象徴種-サイの保全によりほかの絶滅の危惧にある野生生物をどう救えるか
和訳協力:影山 聡明、校正協力:高橋 哲子
2014年9月22日 IUCN Redlist News Release
世界サイの日を記念し、Save Our Species(SOS)からの助成を受けているInternational Rhino Foundation(国際サイ財団)のBill Konstant氏が、野生生物保全の象徴種としてのサイの役割について、以下の示唆に富む記事を書いた。
専門用語ではないが、象徴種という言葉が、ある絶滅危惧種の保全活動がほかの生物の保全にも役立つときに、しばしば使用される。
クジラ、イルカ、ゾウ、トラ、ゴリラなどの、我々が"カリスマ的な巨大な脊椎動物"と称するものに対して最も高い頻度で使用されるが、その使用に関して、特に厳密なルールはない。
実際的なケースで言えば、ある絶滅危惧種がほかの種の窮状への注意を容易に喚起し、その絶滅危惧種のためにとられる保護活動がそのほかの全部の種を救済するための全般的支援になり得る場合、当然その絶滅危惧種はほかの生物の保全にとっての象徴種と呼ぶことができる。
世界で最も希少な絶滅危惧IA類の2種類のサイ、スマトラサイとジャワサイは、これらのサイにとって地球最後の牙城となった少数の国立公園に生息する、インドネシア熱帯雨林に特有な、ほかの数十もの絶滅危惧動物を保護してきた象徴種となってきた。
SOSはブキ・バリサン・セラタン国立公園およびワイカンバス国立公園に生息するスマトラサイのための保護プログラムを支援している。
この2つの国立公園を合わせると、現在わずか100頭と推定されている、スマトラサイの2/3の個体が生息している可能性がある。
ジャワにあるウジュン・クロン国立公園で活動しているサイの保護団体Rhino Protection Units(RPUs)もまたSOSにより多大な資金援助を受けており、15年以上にわたってスマトラサイの密猟ゼロのレベルを維持に貢献してきた。
ジャワサイの世界の総個体数は50頭前後に維持されている。
絶滅危惧種に関するIUCNレッドリストを確認すると、スマトラとジャワでのRPUsの取り組みにより、ほかの数十種の陸生脊椎類が恩恵を受けている。
それらの種のうちスマトラゾウとスマトラタイガーの2種は確実に象徴種であるが、多くのほかの重要な両性類、爬虫類、鳥類、哺乳類が含まれている。
絶滅危惧II類の5種、世界最大の毒蛇であるキングコブラ、crestless fireback pheasant(ウチワキジ)、Asian
small-clawed(コツメカワウソ)、smooth-coated
otters(ビロードカワウソ)、およびbinturong(ビントロング)は、RPUsが活動する3つの国立公園すべてに生息している。
black
partridge(クマシャコ)、blue-banded kingfisher(アオムネカワセミ)、short-toed
coucal(コユビバンケン)、Storm's stork(スンダエンビコウ)、Sunda blue
flycatcher(クロアゴヒメアオヒタキ)、Sunda nightjar(ノドジロヨタカ)、 Wallace's
hawk-eagle(ウォーレスクマタカ)、white-winged wood
duck(ハジロモリガモ)といった、数種の絶滅の危機に直面している鳥類もまた、スマトラ島南部の2つの国立公園内で実施されているSOS支援のサイ保護プログラムにより恩恵を受けている。
しかし、スマトラサイとジャワサイの象徴種としての地位を真に高めているのは、長い間絶滅の危機にある哺乳類にリストアップされていることである。
森
に生息するサイと生息域が重なる生物で、より有名な分類群の中には、オオコウモリ類、アメリカトゲネズミ類
リス類、モモンガ類、ウサギ類、ジャコウネコ類、センザンコウ類、マメジカ、サンバ-、マレーバク、バンテン、ドール(野生の犬)、ウンピョウ、ジャワヒョウ、などの多くの絶滅危惧哺乳類、また少なくとも10種のメガネザル類、ロリス類、コロブス類、マカク属のサル、テナガザル、フクロテナガザルといっ
た、絶滅に直面している霊長類である。
スマトラ島北部のグヌン・レウセル国立公園ではRPUプログラムが進行中であるが、そこではオランウータンもまたこのリストに加えられる可能性が高い。
これらの種のすべてが、ある程度のレベルで絶滅の恐れがあるということは、記憶にとどめるべき重大なことである。
そしてその背景には、ほかの更に多くの同様に絶滅の危機に瀕した淡水の脊椎動物も、また陸域および水域の両方の無脊椎動物と植物もいる、ということは疑う余地のないことなのだ。
スマトラサイとジャワサイの個体群は、数世紀にわたって生息地破壊と彼らの角を目的とした違法な狩猟に晒されてきた。
そのため、これら2種の絶滅危惧IA類の象徴種を保護するための土壇場での努力は、この世界的な生物多様性ホットスポットでの種の生き残りに飛躍的な相乗効果を及ぼす可能性を秘めている。
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