ヒラシュモクザメのボン条約附属書IIへの追加の提案―その3
和訳協力:古澤 陽子、校正協力:小山 園子
2014年8月11日 UNEP/CMS/COP11/Doc.24.1.15より抜粋(11・12ページ)
4.2 国際的な保全状況
IUCN(国際自然保護連合)は、S. mokarran(ヒラシュモクザメ)の保全状況について絶滅危惧IB類と分類し(IUCN 2014)、個体群に減少傾向が見られ、世界規模で絶滅に瀕していると定義している。
地域別には、北西大西洋やメキシコ湾で絶滅の危機にあり、とりわけ東大西洋では絶滅寸前とされる。
個体数が減少し、環境変動による影響を受けやすいことから、ヒラシュモクザメの管理と保全を強化する世界的な努力が行われるようになった。
2013年3月、ヒラシュモクザメはCITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称「ワシントン条約」)の附属書Ⅱに掲載された。
また、UN Convention on the Law of the Sea(海洋法に関する国際連合条約、通称「国連海洋法条約」)の附属書Ⅰ(高度回遊性の種)にも掲載されたことで、諸国に管理の協力が強く要請されている。
また、NOAA Fisheries Service(米国海洋大気庁海洋漁業局)のHMS Division((仮)高度回遊性の種部門)も、フロリダ沿岸水域を、多くの種のサメにとってのEssential Fish Habitat(EFH:(仮)魚類の必須生息環境)だと定めている。
この種の中にはヒラシュモクザメも含まれており、最近、Florida Fish and Wildlife Conservation Commission(フロリダ州魚類野生生物保護委員会)はこのサメを、フロリダ州海域で漁獲を禁止するサメの種のリストに加えた。
また、こうした動きに関連して、FAO(国連食料農業機関)のInternational Plan of Action for the
Conservation and Management of Sharks(IPOA-Sharks:サメの保護および管理に関する国際行動計画)は、RFMOs(地域漁業管理機関)が定期的にサメの個体群の状況を評価し、その加盟国が共通のまたは地域別のサメの管理計画に協力するように勧告してい
る。
IPOA-Sharksを履行している国は、アルゼンチン、ブラジル、フランス、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ポルトガル、スペイン、タイ、イギリス、アメリカである。
しかしほかのサメと同様に、シュモクザメ類の国際規制は十分ではなく、このサメの漁獲を規制している国はわずかである。
ICCAT(大西洋まぐろ類保存国際委員会 2010)の条約の適用水域内の漁場においては、S.
tiburo(ウチワシュモクザメ)を除く、Sphyrnidae(シュモクザメ科)に属するすべてのシュモクザメ類の死骸全体のどの部分であっても、船内で保持、積み替え、陸揚げ、保管、販売、売込みを行うことが禁止されている。
しかし、沿岸の発展途上国はこの限りではなく、義務付けられているのはシュモクザメ類の国際取引をしないことである。
RFMOsはフィニング(注)の禁止を採択したため、漁獲したサメを余すことなく使い切ることや、誤って漁獲したサメを生きたまま海に放すことが必要となる。
この方策が効果的に施行されれば、ヒレのためだけに殺されるシュモクザメ類の数を減らすことができるかもしれない。
しかし、RFMOsによる規制は、その加盟国と条約の対象となる漁場においてしか実効性を持たないため、シュモクザメ類の漁獲や取引については、管理、規制がほとんど行われていない。
2008年、European Community(欧州諸共同体)は、ICCATの適用水域内でのすべてのシュモクザメ類の保持禁止を提言したが、この方策は反対により実現しなかった。
ほとんどのRFMOsがフィニングを禁止しており、これが効果的に施行されれば、ヒレのためだけに殺されるシュモクザメ類の数を減らすことができるだろう。
フィ
ニングを禁止しているRFMOsは、ICCAT、GFCM(地中海漁業一般委員会)、IOTC(インド洋まぐろ類委員会)、IATTC(全米熱帯まぐろ類
委員会)、NAFO(北西大西洋漁業機関)、SEAFO(南東大西洋漁業機関)、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)、
CCAMLR(南極の海洋生物資源の保存に関する委員会)、NEAFC(北東大西洋漁業委員会)である。
2011年11月、Central
American Integration
System(SICA:中米統合機構)の加盟8か国(ベリーズ、コスタリカ、ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、
パナマ)は、SICA全体で拘束力を持つ、フィニングを違法とする規制を採択した。
多くの国のフィニング禁止令と異なり、2012年1月1日に発効したOSP-05-11規則は、SICA加盟国内でサメを漁獲、陸揚げする国内船や外国船だけでなく、SICA加盟国の国旗を掲げて公海で漁をする船にまで適用される。
加盟国政府は、ヒレが胴体全部かその一部に自然な形でついていなければ、サメの陸揚げを許可できない。
2011年、ICCATは、特定のサメのデータを提出していないあらゆる団体に対し、データの収集業務を向上させる計画書を、2012年7月までにSCRS(調査統計常任委員会)に提出するように求める勧告11-08を採択した。
ICCATのCompliance Committee(コンプライアンス委員会)は、現在までにこの勧告に関する加盟国の履行状況を調査していない。
どのICCAT加盟国も国内での履行を報告していないため、コンプライアンスが及ばない可能性のある国際取引の水準は不明である。
サメ関連製品を輸出入している国々が、そのような取引を監視または禁止する国内規制を履行していない可能性もある。
さらに、これらの製品を輸入する可能性のある国々のすべてがICCATに加盟しているわけではなく、延縄漁船の漁獲量について航海日誌に記録し、求めに応じて提出するように求める勧告(IOTC決議08/04)について認識していない、または、遵守する必要のない国もある。
勧告11/06では、この勧告の対象をすべての巻き網漁、刺し網漁、ポール・フィッシング、糸釣りなどを行う漁船に拡大した。
IOTCはシュモクザメの保有禁止を却下した。
Council of the European Union(欧州連合理事会)は、サメのヒレの除去に関する規制(EC)1185/2003について修正提案を採択した。
2013年6月6日以降、船上のサメのヒレは胴体についたままでなければならない。
注:フカヒレをとるために、海上でサメの胴体を捨てヒレだけを別の船に積み換える漁のこと
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