とても希少なクロスリバーゴリラの保護区をカメルーン南西部に新設
翻訳協力:山本 真麻、校正協力:ジョンソン 雅子
2014年10月15日 African Conservation Foundation News
10年間にわたる保護活動と準備を経て、カメルーン南西部にTofala Hill野生生物保護区を正式に設定することに、カメルーンのPhilemon Yang首相が同意した。
この地域は、非常に絶滅の可能性が高いクロスリバーゴリラのほかにも、最も絶滅の危機に瀕しているアフリカのチンパンジーや、ドリル(サルの仲間)やゾウなど、絶滅の危機にある多くの野生生物の住処となっている。
大型類人猿を始めとした野生生物たちは、狩猟や食肉としての取引だけでなく、人間の土地開拓による生息地の損失によっても追い詰められている。
地方の貧困や規制を行う法施行システムの欠如も、間接的な問題として挙げられる。
現場の作業員による類人猿の保全活動は効果を示してはいるものの、現地の密猟監視員の数が増え、政府が保全エリアを実際に官報で発表してから、保全に対する脅威が持続可能な形で減るだろう。
保全の成功
「クロスリバーゴリラの新しい保護区が設立されたことは、喜ばしく重要なマイルストーンであり、現地チームのお手柄です」と、African Conservation Foundation(ACF:(仮)アフリカ自然保護基金)の役員であるArend de Haas氏は述べた。
2004年以降、ACFはTofala-Mone森林景観において、Environment and Rural Development Foundation(ERuDeF:(仮)環境・農村開発基金)と協力して活動してきた。
主な成功事例には、Tofala-Mone森林回廊でのクロスリバーゴリラの新しい群れの発見、類人猿モニタリングプログラムの立ち上げ、コミュニティ管理体制の創設、プロジェクトエリアでの教育や生計プロジェクトの成功などが挙げられる。
農業やパーム油プランテーションの拡大による生息地の分断化は、森林での大型類人猿保全における最大の脅威のひとつだ。
「分断化したゴリラやチンパンジーの群れは、もし適切な生物学的な回廊によってつながらなければ、近親交配が進んだり病気発生しやすくなる傾向が見られます」と、ERuDeFのLouis Nkembi会長は述べる。
「遺伝学的な近親交配は、これらの世界的に重要な種を、地域的な絶滅に急速に追い込む可能性をもっています」。
回廊プロジェクトは、大型類人猿の群れの間の遺伝的な交流を増やし、地域内の保全区画の管理にコミュニティの参加を増やす手助けとなるだろう。
クロスリバーゴリラ
クロスリバーゴリラは、ゴリラのなかでも最も北西に生息する種だ。
クロスリバーゴリラは、ほかのローランドゴリラと外部形態、食生活、地域的道具文化(同つの使い方)の点で異なり、地上での生活時間がより長い。
すべてのニシゴリラがレッドリストで絶滅危惧IA類とされ、ニシローランドゴリラの場合はエボラウイルスも要因しているが、クロスリバーゴリラはアフリカに生息する類人猿のなかで最も絶滅の危機に瀕している。
IUCN(国際自然保護連合)のPrimate Specialist Group(霊長類専門家グループ)によると、世界で最も絶滅に近い25種の霊長類のひとつとされている。
Tofala Hill
Tofala Hill野生生物保護区は、カメルーンの南西州北東部の山岳地帯に位置している。
新しい保護区の表面積は8,000haを超える。
この地域の熱帯雨林は、世界的な生物多様性のホットスポットだと言われている。
Tofala Hill野生生物保護区は、Kagweneゴリラ保護区、Takamanda国立公園に続く、クロスリバーゴリラの保護を十全に考慮して設定された3つ目の保護区となる。
国際的な支援
プロジェクトを共同事業体には、イギリス、ヨーロッパを始めとした世界中の自然保護団体が含まれ、この世界的に重要な生物多様性ホットスポットの保護に携わる地域の保護活動家らへの、技術的な支援や金銭面でのサポートを提供する世界的なパートナーシップができあがっている。
Tofala Hill野生生物保護区は、個別の寄付や支持者からの金銭面の支援なしでは存在しえない。
プロジェクトのパートナー団体は、Taipei Representative Office(台北駐在員事務所)およびTaiwan Forestry Bureau(台湾林務局)に対して、クロスリバーゴリラ保全への継続的な支援と協力に感謝の意を表したい。
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