世界渡り鳥の日2014-先駆的で持続可能な観光の取り組みに焦点をあてる
和訳協力:菊地 清香、校正協力:星子 啓子
2014年5月9日 CMS Press releases
5月10、11日に70か国以上で開催される「世界渡り鳥の日2014」では、世界で真に素晴らしい自然の一つ、フライウェイ(渡りルート)に沿って旅をする渡り鳥たちの壮大な渡りを保護するために、持続可能な観光が果たせる役割に焦点を当てる。
World Tourism Organization(UNWTO、世界観光機関)主導の、今年の世界渡り鳥の日を通じて推進される革新的な新プロジェクトのおかげで、世界で約500億羽と推定される渡り鳥の一部は、持続可能な観光開発の恩恵をほどなく受けられるようになるだろう。
今年の世界渡り鳥の日のキャンペーンは「Destination Flyways(行こうよ、フライウェイ)―渡り鳥とツーリズム」のテーマのもと開催される。
Destination FlywaysはUNWTO主導で現在準備を進めているプロジェクト名でもあり、世界の主要な渡り鳥の渡りルート沿いに位置する観光地で、持続可能な観光開発を進めることを目的としている。
渡り鳥にとって重要な場所として選ばれたアフリカ、アジア、ヨーロッパの8拠点に焦点を当て、環境と社会経済の双方の持続可能性を実現する原動力となり、野生生物、地域社会、旅行者に等しく利益をもたらすことを目的としている。
持続可能な観光の運営のための適切な枠組みの提供、観光の多様化やプロジェクト実施地域と周辺の地域社会の保全への、観光による収益の還元を通じて、Destination Flywaysプロジェクトは、鳥の生息地を保護すると同時に、渡りルート沿いの地域社会に雇用機会を創出するだろう。
海外に出かける旅行者は毎年10億人を超え、世界の貿易収入1兆4000億米ドル(約143兆5000億円、1ドル=約102.5円、2014年6月7日現在)、全世界のGDP(国内総生産)の9%を生み出しており、観光には持続可能な開発に寄与する巨大な可能性があることは明らかである。
「観光が国の豊かさ、企業の収入、地域の雇用をもたらすことは疑いのない事実です。持続可能な形で運営することにより、人と地球の双方に利益をもたらすことができるのです」と、United Nations(国連)のBan Ki-moon事務総長は第20回UNWTO総会に寄せたメッセージの中で述べている。
毎年開催される世界渡り鳥の日のキャンペーンは、Convention on the Conservation of Migratory Species of Wild Animals(CMS、「移動性野生動物の種の保全に関する条約」、通称「ボン条約」)およびAgreement on the Conservation of African-Eurasian Migratory Waterbirds(AEWA、アフリカ・ユーラシア渡り性水鳥の保全に関する協定)の2つの政府間条約により運営されている。
この2つの、政府間の野生生物に関する条約は、United Nations Environment Programme(UNEP、国連環境計画)が管轄している。
今年のキャンペーンでは、CMSとAEWAがUNWTOほかをパートナーに迎え、観光と環境保全が相互利益をもたらす関係にあることを訴える。
「観光が成長を続けると、環境や野生生物に対する圧力も増加します。適切な運営と保護はもちろん、関連部門の環境意識を向上させるための投資をしなければ、多くの素晴らしい生き物たちが窮地に追いやられることになります」と、国連の副事務総長でUNEP事務局長のAchim Steiner氏は述べた。
「観光はUNEPによって、持続可能で包括的なグリーン経済への移行にもっとも寄与できる10の経済部門の一つに選定されています。今回の重要な取り組みによってグリーン経済への移行が加速すると同時に、多くの地域社会の主要な収入源である観光が確保され、観光で脚光をあびる幾多の種が保護されるでしょう」とSteiner氏はつけ加えた。
UNWTOのTaleb Rifai事務総長は次のように述べた。
「観光は生物多様性の保護を前進させるうえで重要な責務を担っています。毎年、何百万人もの旅行者が旅を通じて世界中の野生動植物と出会い、感銘を受けています。このように人生を豊かにする体験がなかったら、観光が今日のように持続可能な成長の手段にはなり得なかったでしょうし、雇用を創出したり貧困を緩和したりする手段にもなり得なかったでしょう」。
「旅行を通じて自然体験を望む人は多く、特に野鳥本来の生息地でのバードウォッチングに興味を持っている人は世界中に何百万人もいます」と、CMSのBradnee Chambers事務局長は話した。
そして次のように続けた。
「バードウォッチングは、世界で数百万ドル規模をなす野生生物観察産業の重要な要素であり、特に開発途上国のような人口が増加している地域社会では、重要な収入源であり雇用の受け皿となっています」。
Destination Flywaysプロジェクトで選ばれた8か所のうちの1か所は、ケニアとの国境付近、タンザニア連合共和国の北の奥地にあるナトロン湖である。
ナトロン湖は、世界の75%のLesser Flamingo(コフラミンゴ)の生息地であり、東アフリカ唯一のこの種の繁殖地である。
観光がナトロン湖にとっての自然保護問題の解決策となる可能性はあるが、それは地域社会が観光の開発と実行に関わり、観光が実質的な利益を生み出す場合に限られる。
したがって、持続可能な観光が長期にわたる経済活動の代替案となるかどうかが非常に重要である。
例えば、ナトロン湖ではほかの選択肢として、ソーダ灰のくみ上げが提案されているが、フラミンゴ個体群に対する潜在的な危険があるために、深刻な懸念を招いている。
「UNWTO主導のDestination Flywaysプロジェクト、つまり世界渡り鳥の日2014のインスピレーションは、観光と生物多様性がいかにして相互に利益をもたらすことができるかを示す完璧な事例なのです。この世界渡り鳥の日に、10億人の旅行者を、世界の元祖長距離旅行者である渡り鳥を保護するための10億の可能性に変えるために協力してくださるみなさんを歓迎します」と、Rifai事務総長は話した。
世界渡り鳥の日2014を記念するイベントとしては、バードフェスティバルの開催、教育プログラムやバードウォッチングツアー、プレゼンテーションの実施、映画の上映、国際写真コンテストへの着手、また、国際的な自然保護活動のための資金を募るチャリティコンサートの開催などが挙げられる。
世界渡り鳥の日2014およびDestination Flywaysプロジェクトの企画準備は、German Federal Ministry of the Environment, Nature Conservation, Building and Nuclear Safety(BMU、ドイツ連邦環境・自然保護・原子炉安全省)の多大な支援により実現したものである。
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