CITESがイランのチョウザメ養殖施設を視察
和訳協力:成田 昌子、校正協力:稲垣 語祐
2014年6月30日 CITES Other news items
イラン・イスラム共和国(通称「イラン」)のMinistry of Jihad-e-Agriculture(農業開発推進省)の管轄である、Acipenseriformes(チョウザメ目)に関するCITES(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称「ワシントン条約」)管理当局の立場にあるIran Fisheries Organization(IFO:イラン漁業機構)は、このほどCITES事務局がイランのチョウザメの養殖技術の発展の調査のための視察を受け入れた。
視察の中で、CITES事務局のScientific Servicesチーム代表のDavid Morgan氏は、チョウザメ目のCITES管理当局を担う、Iranian Fish Research Organization((仮)イラン魚類研究機構)、およびInternational Sturgeon Research Institute(国際チョウザメ研究所)の代表らと面会を行なった。
イランは近年、インフラ整備に相当額の資本投下を行い、チョウザメ養殖の技術的専門知識を飛躍的に発展させてきており、カスピ海に放流する稚魚の育成だけではなく、国内向け・輸出向けの養殖キャビア生産を行い、雇用を創出し、外貨収入を得ている。
CITES事務局は、イランにおけるチョウザメ養殖の著しい進歩を実際に観察し、野生の生息数が回復する見込みについて議論する機会を大いに歓迎した。
CITES常設委員会の次回会議(2014年7月7日‐11日 ジュネーブ)で、委員会は、イランだけではなくそのほかの生息国を含む、キャビアの養殖施設での生産が世界的に増加する傾向が野生集団に対して与えうる影響や、潜在的な違法、無報告、規制外の活動について検討することとなるだろう。
背景
カスピ海に生息するチョウザメ全種は、乱獲によって深刻な影響を受け続け、さらに生息環境の減少と劣悪化がまたそれに拍車をかけている。
ダム、貯水場、運河、あるいは農業用水路の建設の結果、回遊ルートが物理的に遮断されたり、産卵場所を変えることになった。
チョウザメは世界中でもっとも価値のある水生種に含まれ、27種のうち6種(Huso huso(オオチョウザメ)、Acipenser
gueldenstaedtii(ロシアチョウザメ)、A. persicus(ペルシャチョウザメ)、A.
stellatus(ホシチョウザメ)、A. nudiventris(シップチョウザメ)、 A.
ruthenus(コチョウザメ))は、カスピ海およびその集水域で見られる。
チョウザメ科は世界最古の魚類のグループの一つであり、およそ2億5千万年前から生息していると考えられており、その肉と卵のために数世紀にわたって捕獲されてきた。
採取して塩漬けされ、キャビアとして市場に出ると、卵は世界で最も高価な珍味とされる。
チョウザメ資源の深刻な減少が明白となり、CITESの第10回締結国会議(CoP10:ハラレ(ジンバブエ)、1997年)にて、チョウザメおよびチョウザメ製品の国際取引の規制が決議された。
これは、種の長期的な保全およびより良い管理を確実にする重要な、そして次世代へと資源を存続させるのに必要な一歩であった。
1998年以降チョウザメ全種の国際取引は、野生のチョウザメ個体群の持続不可能な漁獲および違法な取引の影響を鑑み、CITESの下で規制されてきた。
締約国会議は以降、チョウザメヘラチョウザメの保全および取引に関する数多くの決議を採択したが、とりわけ生息国と締約国に、チョウザメ漁の持続可能性を推 進する科学的研究を促進すること、密漁および密輸を減らすこと、そしてチョウザメの適正な管理と持続可能な活用につながる、生息地の政府間での地域協定を 促進することを要請した。
ニュースソース
http://www.cites.org/eng/CITES_visits_Iranian_sturgeon_aquaculture_facilities
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