西アフリカのライオンが絶滅寸前
翻訳協力:島田 貴子、校正協力:上仲 淳子
2014年1月8日 Panthera Press Release
今日発行された報告によれば、西アフリカ全域でアフリカライオンが絶滅の危機に瀕している。
かつて、西アフリカのライオンはセネガルからナイジェリアにかけての全域に生息していたが、新しい報告は、ライオンの成獣は今では推定250頭にまで減少し、群れは孤立した4か所のみとなり、そのどれもがきわめて危機的な状況にあるとしている。
しかも、50頭以上の群れはそのうち一つしかない。
論文『西アフリカのライオンが絶滅寸前』が1月8日、科学雑誌PLOS ONEに掲載された。
これは、パンセラ(ネコ科の野生動物保護をミッションとするNGO)のLion Program(ライオンプログラム)で調査のコーディネーターを務めるPhilipp Henschel博士が率いる、西アフリカ・イギリス・カナダ・アメリカからなるチームが共著したものである。
過去20年ライオンが生息していたと考えられる11か国を対象とした、6年間におよぶ綿密な調査に裏付けられた結論にはハッとさせられる。
Henschel博士も参加した、アメリカのデューク大学が実施した以前のアフリカ大陸全域のライオンの生息状況の再調査からも、新しく素晴らしい成果が得られている。
どちらの調査も、ナショナルジオグラフィック協会のBig Cats Initiative(BCI、ビッグキャット・イニシアティブ)から資金援助を受けている。
パンセラのPhilipp Henschel博士は次のように説明した。
「2006年に西アフリカに生息するすべてのライオンを調査した際には、まだライオンが21か所の保護区で確認されていました。そこで、西アフリカに残されたライオンの最適な生息域として、この21か所すべてを調査したのです。しかし、結果は惨憺たるものでした。対象となった保護区は、その大半が名ばかりのもので、活動資金もなければパトロールスタッフも配置されていませんでした。そのせいで、ライオンもそのほかの象徴的な大型哺乳類もいなくなってしまったのです」。
チームの調査でわかったのは、西アフリカのライオンが現在生存しているのはたった5か国で、セネガルとナイジェリア、それからベナン、ニジェールおよびブルキナファソ3か国の国境にまたがる1集団にとどまることである。
一般的に知られているライオンは東アフリカや南アフリカにある有名な鳥獣保護区に生息するが、西アフリカのライオンは、それらとは遺伝学的に異なる性質を持つ。
最新の分子生物学研究では、かつて北アフリカに分布していたが野生では絶滅してしまった「Barbary Lion(バーバリーライオン)」やインドに生息する最後のインドライオンに近いとされている。
IUCN/SSC(国際自然保護連合の種の保存委員会)で、世界の野生のネコ科動物の保護状況を評価するCat Specialist Group(ネコ専門家グループ)で共同議長を務めるChristine Breitenmoser博士は、「西アフリカのライオンは、動物園にいる個体や捕獲された個体を含め、ほかのライオンにはない独特の遺伝子配列を持っています。もし西アフリカのライオンが絶滅すれば、ほかのどこにもいないこの地域に適応した極めて特殊なライオンを失うことになります。だからこそ、保護を急がねばなりません」と説明した。
人口増加が進んで家畜の群れも増えるにつれて、ライオンやそのほかの野生動物との土地の競合が起き、ライオンはアフリカから姿を消していった。
荒涼としたサバンナが開墾されて農地や牧場に変わったり、本来ライオンが捕食する野生動物が狩猟により減ったり、牧畜農家が家畜の群れを守ろうとしてライオンを殺したりしたのである。
ナショナルジオグラフィック協会のExplorer-in-Residence(駐在探検家)でBCIの共同設立者であるDereck Joubert氏は次のようにコメントした。
「どんなに調べても、正確なデータというものは得られません。調査結果が出る頃には、数値はすでに変わってしまっているからです。ライオンの個体数は急激に減少しています。一定エリア内にいるライオンがあまりに少なすぎて、簡単に頭数を数えることが可能なのはまったくく悲しい状態です。この調査活動で重要なのは、先ほども言いましたが、私たちの想像以上のペースでライオンが激減しているという現実を知ることであり、この問題への世界的な迅速な対処が必要なのです」。
今日、アフリカに生存しているライオンは35,000頭足らずで、その生息域の面積は本来の25%ほどである。西アフリカでは、現在50,000km2に満たない範囲にライオンが生息しているが、これはニューヨーク州の面積の半分ほどの面積で、西アフリカのライオンの本来の生息範囲のたった1%でしかない。
パンセラのLuke Hunter会長もこの論文の共著者の一人であり、次のように述べている。
「西アフリカでは、ライオンは破滅的に衰退しています。ライオンを何とかして守っていこうとしている国々はみな貧しく、保護活動の資金がほとんど捻出できないなかで頑張っています。ライオンや、独特な群れを作るチーターやAfrican wild dogs(リカオン)やアフリカゾウなどや、そのほかの絶滅の危機にある哺乳類を守るには、国際社会からの多額の資金援助が必要なのです」。
パンセラの取り組みのより詳しい内容は、同団体がアフリカに残されているライオンを保護し、繁殖させる活動をしているProject Leonardo((仮)プロジェクト・レオナルド、英語ページにリンクします)が随時報告している。
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