危機に瀕するクジラを脅かす規制緩和ストップをWDCが要請
翻訳協力:二之方 わかさ、校正協力:杉山 朝子
WDC(Whale and Dolphin Conservation、クジラ・イルカ保護協会)は、最近認可された米国の東海岸沿岸のNorth Atlantic right whales(タイセイヨウセミクジラ)の保護規制について、アメリカ政府が緩和を検討しているとのニュースを受け、迅速な対策をとるように呼びかけている。
12月には、WDCはこの海域を航行する65フィート(約20m)以上の大型船舶すべてに、恒久的に速度制限を設けるというキャンペーンで成果をあげていた。
しかしながら規制緩和が決定されれば、すでに絶滅の危機に瀕しているタイセイヨウセミクジラにもう一度脅威を与えることになるだろう。
タイセイヨウセミクジラは30年以上におよび、Endangered Species Act(「絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律」、通称「絶滅危惧種保護法」)に指定されており、生息数はわずか500頭ほどで、世界で最も珍しいクジラとなっている。
タイセイヨウセミクジラが死亡する最大の原因のひとつが船舶との衝突、または「Ship strikes(船による打撃)」である。
そのためWDCは、航行の速度規制を2013年12月以降も継続するよう呼びかける「Act Right Now((仮)今こそ行動を起こそう)」キャンペーンを2012年に開始した。
75,000人以上のWDCの支援者が、責任を負うべき米国政府機関(NOAA、海洋大気庁)に向けた署名に応じた。
WDCは、船舶の航行速度制限は引き続き実施されるだろうが、船舶の速度規制が、セミクジラの船舶との衝突による死亡の機会を90%近く減少させると、NOAA自身のデータが示しているにもかかわらず、なぜNOAAが規制を緩和すのか、というオバマ大統領の発言に歓喜した。
いくつかの浚渫された入港路や、ニューヨークからジャクソンビルまでの試験的な寄港地を含めた、速度規制の対象外とされる区域は、なんらかの船舶の安全性が根拠となっているようだと、WDCの北米支部のRegina Asmutis-Silvia事務局長は論じている。
「規制が施行されてから5年間は、速度規制海域において船舶との衝突によるタイセイヨウセミクジラの死亡は確認されませんでした。また速度規制の結果、人身事故や船舶の座礁・衝突が報告されたケースはないのです」と彼女は述べた。
また、「資格を持つ船長として、海上での安全が第一であることは認識していますが、国際規則によれば、安全を守るためであれば、どんな航行規則も守らなくていいことにもなります。これはすでに認められている例外に関する規則を打ち立てるよう要求していることにほかならず、セミクジラが犠牲になるでしょう」とも述べた。
WDCは、再び行動を起こすよう、広く一般に向けて呼びかけている。
我々は、2014年3月3日を前に請願書にサインしに行くことで「今こそ行動を起こそう」と人々に声をかけ、これらのきわめて重要な保護規制を緩和せず、この絶滅寸前のクジラの種を守るよう、米国当局に求めている。
http://uk.whales.org/news/2014/02/wdc-calls-for-action-to-stop-any-changes-to-regulations-that-could-threaten-endangered
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