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2014年6月10日 (火)

キツネザル類保護に向けた緊急3カ年行動計画

翻訳協力:井澤 佳枝、校正協力:島田 貴子

2014年2月21日 IUCN Red List News Releases

Bristol Zoological Society(ブリストル動物学協会)、Conservation International(コンサベーション・インターナショナル)およびIUCN(国際自然保護連合) Species Survival Commission(種の保存委員会) Primate Specialist Group(霊長類専門家グループ)の霊長類学者らは、地球上でもっとも絶滅が危惧されるほ乳類としてキツネザル科のマダガスカル固有種を保護するため、緊急3カ年行動計画を作成した。

本日サイエンス誌に掲載された論文中にこの行動計画の概要が示されている。
行動計画には、キツネザル保護のために、優先的の異なる30か所についての対策が盛り込まれ、各プロジェクトへの資金調達を援助することが目標としている。
主な方針は以下のとおり。

・優先的保護区における差し迫った危機の安定化
・キツネザル類を絶滅から救うのに不可欠な、全生息地における長期的活動の基盤作り
・エコツーリズムの促進と拡大:キツネザル類といえば、マダガスカル観光の目玉となる「ブランド」である。その存在のおかげで、環境の影響を受けやすい田舎に住む貧困層が生計を立てられるようになり、霊長類と生態系に対する地域での価値を高めることも少なくない。
・キツネザル類の保護に最重要となる場所での長期的研究の維持と拡大:国内外の調査員が恒久的に留まれる現地調査拠点は、違法な狩猟・伐採を抑止すると同時に、マダガスカルの科学者に教育の場を提供できる。

マダガスカルの熱帯林および亜熱帯林が縮小し分断され、そこに生息しているキツネザル類は絶滅の危機にさらされている。
キツネザル類は生態系で重要な役割を果たしており、マダガスカル島特有の森林を保持するのに不可欠な存在である。
絶滅すれば、それが引き金となり、この絶妙なバランスの上に成り立つ森林群衆に生息するほかの種も絶滅してしまうだろう。

シタンやコクタンの違法伐採、採掘および焼き畑農業、これらすべてがキツネザル類の個体数減少を引き起こしている。
2009年にマダガスカルで政治危機が起きて以来、野生動物を食用目的として密猟する割合が急増したことと相まって、諸外国からの国際援助でまかなっていた環境対策資金の多くを失ったことにより、新たな保護区づくりに遅れが生じ、多くの地域でマダガスカル政府の存在感も支配力も薄れてしまった。

IUCN Red List of Threatened SpeciesTM(絶滅危惧種に関するIUCNレッドリスト)での評価案では、90%以上のキツネザル類が絶滅の危機に瀕していると記載されている。
たとえば、島北東部の熱帯雨林の数か所に分布しているLarge-bodied Indris(Indri indri、インドリ)やDiademed Sifaka(Propithecus diadema、カンムリシファカ)が絶滅の危機にさらされている。
そのため、キツネザル類の保護活動を迅速かつ戦略的に進展させることが急務である。

Bristol Zoo Gardens(ブリストル動物園)の主任研究員で、IUCN-SSC霊長類専門家グループのマダガスカル地域副代表であるChristoph Schwitzer博士は次のように語る。
「5年にわたる政治危機によってキツネザル類の深刻な危機は悪化しましたが、われわれはまだ希望が残っていると信じています。過去においても、地域社会、非政府組織、研究者が一丸となり、危機にある霊長類の保護に成功した例があります。早急に関係者全員に呼びかけ、この行動計画に掲げている目標達成や、キツネザル類の持続的な生存およびかれらがもたらしてくれる多くの生物学的、文化的そして経済的な豊かさの確保に向けて、共に取り組んでいただくよう要請します。キツネザルなくしては、マダガスカルだけでなく世界中がより一層豊かさを失うのは間違いないのですから」。

http://www.iucnredlist.org/news/emergency-three-year-action-plan-for-lemurs

 

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