紅海とインド洋でのサメ保全を後押しする新たな保全の枠組み
翻訳協力:板井 恵津美、校正協力:真井 悠美子
2014年2月17日 CMS Press Release
国連の支援のもと、サメ保護に関するワークショップが開催され、回遊性サメ類を保護するための取り組みが強化された。
この地域でのサメの保護の更なる支援のために、9か国の政府代表者がドバイに集まった。
会議では、国連環境計画(UNEP)のConvention on Migratory Species(CMS、「移動性野生動物の種の保全に関する条約」、通称「ボン条約」)で締結された回遊性サメ類の保護に関する了解覚書に、アラブ地域の9か国が調印し、回遊性サメ類への取り組みを拡大する権限を強化することで合意した。
調印は、International Fund for Animal Welfare(IFAW、国際動物福祉基金)がアラブ首長国連邦のMinistry of Environment and Water(環境水利省)との協同で組織した、サメ保護に関する共同訓練ワークショップに合わせて、ドバイで行われた。
CMSのBradnee Chambers事務局長はこう述べている。
「新たに調印した国の加入を歓迎します。回遊性サメ類への脅威を減らすために、地域的イニシアチブの発展と拡大を支援してくれることでしょう」。
アラブ首長国連邦、コモロ連合、エジプト、ヨルダン、リビア、モーリタニア、スーダン、シリア・アラブ共和国、イエメンの沿岸部には多数のサメ類が生息しているが、その中でも、世界最大の魚であるwhale shark(ジンベイザメ)、高速で泳ぐサメであるshortfin mako shark(アオザメ)、great white shark(ホホジロザメ)などは、サメ類に関する了解覚書にリストアップされている。
このような国の海域は、多くのサメ類が育ち、繁殖するのに不可欠だ。
プランクトンを食べる大型サメであるジンベイザメは、アラビア海とインド洋に集まるので、この水域も重要である。
また、回遊性サメ類は公海や他国の海域を泳ぎ渡るため、国同士が連携を取り、漁業やそのほかの脅威に対処する必要がある。
サメ類は世界中で深刻な脅威に晒されており、サメ漁とほかの漁での混獲の両方の乱獲に苦しめられている。
Food and Agricultural Organization(国連食糧農業機関)によると、ここ20年間のうちに年間最多で90万tものサメが漁獲されている。
世界中に出まわるフカヒレ市場のために、毎年およそ7千万匹のサメが補殺されていると推定されている。
しかし、違法、無報告、無規制な漁業や、主要な漁業国で捕られた魚の欠測データを考慮すると、漁獲数は少なくともこの2倍には上ると考えられる。
大半のサメ類は寿命が長く、成長速度が遅く、成熟にも時間がかかり、産子数も多くない。
これらの生物学的特徴のために、サメは特に乱獲されやすく、結果として、一度個体数が減少すると回復するまで時間がかかってしまうのである。
2010年に締結されたCMSのサメ類に関する了解覚書は、世界レベルで回遊性サメ類の保護に特化した最初の政府間条約であり、既存の野生動物と漁業の協定を補うものである。
今回、9か国が調印国に加わったため、調印国の数は36となった。
http://www.cms.int/sites/default/files/UNEP_CMS_PR_Sharks_Signatories_e.pdf
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