絶滅危惧寸前種ジャワサイ:見えなくてもそこにいる
和訳協力:蛯名 郁矢、校正協力:藤木 香
2014年6月27日 IUCN News story
半ば神秘的な存在になっているサオラのように、絶滅危惧IA種のJavan Rhino(Rhinoceros sondaicus、ジャワサイ)は、ほとんど目撃されることはない。
だからといって、16名のJava's 4-man Rhino Protection Units(RPUs)メンバーは落胆しているわけではない。
RUPsがUjung Kulon National Park(UKNP:ウジュン・クロン国立公園)内の密生したジャングルを毎年数百kmにおよびパトロールすることで、このユニークな生物が密猟者から保護されており、今世紀に入ってからは1頭も殺されていない。
Save Our Species(SOS)から支援を受けている、International Rhino Foundation(IRF:国際サイ財団)のBill Konstant氏は、この生物を目にすることがいかに難しいかを事細かに説明する。
ジャワサイが35頭~44頭が生息していると推定されるUKNPは、ジャワサイの世界でも最後の砦だ。
4グループのRPUsが、密猟者発見のため年間200日ジャングルのパトロールを行い、公園の管理当局をサポートしている。
例年、UKNPでのRPUsの移動距離は2,000マイルに及び、これはほぼマドリードからモスクワまでの距離に匹敵する。
それでも、ジャワサイを目撃するのは運がよくても年に1度か2度しかない。
実際、2011年にはRPUsメンバーは誰も、パトロール中にジャワサイに遭遇しなかった。
しかしながら、驚くことにこの年、4頭の子どもを含む35頭の個体識別されたジャワサイが映像では捕えられている。
同じくらい重要なのは、今世紀に入ってからウジュン・クロンで密猟者に殺されたジャワサイは一匹もいないということだ、とKonstant氏は繰り返す。
いつも見られるわけではなくても、RPUsにはジャワサイがそこに生息していると分かっている。
分りやすい証拠があるからだ。
1tもあるジャワサイが水場への出入りでその巨体を引きずる川岸や獣道沿いには、大皿ほどの三指の足跡は一目瞭然だ。
戦車のような巨体をしたジャワサイは、密生した植物の中を通り抜けるときに目立つトンネルを残す。
あるいは、植物を噛みとる上唇が届かないくらい高いところに、みずみずしい葉を茂らせているふてぶてしい低木は、おかまいなしに引き倒す。
ジャワサイが1日に食べる植物の量は数kgにおよぶため、通り道にはかなりの量の糞が落とされている。
公園内にある水たまりには、泥浴びをしに定期的に訪れる。
こういった形跡すべてを考え合わせ、慎重に跡をたどり、それらの点をつなぎ合わせると、ジャワサイの動きや森での過ごし方が極めて正確に分かる。
こうした情報は、ジャワサイが生き延びるための保全戦略の実行にあたり不可欠だとKonstant氏は説明する。
再び目撃されることがなくても、ジャワサイはそこに存在しており、安心・安全に過ごし、すみかである森林内を餌を求め歩き回っていること自体が、努力の結晶なのである。
ニュースソース
http://www.iucn.org/news_homepage/?16041/Javan-Rhinos-Rangers-protect-the-unseen
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