ハドソン湾南部におけるホッキョクグマの狩猟割当量を自主的に削減
和訳協力:菅原 美香子、校正協力:藤木 香
2014年10月22日 Polar Bears International News
カナダのヌナブト準州のイヌイットとクリー族の狩猟者らは、保全と協調の精神をもって、ハドソン湾南部でのホッキョクグマの狩猟割当量を自主的に削減することに同意した。
科学者らは、およそ1000頭と見積もられているホッキョクグマの個体数に対し、現在の60頭の狩猟割当量は多すぎると指摘しているが、一部の地元の狩猟者らからは反対の声が上がっている。
Nunavut land claim(ヌナブト土地請求権)に関する協定事項を管理・運営する団体であるNunavut Tunngavik Inc.のPaul Irngaut氏は、「我々はハドソン湾南部に生息しているホッキョクグマは多すぎるくらいだと訴え続けていますが、生物学者は理解していないようです」、と述べた。
それにも関わらず、ハドソン湾の海氷の状態の変化や、カナダ環境省が国際貿易の管轄権を行使してついにはこの地域の毛皮の輸出を禁止する可能性があることを懸念し、狩猟者らは自主的にホッキョクグマの狩猟割当量を45頭に削減することに同意した。
今回の成果は、2年以上にわたる管理当局間の交渉および情報共有の賜物である。
「カナダのホッキョクグマの管理は20以上の団体が携わり、大部分は地方または地域の管理団体が管理を行っています。意思決定には時間がかかり、関係者全員の多大な努力を必要とします」と、Polar Bears Internationalの保全事業の代表であるGeoff York氏は述べ、以下のように続けた。
「今回の自主的な狩猟割当量の削減は、ケベック州、オンタリオ州およびヌナブト準州をまたいで生息するホッキョクグマの個体群を、より正式な形で協力的に管理することに向けた確実な一歩なのです」。
ホッキョクグマの無秩序な狩猟は、先住民による狩猟を除いて、ホッキョクグマが生息するカナダ、アメリカ、ロシア、ノルウェイ、グリーンランド間の国際協定により1973年に終了した。
歴史的に見ると、ホッキョクグマは無秩序な商業的な狩猟により激減した。
現在、合法的な狩猟は北極圏全域の多くの先住民の間で、制限され、調整された方法で続けられている。
カナダ、アラスカ、グリーンランドでは収穫量は厳重に監視され、通常は地域間で狩猟許可を分け合う割当方式をとっている。
カナダでは、少数ではあるがハーベストタグ注)が、厳重な規制の下でスポーツハンターに利用されており、ほかに収入源をもたない地域に副収入をもたらしている。
興味深いことに、スポーツハンターが地元のハンターほどうまく撃てないため、スポーツハンティングにハーベストタグを割り当てると、ホッキョクグマの殺される数が少なくなることが多い。
アメリカでは、ホッキョクグマはEndangered Species Act(「絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律」、通称「絶滅危惧種保護法」)により絶滅危惧種に指定されており、狩猟したホッキョクグマの輸入は既に禁止されている。
しかしながら、他の国々では、カナダの狩猟地からの狩猟収穫物の輸入が許されている。
注:狩猟した動物につけるタグのこと。獲物が処理されるかまたは輸出されるまではずしてはならないとされている。
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