食動物でありながら、容赦なく拡大する人間社会に追い込まれ、絶滅の危機に瀕している。
個体群は互いに離れて孤立しており、トラとその部位のあらゆる商業取引を禁じているCITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称「ワシントン条約」)附属書Iに記載されているにもかかわらず、密猟の脅威は増大している。
しかし、まだ希望は残っている。
というのも、今日はトラの個体数を回復させ得る理由や活動に光を当てる日であるからだ。
政策から現場での活動に至るまで、このような規模で効果的な保護活動を行うには協調的な努力が必要であり、Global Tiger Day (GTD:世界トラの日)は、一つの共通の運動をするように、別々に活動する多くの団体を結集することができる。
ちょうど4年前の2010年7月に、13か国のトラの生息国とその国際的なパートナーにより、トラの日を祝うというアイデアが生まれた。
2010年にサンクトペテルブルクにおいて開催されたTiger Summit(トラサミット)で、各国政府が2020年までに自国領土に生息するトラの個体数を倍増させると明言し、世界トラの日が正式に承認された(その宣言はこのページの下のリンクからダウンロードできる)。
その後、トラの生息国は2013年に中国の昆明で第3回世界トラの日を記念し、Global Tiger Recovery Program(GTRP:世界トラ回復プログラム)の始動という新しい局面を迎えた(このページからダウンロード可能)。
政策レベルだけでなく、現場の活動を通じての進展もある。
例えば、SOS(Save Our Species)は過去3年間、バングラデシュのスンダルバンスとマレー半島において、2つの地域集中型プロジェクトを含む3つのトラ保護プロジェクトを通じ、約100万USドル(約1億1700万円、2014年11月21日付換算レート:1USドル=117円、以下同率とする)を配分した。
一方、密猟と戦うための技能や技術への投資により、国境を越えたプロジェクトがトラ保護の展望を一変させることも期待されている。
これらのプロジェクト詳細については、このページの下のリンクを参照して欲しい。
そして2014年初めに、最大の効果をもたらすプロジェクトの識別と選択のためのSOSモデルの成功をもとに、IUCN(国際自然保護連合)はKfW(ドイツ復興金融公庫)とともに、5年間のIntegrated Tiger Habitat Conservation
Programme((仮)統合的トラ生息地保全プログラム)を発表した。
2700万USドル(約31億5900万円)をかけたこのプログラムは、選定されたトラ生息国のNGOと自然保護関係機関の役に立つだろう。
プログラムの最終目的は野生のトラの個体数を増やすことであるが、一方でトラの生息地とその近辺に暮らす人々の生活向上にも取り組んでいる。
これはトラの保護活動の持続性を確保するために重要である。
プロジェクトがさまざまな方法で、人間とトラの衝突、生息地の管理、法施行、密猟の取り締まりなどに作用することが期待されている。
それゆえ、世界トラの日は世界に残存するトラの窮状とともに、我々が協力して成し遂げられる可能性にも光を当てる。
責任は我々すべてにある。
SOSやIntegrated Tiger Habitat Conservation Programmeなどの仕組みを通じて、我々は貢献し、変化をもたらすことができるのだ。
願わくは、世界トラの日が各回を迎えるごとに、再び野生のトラにとって好ましい状況になるように。
関連ダウンロードファイル
・サンクトペテルブルク宣言
・Global Tiger Plan
関連リンク
・SOS SMART Conservation Softwareプロジェクトの紹介ページ
・SOS Tigers in the Sundarbansプロジェクトの紹介ページ
・SOS MYCAT Malaysian Tigerプロジェクトの紹介ページ
ニュースソース
http://www.iucnredlist.org/news/world-tiger-day-new-hope-despite-the-numbers
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