海からの持ち込み(Introduction from the sea)に関する決議
Resolution Conf. 14.6 (CoP16(第16回CITES締約国会議)改訂版)
和訳協力:兵頭 正志、桐生 洋子
校正協力:小林 邦彦
「Introduction from the sea」(以下、海からの持ち込み)の問題(2005年11月30日~12月2日:ジェノバ)に関するCITES(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、通称ワシントン条約)のワークショップ、「海からの持ち込み」に関する常設委員会ワーキンググループ(2009年9月14日~16日:ジェノバ)の会合、「海からの持ち込み」に関する常設委員会ワーキンググループ(2011年5月24日~26日:ベルゲン、および2012年4月24日~26日:Shepherdstown)の会合は、それぞれ締約国会議の決議13.18、決議14.48、決議14.48に準拠して開催された点を考慮し(CoP15改訂版)、
「海からの持ち込み」は、条約第Ⅰ条第5項に、「国家の管轄権に属さない海洋環境で採取したあらゆる生物種の標本を国内に持ち込むこと」と定義されている点を想起し、
また、条約第Ⅲ条第5項および第Ⅳ条第6項ならびに第7項では、附属書ⅠおよびⅡにそれぞれ掲載されている生物種の標本に関する「海からの持ち込み」を規制するための枠組みを設けている点を想起し、
「持ち込んだ国(State of introduction)」は条約内で定義されておらず、第Ⅲ条第5項、第Ⅳ条第6項、および第ⅩⅣ条第5項において、それに関する義務がある程度提起されている点を注意し、
国家は、国家の管轄権に属さない海洋環境で採取した標本に関して条約の規定に対応および準拠した方法で協力する点を要求し、
国家の管轄権に属さない海洋環境で採取した標本に関して、「海からの持ち込み」の証明書および輸出入の許可証を発給する際に、関連する地域漁業管理機関又は枠組み(RFMO/A)と相談および連携する必要性を各国が認識し、
2001年のInternational Plan of Action to Prevent, Deter and Eliminate Illegal, Unreported and Unregulated Fishing((仮)不法、無報告及び無規制操業を防止、阻止及び排除するための国際行動計画)やPort State Measures to Prevent, Deter and Eliminate Illegal, Unreported and Unregulated Fishing((仮)不法、無報告及び無規制操業を防止、阻止及び排除するための寄港国による措置に関する2009年の協定の採択)をはじめとしたFAO(国連食糧農業機関)が実施する、責任ある漁場の促進を目的とした対策への取組みについて確認し、
標本の貿易管理を標準的な規格で実施することを促進し、CITESの貿易データの正確性を向上させるために、国家の管轄権に属さない海洋環境で採取した標本に該当する条約の規定への共通認識の必要性を認識し、
さらに、「海からの持ち込み」は条約特有のもので、国家管轄権に属さない海洋環境で採取した標本に関する条約の実施に関連する場合にのみ現行の決議では適用され、本改訂版に記載されている以外の締約国の権利や義務には影響を及ぼさないと主張している点を認識し、
締約国会議は、
「国家の管轄権に属さない海洋環境」とは、国連海洋法条約に記載されているように、国際法と調和し、国家の主権や主権的権利に従った領域を越えた海域を意味するということに合意する。
さらに、以下を合意する。
a) 国家の管轄権に属さない海洋環境で採取した附属書IまたはIIに掲載されている生物種の標本が、該当の国に登録されている船舶によって採取され、同国に輸入される場合は必ず、条約第Ⅲ条第5項または第IV条第6項および第7項、それぞれの規定が適用されなければならない。これにより、同国が「持ち込んだ国」となる。
b) 国家の管轄権に属さない海洋環境で採取した附属書IまたはIIに掲載されている生物種の標本が、該当の国に登録されている船舶によって採取され他国に輸入される場合は必ず、条約第III条第2項および第3項、または第IV条第2~4項、それぞれの規定が適用されなければならない。これにより、標本を採取した船舶を所有する国は輸出国として登録され、当該標本が持ち込まれた国は輸入国となる。
c) 活動の許可を得る場合、以下の条件が必要とされる。
i) 当該活動が、船舶の登録が行われている国と船舶活動が許可されている国の間で書面による協定に基づき、関連するRFMO/Aによる活動の許可の枠組みと一致している。
ii) i)に加え、本協定が効力を生じる前にCITES事務局に通知されており、CITES事務局は全ての締約国および関連するRFMO/Aに対して本協定を利用可能にする。
国家の管轄権に属さない海洋環境で採取した附属書IまたはIIに掲載されている生物種の標本が、該当の国に登録されている船舶によって採取された後、他国により許可されその許可された国に輸入される場合は必ず、条約第III条第5項または第IV条第6項ならびに第7項の規程、あるいは条約第III条第2項および第3項または第IV条第2項~第4項、それぞれの規定が適用される場合がある。このような場合、書面による協定で相互に合意した通り、船舶が登録されている国が輸出国である、もしくは許可された国が持ち込みされた国でなければならない。
