海からのSOS:ワイルドエイドが中国でのオニイトマキエイ類のえらの消費縮小運動を開始
和訳協力:蛯名 郁矢、校正協力:遠藤 智子
2014年7月9日 IUCN News story
オニイトマキエイ類のように象徴的な種の保護のために消費者の行動を変えることは、繊細で時間のかかるもので、その過程では、認知度を高め、考えを改め、最終的に行動を変えることが必要である。
こういった活動は、Save Our Species(SOS)から助成を受けているWildAidがしばらく前から取り組んでいる。
その取り組みには、消費者の関心を得るために、著名人を宣伝するための大使に任命したり、ソーシャルメディアやテレビ、掲示板広告を活用したりといった方策なども含む。
しかしながらまず取り組むべき主要なものは、最新の市場情報である。
この場合には、マンタのえら板料理の消費市場である広州(中国)であり、広州は世界消費の99%を占めている。
2014年6月にNGOのWildAid(ワイルドエイド)が発表した報告書で、体の部位を取るために殺されたオニイトマキエイ類とイトマキエイ類の数は、これ以上の増加が許されないほどに深刻な数に上っていることが明らかになった。
人目を引くこれらの魚が、医学的効果のない強壮剤の原料となるえらをとるためだけに殺されていることも、報告書により明らかになった。
繁殖ペースが遅いため、市場需要ほど個体数を増やすことができず、多くのエイ類の個体群が乱獲の被害を受けている。
ある最新データでは、オニイトマキエイ類の繁殖ペースは以前考えられていたよりもかなり遅く、寿命まで生きても5~15頭しか子を産まない可能性があると示唆されている。
報告書の注目点
・広州ではPeng Yu Sai(膨魚鰓)として知られるオニイトマキエイ類とイトマキエイ類のえら板の取引量と市場価格はどちらも、前回の調査以来ここ3年で大きく上がっている。
・ 広州のオニイトマキエイ類とイトマキエイ類のえら板市場は現状で年間138t、3000万USドル(約35億円、2014年11月21日付換算レー ト:1USドル=117.89円)と見積もられる。これはオニイトマキエイ類とイトマキエイ類のおよそ147,000頭分のえらにあたり、世界の消費量の 99%を占める。
・オニイトマキエイ類とイトマキエイ類の乾燥えら板の摂取に健康上の利点があることは、科学的に証明されていない。
・ 広州の複数の市場で入手したオニイトマキエイ類とイトマキエイ類のえら板のサンプルすべてから、ヒ素、カドミウム、水銀、鉛が検出された。ヒ素は中国の薬 局方(薬品等の製法・品質・用法などを載せた政府の刊行物のこと)の許容基準の20倍、カドミウムは3倍の量が含まれていた。
・2014年に調査した広州のPeng Yu Saiの消費者100名中99名が、えらに重金属が含まれていることを認識していなかった。
・調査結果によれば、Peng Yu Saiの消費者は、主に40歳以上の働く母親や既婚女性で、回答者のうちで、原料がオニイトマキエイ類およびイトマキエイ類由来だと分かっている人は半分未満であった。
近頃では、オニイトマキエイ類の全種がCITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称「ワシントン条約」)の附属書Ⅱに記載されている。
この附属書への追加記載が発効するのは、2014年9月14日である。
記載されている種の取引は、その生存を脅かす利用がなされないよう規制されている。
取引を取り締まるのが難しいということも、WildAidがサプライチェーンの出口である消費者に向けた取り組みを重視している一因である。
WildAidのPeter Knights専務理事は、以下のように述べている。
「中国政府や漢方医と共に取り組むことで、中国国内でオニイトマキエイ類のえらの取引に関わる消費者間の認識を高め、医学的価値が噂されるオニイトマキエイ類のえらに関わる諸問題の問題意識を高めていきたいと思います」。
この目的のために、WildAidは、テレビやソーシャルメディア、掲示板広告といったメディアを組み合わせた広報活動を開始するところだ。
我々も、間もなく活動内容やその効果について報告できることに期待を寄せている。
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