IUCNが提唱 - コガシラネズミイルカ絶滅阻止へ緊急対策を
和訳協力:和田 一美、校正協力:藤木 香
2014年9月16日 IUCN News Story
メキシコだけでその姿が見られる小型イルカ、Vaquita(コガシラネズミイルカ)の数が、保全活動の実施にもかかわらず、減少し続けている。
International Committee for the Recovery of the Vaquita(CIRVA:(仮)コガシラネズミイルカ回復のための国際委員会)の最新報告によれば、1990年代初めにはおよそ600~800頭が生息したが、今や100頭あまりにまで減少している。
IUCN(国際自然保護連合)のSpecies Survival Commission(SSC:種の保存委員会)のCetacean Specialist Group(CSG:鯨類専門家グループ)は、International Whaling Commission(IWC:国際捕鯨委員会)の第65回会合に、目前に差し迫まるコガシラネズミイルカ絶滅の危険性への留意を促す公式文書を提出した。
2000年初頭にBaiji(ヨウスコウカワイルカ)が絶滅したのに引き続き、クジラ類での次なる種、メキシコのカルフォルニア湾北部に生息が限定されるコガシラネズミイルカ(学名:Phocoena sinus)の喪失に世界は直面している。
コガシラネズミイルカは、大型魚であるTotoaba(学名:Totoaba macdonaldi、トトアバ)漁の刺し網に誤って絡まり、命を落としている。
このトトアバの浮き袋は、中国市場で極めて高価な商品なのだ。
コガシラネズミイルカとトトアバのどちらも、IUCNレッドリストでCritically Endangered(絶滅危惧IA類)に指定されている。
CSGのメンバーであり、IWCの公式オブザーバーでもあるJustin Cooke氏はこう語る。
「CIRVAが提案にあるように、立ち入り禁止区域での刺し網漁を即刻停止しなければ、今後数年で絶滅するでしょう。刺し網漁の主なターゲットであるトトアバが、世界的な不法取引で高値がつくことからも、厳密な規制の実施が必要です」。
Advisory Commission to the Presidency of Mexico for Recovery of the Vaquita((仮)コガシラネズミイルカ回復のためのメキシコ大統領諮問委員会)が昨年設立されたのも、高官らの深刻な懸念を反映したものであるが、残念ながら、メキシコ当局やその他の関係機関による保全策も、現時点でコガシラネズミイルカの個体数減少に歯止めをかけるのには十分ではない。
そのため、IUCNは、責任当局に対し、CIRVAが最近提案した政策の即刻実施を要請した。
またIWC加盟国に対して、必要とされるいかなる支援もメキシコに提供するように呼びかけた。
とりわけ、トトアバがCITES付属書Ⅰの掲載種(商業目的での国際取引は禁止)であること、また、この大型魚捕獲で利用される網がコガシラネズミイルカを混獲し、死に至らしめていることに留意して、米国と中国政府がそれぞれ自国領土内あるいは経由する形での、違法なトトアバ取引きを防ぐ取り組みを強化することがなによりも重要である。
コガシラネズミイルカにとって安全となる漁業技術の向上などのようなものが長期的な解決策なのだろうが、種の絶滅の回避には、提案された立ち入り禁止区域での刺し網漁を即刻中止することが必須だ。
IWC第65回会合は、2014年9月15日から18日までスロベニアのポルトロージュで開催されている。
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コメント
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重要な情報を伝える姿勢は尊重したいと思います.
しかし,和訳関係者の氏名まで表にされていながら薬がいい加減なのに驚いています.
メキシコ湾とカリフォルニア湾を地図で見て下さい.
冒頭の「メキシコ湾」,原文は「Mexico」ではないですか.
投稿: 山田 格 | 2015年2月12日 (木) 17時55分
ご指摘いただきありがとうございます。
該当箇所を確認の上、修正をいたしました。
今後もご協力をよろしくお願いします。
投稿: JWCS | 2015年2月13日 (金) 10時17分