センザンコウが食べつくされる
和訳協力:高島 裕以、校正協力:アダムス・雅枝
2014年7月29日 IUCN International news release
IUCN Red List of Threatened SpeciesTM(絶滅危惧種に関するIUCNレッドリスト)の最新版によると、謎めいた動物であるセンザンコウ(scaly anteater(鱗に覆われたアリクイ)とも呼ばれる)が、本当に食べつくされてしまう恐れがあるという。
センザンコウ全8種は、現在そのすべてが絶滅の危機に瀕していることも分かった。
脚と尻尾がアーティチョークのように鱗で覆われたセンザンコウは、世界で唯一、実際に鱗を持つ哺乳類である。
自然界の捕食者から身を守る武器としての役割を果たす鱗も、密猟者相手では歯が立たない。
IUCNのSpecies Survival Commission (SSC:種の保存委員会)の下部組織で、IUCN(国際自然保護連合)の会員であるZoological Society of London (ZSL:ロンドン動物学会)が主催するPangolin Specialist Group(センザンコウ専門家グループ)は、センザンコウは現在、世界で最も違法取引が盛んに行われている哺乳類で、この10年で捕獲された野生のセンザンコウの数は100万を越えていると警告する。
アジアにおいては野生のセンザンコウの商業取引が禁止されているにもかかわらず、違法取引は後を絶たない。
センザンコウの肉は東アジア中で高級食材として宴会で饗され、その価格は高騰している。
また、伝統的な漢方医学では、センザンコウの鱗は乾癬や血行不良などを含む、多くの症状に効能があるとされている。
センザンコウ類の違法取引の規模は過去に類を見ないほど大きくなり、Chinese Pangolin(ミミセンザンコウ)とSunda Pangolin(マレーセンザンコウ)は現在、絶滅危惧IA類に指定されている。
アジアに生息する4種のセンザンコウの個体数が急激に減ったことで、増え続ける需要に応えようと、取引業者の目はアフリカに向けられている。
「現存する全8種のセンザンコウが現在絶滅危惧種に指定されているのは、中国とベトナムにむけた違法取引が主な原因です」と、IUCN-SSCのセンザンコウ専門家グループの共同議長を務め、ZSLの保全プログラムの責任者でもあるJonathan Bailie教授は言う。
「21世紀に生きる我々は、生物を食べ尽くすべきではありません。この違法取引を続けることを許すような言い訳は、絶対にありえないのです」。
IUCN-SSCのセンザンコウ専門家グループは今日、アジアとアフリカでのセンザンコウの違法取引を厳しく取り締まり、センザンコウの将来を保証するために必要なステップを設計した保護活動計画を発表した。
IUCN-SSCのセンザンコウ専門家グループの共同議長Dan Challender氏は、次のように語った。
「センザンコウを絶滅の危機から救うための我々の地球規模の戦略を、緊急に実行しなければいけません。何よりもまず必要なのは、中国とベトナム政府が、野生のセンザンコウがもう商業取引のために捕獲されていないことを証明するために、センザンコウの鱗の在庫調査を行って、その結果を誰でも利用できるようにすることです」。
新たな行動計画「Scaling up Pangolin Conservation((仮)センザンコウ保全の強化)」では、アジアとアフリカでのセンザンコウの生息地の保護、地域社会の脱密猟の援助、法規制の強化、そして何よりも重要な問題の理解とセンザンコウの需要削減に焦点を当てている。
ニュースソース
http://www.iucn.org/news_homepage/?17189/Eating-pangolins-to-extinction
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