国家の管轄権に属さない海洋環境で採取した附属書IまたはIIに掲載されている生物種の標本が、該当の国に登録されている船舶によって採取された後、他国により許可され、第三国に輸入される場合は必ず、条約第IV条第2項~第4項の規定が適用されなければならない。この場合、船舶が登録されている国を輸出国と考えなければならず、当該国家からの輸出許可証の発給については許可された国による合意と事前協議を条件とする。船舶が登録された国から許可された上で、上記(i)項で示した書面による取り決めの中に当該許可が明示されていることを条件として、許可された国は輸出国となる場合がある。
国家の管轄権に属さない海洋環境で採取した附属書IまたはIIに掲載されている生物種の標本の場合、以下の条約の規定を満たしている国であることを勧告する。
a) 「海からの持ち込み」の許可証発給以前の「持ち込んだ国」
b) 輸出許可証発給以前の輸出国
c) 輸入許可証発給以前、または輸出許可証と同時に提示された場合の輸入国
当該標本が採取および陸揚げされている、またはその予定があるかどうか考慮すること。
i) 問題視されている海洋生物種に関する保全および管理措置を伴うその他の条約または協定を含む海洋生物資源の保全と管理のための国際法の下で、適切な措置と一致する方法
ii) 違法、無報告、無規制(IUU)の漁業による全ての方法
さらに、附属書IIに掲載されている標本を輸出する場合、non-detriment finding(種の存続等を害することにならないという確認)を行うために、輸出国の科学的許可部は自国内の、または必要に応じて他国の科学的権威者に相談することを勧告する。
「Introduction from the sea」の許可証発給、国家の管轄権に属さない海洋環境で採取した生物種の標本の輸出許可証、あるいはそのような証明証や許可証の真偽や妥当性の検証に際して必要となる情報の要求に対して、締約国がタイムリーに対応することを勧告する。
補足 - 追加説明
「海からの持ち込み」と「いずれの国の管轄権の下にない海洋環境において捕獲された種の標本の輸入、輸出及び再輸出」に関連する問題の取扱について明確にする。
I. 海からの持ち込み [以下は"追加合意された"事項, a]
1. 海からの持ち込み(IFS)証明書発給の条件は以下の通り
1.1.持ち込む国の科学的認可機関は種の存続等に害にならないこと(NDF)を確認する[第III条第5項(a)、第IV条第6項(a)](付属書II掲げる種に関しては第IV条第7項も参照)
1.2. 生きている標本について
a) 付属書I:提示され、生きている標本の受託者が、標本を適切に収容・飼養できる環境を備えていること[第III条第5項(b)]。
b) 付属書II:生きている標本の取扱には十分留意し、怪我、健康を害する危険、あるいは残酷な取扱いを最小限する[第IV条第6項(b)]。
1.3. 付属書Iに掲げる種に関しては、標本をおもに商業目的で使用しない[第III条第5項(c)]。
2. 持ち込む国の管理機関は海からの持ち込み証明書を発給する。
3. 海からの持ち込み証明書は、持ち込む国に標本が搬入される前に発給される(第III条第5項と第IV条第6項、持ち込む国の管理機関から事前の証明書の認可を要求する)。
注:海からの持ち込みは付属書IIIに掲げる種の標本には適用しない。
II. 海からの持ち込み後に発生する輸出/輸入/再輸出
このセクションは、標本が輸出国の領域から輸出や海からの持ち込み後に発生する輸出に適用される。いずれの輸出と同じ規則と手順に従うこと。ただし付属書IIに掲げる標本の輸出入に関しては、第XIV条第4項と第5項に該当する証明書の発行を必要とする場合を例外とする。
1.輸出
1.1. 輸出許可書の発給条件
1.1.1. 種の存続等に害にならないこと。つまり、海からの持ち込み証明書発給後に輸出が発生する場合は、輸出国の科学的認可機関は、海からの持ち込み時に行われた種の存続等に害にならない確認内容踏まえて輸出に関する種の存続等に害にならない確認を行う。
1.1.2. 海からの持ち込まれた標本を輸出するには、その標本が合法的に取得されたこと(すなわち標本が野生動植物保護の法規制に抵触して取得されなかった)を輸出許可書の発給条件とする[第III条第2項(b)と第IV条第2項(b)]。
1.1.3. 付属書Iあるいは付属書IIに掲げた種のいずれの標本も、怪我や健康を害する危険、残酷な取扱いが最小限になるよう準備・船積みされること[第III条第2項(c)と第IV条第2項(c)]。
1.1.4. 付属書Iに掲げる種に関しては、輸出国の管理機関はその標本に対して輸入許可が与えられていること[第III条第2項(d)]。
1.2. 輸出国の管理機関は輸出許可書を発給する
1.3. 輸出許可書は標本が輸出される前に発給される必要がある(第III条第2項、第IV条第2項、輸出許可の事前認可と表示を要求)。
1.4. 輸出許可書はすべての船積みに発給され、期限は6カ月とする(第IV条第2項)。
2. 輸入
2.1. 付属書Iが掲げる種の輸入許可書発給条件
