ヴィルンガの勝利?-イギリスの石油会社がアフリカ最古の国立公園での掘削停止に合意
和訳協力:樋口 由紀、翻訳協力:小林 玲子
2014年6月11日 African Conservation Foundation News
ヴィルンガ国立公園の自然保護活動家や運動家は本日、イギリスの石油会社SOCO International plc(SOCO社)が、コンゴ民主共和国において論議を醸している事業の停止に合意したことを受け、勝利を祝っている。
しかし、落とし穴は細部に隠れているものであり、多くの人はアフリカ最古の国立公園における石油採掘との戦いは、始まったばかりだとみている。
World Wildlife Fund (WWF、世界自然保護基金)との共同宣言において、SOCO社は、「ヴイルンガ国立公園内での試掘そのほかの掘削は、同公園が世界遺産に登録されていることに相反する活動でないことが、ユネスコとコンゴ民主共和国政府によって認められない限り、実施または委託しない」ことを誓約した。
これは、ユネスコの世界遺産委員会が、ヴィルンガ国立公園の世界遺産登録を取り消したり、公園の境界線を変更してその面積を縮小したりした場合には、野生動物の象徴といえる極めて貴重な地域において、SOCO社が事業を再開し得ることを意味している。
ヴィルンガの将来は、来週カタールのドーハで開催される世界遺産委員会の会議で議論される予定である。
本当に勝利なのだろうか?
こういった状況にも関わらず、いまだに同石油会社は、エドワード湖で現在行っている地震探査を今月完了する予定でいる。
探査の結果、豊富な石油埋蔵量が確認されれば、コンゴ民主共和国政府や産業界が、何としてでもヴィルンガ国立公園の世界遺産登録を取り消させようとする口実となることは避けられない。
SOCO社は、ブロック5鉱区での掘削についてコンゴ民主共和国政府と取り決めを行ったわけではなく、試掘は「ヴィルンガの今後の方針を決定する上で必要とする重要な情報をコンゴ民主共和国政府に提供するため」であると、一貫して主張している。
SOCO
社の副最高経営責任者のRoger
Caglo氏によれば、コンゴ民主共和国政府は、SOCO社が石油探査を行っているエドワード湖を公園から除外するために、3000平方マイル
(7,800㎢)の公園の境界線を引き直すように、ユネスコに申請することができる。
もしコンゴ民主共和国政府が石油による利益を望むのであれば、ヴィルンガ国立公園の世界遺産登録を取り消すように、ユネスコに申請することすら可能なのである。
さらに、SOCO社はヴィルンガで事業を行わずに、ブロック5鉱区の採掘権の他社への売却を選択することも可能である。
SOCO社が石油採掘権を保有するブロック5鉱区の約半分はヴィルンガの外側にある――そして人、平和、自然へのリスクは公園の境界線で急に消えることはないのだ。
SOCO社は石油の掘削やほかの石油会社への採掘権の売却が目的であることを、最終的に認めるのか?
地元の環境団体や国際環境団体は、石油の探査・採掘に断固として反対している。
WWF
はOrganisation for Economic Co-operation and
Development(OECD、経済開発協力機構)の、Guidelines for Multinational
Enterprises(多国籍企業行動指針)に基づき、SOCO社に対して訴状を提出した。
75万人以上の地元住民が公園内での掘削への反対署名を行った。
公園の80%の範囲で、コンゴ民主共和国政府が、様々な企業に石油掘削権を認めているのだ。
イギリス政府は、ヴィルンガ国立公園やそのほかの世界遺産地域における、SOCO社の石油探査を厳しく非難した。
WWF
の「Draw The Line((仮)境界線を引け)」、EcoInternetの国際署名活動、Save
Virunga((仮)ヴィルンガを救え)などの国際キャンペーンに加え、OrLando von
Einsiedel氏が製作した最近のドキュメンタリー映画「ヴィルンガ」も、SOCO社に圧力を与えてきた。
参加者の中にはRichard Branson卿やDesmond Tutu大司教などの有名人も含まれている。
自然保護活動家は戦いに勝利したのかもしれないが、ヴィルンガは今なお包囲網の中にあるのだ。
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