違法取引により、さらに多くの世界遺産が危機に
2014年6月18日 IUCN International news release
翻訳協力:井村 春菜、校正協力:藤木 香
野生動物の違法取引が先例のないレベルにまで達していることを受け、タンザニアのセルース猟獣保護区が危機遺産に登録されたことが、カタール首長国のドーハで開催されている第38回世界遺産委員会にて、本日発表された。
この決定は、世界自然遺産に関する正式な諮問機関であるIUCNの勧告に従い、セルース猟獣保護区の保護に対する国際的な行動のきっかけとなることを目的としたものである。
「野生生物の違法取引、特にゾウの密猟は、依然として著しく深刻なレベルにあり、タンザニアはこの違法取引に最も大きな影響を受けている国の一つです」と、IUCNの世界遺産プログラム代表のTim Badman氏は語る。
「セルース猟獣保護区の危機遺産リストへの登録、またこの決定へのタンザニアの積極的な対応によって、この問題に対処するために緊急に必要とされている国際協力体制が強化され、セルース猟獣保護区がその類稀なる価値を取り戻すことを期待しています」。
手付かずの自然が残るアフリカ最大の地域の一つであるセルース猟獣保護区において、象牙と犀角の国際的需要が牽引する、ゾウとサイの密猟がエスカレートし続けている。
2005年に70,000頭いたセルース猟獣保護区のゾウの個体数は、2013年には13,000頭にまで激減し、また最近の調査によれば、世界遺産に登録された1982年と比べ、90%近くも減少している。
同様に、セルース猟獣保護区のblack rhino(クロサイ)の個体数も激減している。
IUCNの勧告にもかかわらず、タイのDong Phayayen-Khao Yai Forest Complex(ドンパヤーイェン-カオヤイ森林地帯)は危機遺産リストに登録されていないが、登録の可能性について来年審議される予定だ。
近年、ここではSiamese Rosewood(サイアミーズ・ローズウッド)およびその他の貴重な木材種の違法な伐採が急激に増えているために、公園職員による取り締まりがますます困難になってきている。
伐採は武装集団によって行われており、公園職員との激しい交戦が繰り広げられることもしばしばだ。
ここは、世界的に絶滅の危機にあるほ乳類、鳥類およびは虫類の生き残りと保全のために国際的に重要な地域なのだ。
同じくドーハの会議で審議されたオーストラリアのグレート・バリア・リーフは、水質悪化、気候変動、沿岸部開発計画など、様々な脅威にさらされている。
グレート・バリア・リーフの危機遺産リストへの登録の可能性については、2015年に審議される予定だ。
「グレート・バリア・リーフへの様々な脅威を私たちは非常に懸念していますが、オーストラリアによる積極的な対応を歓迎しており、それが来年には、グレート・バリア・リーフの新しい主要な長期的保護計画つながることを期待しています」と、Tim Badman氏は語る。
「グレート・バリア・リーフはすべての世界遺産の中で最も象徴的な遺産の一つであり、世界遺産委員会の決定は、この場所の保護への国際的な関心が並はずれた水準にあることを示します」。
IUCNが勧告する、ケニアのLake Turkana National Parks(トゥルカナ湖国立公園群)の危機遺産登録については、世界遺産委員会で明日審議される予定だ。
この場所の危機遺産リスト入りを勧告するのは4年連続のことで、その理由となるのは、大規模なダム建設と灌漑開発計画である。
これらの開発によって、地域の天然資源のみならず、生活のために天然資源に頼る地域社会をも脅威にさらされることになる。
ニュースソース
http://www.iucn.org/news_homepage/?16000/Illegal-trade-puts-more-World-Heritage-sites-in-danger
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