愛知目標は失敗?
和訳協力:金子 さえ、校正協力:久野 陽子
2014年10月6日 IUCN Article
2010年に日本で開催されたConvention on Biological Diversity(CBD:生物多様性条約)の締約国会議において、世界のほとんどの政府が、2020年までに絶滅の危機と地球の自然資本の回復に取り組むために設定された20の目標に同意した。
しかし最新のデータによれば、それらの目標の多くは達成できそうにない。
2014年のCBDの締約国会議が今日大韓民国で始まり、IUCN(国際自然保護連合)は目標達成に向けた努力を促進するための活動と資金の緊急投入を要求する。
「自然のための大きな計画の中間点において、2010年に私たちが発した緊急の呼びかけに対する答えがまだ得られていないことは明らかです。世界が同意した目標の多くは、期限内に達成できないでしょう」と、IUCNのJulia Marton-Lefevre事務局長は言う。
「政府が自然と国民の幸福のための努力と資源を増強させる必要性について、いくら言っても大袈裟すぎることはありません。これはすべての生き物にとって持続可能な未来を確保するために、私たちができる、そしてしなくてはならない、最良の投資なのです」。
保護地域のよりよい保護
陸域の17%と海域の10%を保護するという国際目標の達成に向けた経過は著しい進展を見せてはいるが、設定された保護地域の多くは十分な管理と資金供給がなされていない。
「各国は、保護地域の範囲を広げることに最も関心があるように思えます」と、IUCNのBiodiversity Group(生物多様性グループ)のJane Smart局長は言う。
「しかしそのほかの点については、大きな課題が残っています。効果的な管理や、生物多様性にとって特に重要な地域と生態学的に代表的な地域の保全などです」。
例えば、東アジアの保護地域における植生の喪失に関する最近の研究では、保護地域内の生物の生息環境変化の割合が、保護されていない土地における変化の割合とほぼ差がないことを示唆している。
同様に、ラテンアメリカでの調査では、この数年間の保護地域の森林消失の割合が250%増加していることが明らかになった。
「よく管理された保護地域は、生物多様性保全と持続可能な開発に非常によく貢献しています」と、IUCNの世界保護地域プログラム代表のTrevor Sandwith氏は言う。
「各国は、直ちに保護地域の管理を自国の開発政策に組み入れる必要があります。世界中で更なる政治的関与がなければ、保護地域のよりよい管理の達成には、まだ時間がかかるでしょう」。
地球上の保護地域の保全および社会的・環境的課題への自然の観点からの解決の促進は、11月12~19日にオーストラリアのシドニーで開催されるIUCNのWorld Parks Congress(世界公園会議)2014の焦点になるだろう。
そのほかの発表とともに、会議では保護地域の世界的な範囲についての最新のデータが発表される見通しだ。
生物多様性と持続可能な開発
CBDの第12回締約国会議のテーマは『持続可能な開発のための生物多様性』だ。
生物多様性の保全・回復・持続可能な管理は持続可能な開発の土台であり、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の達成のための活動において、中心的な役割を担う必要がある。
「持続可能な開発の、社会・経済・環境という側面は本質的につながっています」と、IUCNのPolicy and Programme Groupの代表であるCyriaque Sendashonga氏は言う。
「生物多様性は、貧困との闘いや我々がより幸せになるための努力を含む、今日の世界的な開発課題のいくつかに対処するうえで、本質的な、自然に基づいた解決をもたらしてくれます。もし我々が持続可能な開発目標を達成したいのなら、自然保護に対してもっと関心を持たれ、より多くの資金を投入しなくてはなりません」。
ニュースソース
http://www.iucn.org/news_homepage/?18420/Global-targets-set-for-failure
★ニュース翻訳を続けるためにご協力ください!
→JWCSのFacebookでページのイイネ!をして情報をGET
→クリックで守ろう!エネゴリくんの森でゴリラの保全に協力
→JWCSの活動にクレジットカードで寄付
※日本ブログ村の環境ブログに登録しています。クリックしてランキングにご協力ください。
にほんブログ村
« ホッキョクグマ、ボン条約での保護指定にむけ前進 | トップページ | 生物多様性の危機回避に向け、いまだ足取り重い各国政府 »
「31 生物多様性条約」カテゴリの記事
- 自然と共存する社会の実現(B20東京サミット協働提案より一部抜粋)(2019.09.03)
- 野生生物保護区の3分の1が道路や町の建設により破壊されている―研究論文(2018.08.30)
- 生物多様性の持続可能な利用:ブッシュミート及び持続可能な野生生物の管理(2018.05.19)
- ヨーロッパに生息する野生ミツバチ類の約10%が絶滅に直面しており、50%以上の状況が不明(2016.02.05)
- 気候変動に脆弱な生物の評価ガイドラインに関する最新の研究(2015.08.25)
「41 保護区」カテゴリの記事
- ブラジルの先住民グループが違法伐採をめぐる数十年の争いに勝利(2022.04.19)
- ガラパゴス諸島の貴重な海洋生物を中国の巨大漁船団からどのように守るか(2021.09.21)
- コロナ禍でのトロフィー・ハンティングの禁止がアフリカの野生動物と人々の生計を脅かす(2021.08.31)
- 最後に残された最上級の熱帯林が緊急に保護の必要があることが、最新の研究により明らかとなる(2021.08.17)
- 科学者らが2030年までに世界の3分の1の海洋を保護する手法を立案(2020.11.10)
「40 保全対策」カテゴリの記事
- スリランカがゾウ保護のためプラスチック製品の輸入を禁止へ(2022.01.25)
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の先にある未来には地球の健康の再生が必要(2021.12.28)
- 陸棲脊椎動物の絶滅が加速していることが調査により判明(2021.12.14)
- クロマグロ産卵場における致命的な漁具に対するトランプ政権による許可の差し止めを求め複数の団体が提訴(2021.11.02)
- ディスコライトでパニック:ボツワナのチョベ地区におけるアフリカゾウの侵入を防ぐ太陽光発電ストロボライト(2021.10.19)
「34 IUCN 国際自然保護連合」カテゴリの記事
- キツネザル類のほぼ3分の1とタイセイヨウセミクジラが絶滅危惧IA類に―IUCNレッドリスト(2021.11.16)
- 野生生物取引により絶滅の危機にある種が保護対象となるには10年の歳月が必要(2019.10.29)
- カメルーンのセンザンコウ乱獲 国際的な保護でも食い止められず(2019.01.08)
- 最新報告:フカヒレへの食欲が絶滅危惧種のサメの個体数を減少させる(2018.12.08)
- 巨木林の減少に伴いヨーロッパのクワガタムシの5分の1が絶滅の危機に(2018.03.22)
この記事へのコメントは終了しました。
« ホッキョクグマ、ボン条約での保護指定にむけ前進 | トップページ | 生物多様性の危機回避に向け、いまだ足取り重い各国政府 »
コメント