クロスリバーゴリラとカメラトラップ:映像技術の価値
翻訳協力:山崎 敦子、校正協力:浅原 裕美子
2014年7月28日 IUCN Redlist News Release
2014年3月に発表された、絶滅危惧IA類のクロスリバーゴリラ(学名:Gorilla gorilla diehli)の種の保全を目的とした新たな活動計画始動のニュースに次いで、SOS(Save Our Species:IUCN(国際自然保護連合)、GEF(地球環境ファシリティ)、世界銀行による種の保全事業)から助成を受けており、IUCNのメンバーでもあるWildlife Conservation Society(WCS:野生生物保護協会)は、カメルーンのKagwene Gorilla Sanctuary(KGS:Kagweneゴリラ保護区)で、カメラトラップを用いた貴重な映像の撮影に成功した。
野生の状態はほとんど目にできないために、この一連の映像は我々を驚かせると同時に、印象的なこの霊長類についてさらに多くのことを学ばせてくれる。
社会的な行動から個体を識別する機会に至るまで、トレイルカメラ(遠隔操作により撮影するカメラ)は我々と野生生物を結んでくれるだけでなく、将来の保護活動の助けとなる情報を科学者らに提供してくれる。
カメルーンのジャングルのどこかに生息する、クロスリバーゴリラ一家の暮らしを垣間見ることのできる非常に珍しいこのチャンスを、楽しんでもらいたいと思う。
WCSのカメルーンプログラムの代表であるRoger Fotso博士は、この記録映像について次のような意見を述べている。
「これらの映像は、保護区内でのクロスリバーゴリラの分布傾向を将来調査する際に用いる基本データを提供してくれます」。
彼の同僚であるRomanus Ikfuingei氏は、次のように加えた。
「今では、シルバーバックやブラックバック、幼獣がKGSにどれだけいるかはもちろん、集団における社会化の程度についての情報も得ています。1頭のシルバーバックが群れを先導しようとすると、雌たちがきちんと道を譲る場面を観察しました。また、負傷した幼獣がグループ内の残りのメンバーに加わるのを、群れのほかのメンバーが待つ様子から、強い結びつきが窺える場面も見てきました」。
Romanus氏によると、記録映像は野生生物の通り道の特定と、この地域でのゴリラの生息域保全のために地域コミュニティとともに進めている活動を、さらに後押しするものであるという。
加えて、ゴリラの個体識別の過程でも役立つだろう。
重要なのは、この映像がゴリラの個体群に及ぼすそのほかの人為的影響を特定する助けにもなるということだ。
その結果、保護活動を行うチームはより優れた密猟阻止戦略をしかけ、くくりわなで負傷した幼獣への対応といった、ゴリラの健康支援に関する見識をももたらす。
クロスリバーゴリラはナイジェリアとカメルーンの両国に生息しているため、この種を保護するために設計された保全プロジェクトを管理するためのさらなる課題をもたらす。
そのため、SOS出資によるこのプロジェクトは、ゴリラ生息域のうちナイジェリア側で活動するエコガードとカメルーン側のゴリラガーディアンとともに、地域社会を重視した保護活動を現地の状況に応じて調整することにした。
ゴリラガーディアンは地域住民を採用しているが、ナイジェリアのエコガードはMinistry of Forestry and Wildlife(MINFOF:森林・野生動物省)の職員から選出し、パトロール中には地域コミュニティと連絡を取り合った。
WCSの情報によると、いずれの場合も、自分たちの自然遺産を保護しようとする地域コミュニティからの支援が拡大しつつあるということだ。
こうした地域社会による保全への取り組みが国境を挟んだ両国で成果を上げつつあるとはいえ、現地でのこのような活動を継続するには、国際社会からの認知と支援が極めて重要であるということを忘れてはならない。
ニュースソース
http://www.iucnredlist.org/news/cross-river-gorillas-and-camera-traps-the-value-of-video-technology
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