絶滅危惧IA類のニシコククジラ保護のための画期的な協力
翻訳協力:小林 木綿子、校正協力:清水 桃子
2014年9月24日 IUCN Redlist News Release
ロシア連邦、アメリカ合衆国、日本の各国代表は、IUCN(国際自然保護連合)による広域的なWestern Gray Whale(ニシコククジラ(北太平洋西部コククジラ群))の保全計画実施に向けたMemorandum of Understanding(MoU:了解覚書)に調印した。
Gray Whale(Eschrichtius robustus:コククジラ)のうち、北太平洋西部に生息する個体群として遺伝学的に区別されるニシコククジラは、絶滅危惧種に関するIUCNレッドリストで絶滅危惧IA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)とされ、2010年で生息数わずか125~156頭とされている。
1980年代に旧ソビエト連邦の科学者らが、ロシア極東部サハリン島沖に小規模の個体群が生存していると報告するまでは、乱獲が原因で絶滅したと考えられていた。
現在の生息数は徐々に増加しているものの、専門家によれば、年に1頭のペースで成熟したメスクジラが死ぬだけで、絶滅へと逆戻りする可能性があるという。
IUCNのニシコククジラ保全計画は、「最良の科学的知見に基づき、ニシコククジラに影響を及ぼす人間の活動を管理し、生息数を回復させる機会を最大にすること」を目指して、2010年に草案が作成された。
ニシコククジラはオホーツク海で夏を過ごす。
回遊ルートや冬場の繁殖海域はまだ十分にわかっていないが、ロシア、日本、朝鮮民主主義人民共和異国、大韓民国、中華人民共和国が生息域に含まれる。
International Whaling Commission(IWC:国際捕鯨委員会)の規制により、ニシコククジラを商業捕鯨と先住民の自給のための捕鯨から保護しているとはいえ、生息域の至る所に重大な脅威が残っている。
定置網やほかの漁具による混獲、海底油田やガス田の開発による騒音公害や石油流出などだ。
了解覚書の調印は、このたびスロベニアのポルトロージュで開かれた、IWCが2年ごとに行う会合の中で行われた。
求められている内部協議の完了後は、ニシコククジラが生息するそのほかの国も、今回の3カ国に名を連ねることができるよう、期待されている。
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