a) 輸入国の科学認可機関が種の存続等に害にならない調査を実施する[第III条第3項 (a)]。
b) 提示され、生きている標本の受託者が、その標本を適切に収容・飼養できる環境を備えている[第III条第5項(b)]。また、
c) 標本を主に商業目的で使用しない[第III条第5項(c)]。
2.2. 輸入許可書は標本が輸入される前に発給される(第III条第3項、事前認可と輸入許可書と輸出許可書または再輸出証明書のいずれかの提出を必要とする)。
2.3. 付属書IIに掲げる種の標本を輸入する場合は、輸出許可書または再輸出証明書いずれかの事前提出を求める(第IV条第4項)。
3. 再輸出
3.1. 付属書Iと付属書IIに掲げる種に係る再輸出証明書発行の条件
a) 標本がワシントン条約に従って輸入されたこと[第III条第4項(a)と第IV条第5項(a)]。
b) すべての生きている標本は怪我、健康を害する危険、あるいは残酷な取扱いを最小限になるよう準備・船積みされる[第III条第4項(b)と第IV条第5項(b)]。また、
c) 付属書Iに掲げる種の生きている標本に関しては、輸入許可書が認可されていること[第III条第4項(c)]。
3-2. 再輸出証明書は再輸出する前に発給されること[第III条第4項と第IV条第5項、再輸出証明書の事前認可と提出を求める]。
III. 海からの持ち込み後に発生しなかった輸出/輸入/再輸出[以下"追加合意された"事項、項目b]
1. 輸出
1.1. 輸出許可書の発給条件
1.1.1. 輸出国の科学的認可機関は種の存続等に害にならない確認を行う[第III条第2項(a)と第IV条第2項(a)]。付属書IIに掲げる種の標本については、輸出国の科学的認可機関が種の存続等に害にならない確認を行う際に、他国の科学的認可機関、または必要に応じて国際的な認可機関に問い合わせることを推奨する。
1.1.2. 管理機関は輸出許可に先立ち、標本が合法的に取得されたことを確認する(つまり輸出国の野生動植物保護に関する法規制に抵触して取得されたものではない)[第III条第2項(b)と第IV条第2項(b)]。
1.1.3. 付属書IまたはIIに掲げる種の生きている標本の輸出に関しては、怪我、健康を害する危険、また残酷な取扱いが最小限となるよう準備・船積みされること[第III条第2項(c)と第IV条第2項(c)]。
1.1.4. 付属書Iに掲げる種の標本について、輸出国の管理機関は、標本の輸入許可が認可されていることを確認する[第III条第2項(d)と第IV条第2項(d)]。
1.2. 輸出国の管理機関が輸出許可書を発給する。
1.3. 輸出許可書は標本が輸出される前に発行される[第III条第2項と第IV条第2項、事前認可と輸出許可書の提出を必要とする]。
1.4. 輸出許可書はすべての船積みに発給され、期限は6カ月とする[第IV条第2項]。
2. 輸入
2.1. 付属書Iに掲げる種のみに適用される輸入許可書の発給条件
a) 輸入国の科学的認可機関は種の存続等に害にならない確認を行う(輸入を目的とした)[第III条第3項(a)]。
b) 提出された受託者が生きている標本を適切に収容・飼養する装備を備えている[第III条第3項(b)]。
c) 標本を主に商業目的で使用しない[第III条第3項(c)]。
2.2. 輸入許可書は実際に輸入が行われる前に発給されること[第III条第3項、輸入許可の事前認可と輸入許可書と輸出または再輸出許可書の提出を必要とする]。
2.3. 付属書IIに掲げる種の標本を輸入する場合は、輸出許可書または再輸出証明書いずれかの事前提出を必要とする(第IV条第4項)。ただし、付属書IIに掲げる種に関して、第XIV第4項、第5項に該当する証明書の発給を必要とする場合は例外とする。
3. 再輸出
3.1. 付属書Iと付属書IIに掲げる種の再輸出証明書発給の条件は以下の通り。
a) 標本はCITESにしたがって輸入されたこと[第III条第4項(a)と第IV条第5項(a)]。
b) いずれの生きている標本は怪我、健康を害する危険または残酷な取扱いを最小限になるよう準備・船積みされること[第III条第4項(b)、第IV条第5項(b)]。そして、
c) 付属書Iに掲げる種の生きている標本は、輸入許可書が認可されていること[第III条第4項(c)]。
3.2. 再輸出証明書は再輸出する前に発給されること[第III条第4項と第IV条第5項、再輸出証明書の事前認可と提出を必要とする]。
IV. 積み替え
1. 海からの持ち込みの場合、積み替えは運搬の一手段と認識し、海からの持ち込みと同じ条件を適用する。さらに積み替えに先立ち海からの持ち込み証明書の発給が必要とする。積み替えとなる標本を受託する船舶の長は、海からの持ち込み証明書がすでに発給済み、あるいは海からの持ち込みに先立ち発給されることを明示すること。
2. 輸出の際は、積み替えに先立ち輸出許可書が発給されていること、または積み替えの標本が輸入される前に、積み替えとなる標本を受託する船舶の長は、その標本の輸出許可書が発給済みまたは発給予定であることを明示すること。
原文
http://www.cites.org/eng/res/14/14-06R16.php
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