自然保護団体が「世界淡水魚バイオ・ブリッツ」を立ち上げ、市民科学者に魚の観測の協力を求める
翻訳協力:古澤 陽子、校正協力:木田 直子
2014年2月2日 IUCN Red List News Releases
世界湿地の日、自然愛好家たちを淡水魚の保護に参加させることを目的に「Global Freshwater Fish BioBlitz」((仮)世界淡水魚バイオ・ブリッツ)が始まった。
International Union for Conservation of Nature(IUCN:国際自然保護連合)とWetlands International(WI:ウェットランドインターナショナル)が共同で運営するFreshwater Fish Specialist Group(FFSG:淡水魚専門家グループ)が、World Wildlife Fund(WWF:世界自然保護基金)、Conservation International (CI:コンサベーション・インターナショナル)、FishBase(フィッシュベース)、Fisheries Society of the British Isles(イギリス諸島水産学会)、Group on Earth Observations Biodiversity Observation Network (GEO-BON:地球規模生物多様性観測ネットワーク)といった国際的な団体の協力を得て、この新たな地球規模の取り組みを導入した。
iNaturalist.orgが企画したバイオ・ブリッツプロジェクトは、FFSGのwebサイトで公開される予定だ。
釣り人、写真家、学生または自然愛好家、そのいずれであるかに関わらず、世界中の誰もがその生息地で観察された淡水魚の写真をアップロードし、いつどこでその魚を見たのか詳細をコメントすることが求められている。
魚の分類学が専門の複数のボランティアが管理人となって種の識別、鑑定を行うことで、データが研究に利用できるレベルであることを保証する。
この情報は、科学者たちが新種を記載したり、絶滅危惧種に関するIUCNレッドリストの絶滅の危険度を図ったりするのに役立つ可能性がある上に、侵略的外来種の広がりを監視したり、Encyclopedia of Lifeなどの自由にアクセス可能なオンラインのデータ・アーカイブに保存することも可能だ。
さらに、このプロジェクトの発足により、国際的に重要な生息地の保護における淡水魚の重要性が強調される。
ラムサール条約のChristopher Briggs事務局長は、「国際的に重要なラムサール湿地、つまりラムサール条約登録湿地の3/4以上はそのすべてか一部が淡水の場所であり、そのうち30%以上はそこに棲む魚の種の重要性が理由でラムサール条約に登録されています。湿地に存在する種のデータが増えるほど、より良い管理が可能となります。淡水魚バイオ・ブリッツは、湿地とそこに生息する魚類を管理するために欠かせない情報を豊富に提供してくれるでしょう」と述べた。
CIのMoore Center for Science and Oceans((仮)ムーア科学海洋センター)のSenior Vice PresidentであるWill Turner氏が後述のように説明するように、このようなプロジェクトはいま必要とされている。
「淡水魚は脊椎動物の中で最も危機的な種と言えるでしょう。全種の1/3が乱獲や汚染、生息地の喪失、生息環境の分断化、侵略的外来種、気候変動により絶滅に瀕しています」。
WWFの淡水保全科学の上席研究員であるMichele Thieme氏は、「バイオ・ブリッツは、淡水魚の保護を目的としてクラウド・ソーシングの力を結集させる私たちの方法です。自然保護には野生生物のモニタリングが欠かせません。野生生物がどこに生息しているのか、どんな危機に直面している可能性があるかが分からない限りその種を保護することはできないためです。全世界の人々に参加いただくことで、私たちだけでは不可能なほど多くの種を多くの場所で確認することができます」と話した。
FFSGの統括議長であるRichard Sneider博士は、「15,000種以上の淡水魚がいる上に、その種数は増え続けていますから、これは莫大な作業です。年に平均で300以上の魚種が新たに記載されています。より多くの一般の方々が、観察を続け、見たものを記録してくれるほど良いのです」と述べた。
世界淡水魚のバイオ・ブリッツは、Amphibian Specialist Group(両生類専門家グループ)が2年以上前に始めた別のバイオ・ブリッツに影響を受けている。
Sneider博士は、「世界中の市民科学者が参加した、Global Amphibian BioBlitz(世界両生類バイオ・ブリッツ)のような成功を繰り返せるよう期待しています。世界両生類バイオ・ブリッツでは、わずか2年間で1,500以上の分類群を記録し、新種まで発見しました。なかなかの成功を収めたと言ってよいでしょう」と話した。
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