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2014年5月 3日 (土)

クジラを騒音から守る

翻訳協力:蔦村 的子、校正協力:木田 直子

2014年1月20日  IUCN International news release

石油・ガス業界、科学者および環境保護論者の間での類を見ない協力により、希少クジラ類などの種に対する地震探査の影響を最小限に抑える方法が立証された。

専門家たちは、IUCN(国際自然保護連合)のWestern Gray Whale Advisory Panel(WGWAP:西部太平洋コククジラ専門委員会)およびSakhalin Energy Investment Company Ltd.(サハリン・エナジー・インベストメント社)と協力し、海底地震探査がクジラ類などの海洋生物種に与える影響を減らそうという段階的な指針をまとめ上げた。

Aquatic Mammals誌で発表されたこの研究では、主に石油やガスの探査を目的とした海底調査において強烈な音響を使う際に脆弱な海洋生物種に害をなすリスクを最小限に抑え、かつそれをモニタリングする、徹底的で堅実な実際的アプローチを提案している。

「石油ガス会社や規制機関などにとって、これは、予防的で信頼できるうえに効果的な、好結果が得られる環境のモニタリングおよび影響の軽減プログラムを開発・実施するすべての局面において、価値のあるツールです」と、WGWAPのメンバーで論文の筆頭著者である、デューク大学のDoug Nowacek博士は語る。

地震探査では、船舶からけん引した空気銃を使って、強烈な炸裂音を繰り返し発生させる。
センサーはその反響を測定し、海底およびその下の数kmの深さに至る地質構造の詳細を明らかにする。
音響は、海底を探査し画像化するうえで強力なツールであり、主にエネルギー産業が、石油やガスの在処を正確に特定するために利用している。
このような測量調査はまた、大陸棚の地図を作成したり、新たな洋上風力エネルギープロジェクトに最適な場所を発見するためにも活用される。

クジラは、コミュニケーションや回遊、採餌を音に頼って行っている。
地震探査で発生した大きな音にさらされることにより、ストレスを受けて行動が変化し、採餌や子育てに影響が及ぶか、あるいは直接の肉体的損傷の原因になる可能性がある。

この研究では、日本のすぐ北側のロシア沿岸部にあるサハリン島近くの、西部太平洋コククジラの主要な餌場に近いところで行われる測量調査において、サハリン・エナジー・インベストメント社(Gazprom(ガスプロム社)、Shell(ロイヤル・ダッチ・シェル社)、三井および三菱を株主とする石油ガス会社)が採用している、地震探査のために開発されたこれまでで最も包括的なクジラ保護プログラムについて説明している。

「この調査は予定通り終わりましたし、すべてのモニタリングと影響の軽減策はうまく実施されました。会社は必要なデータを収集する一方で、同時に、クジラへの妨害リスクを最小限に抑えることができたのです。このアプローチはとても上手くいきましたので、現在行っている分析結果では、クジラへの重大な直接影響は示されていません」と、WGWAPを招集するIUCNのGlobal Marine and Polar Programme((仮)世界海洋・極地プログラム)のディレクターCarl Gustaf Lundin氏は言う。

サハリン近くの餌場(沖合の巨大な石油およびガス埋蔵地域)は、IUCN Red List of Threatened SpeciesTM(絶滅危惧種に関するIUCNレッドリスト)で絶滅危惧IA類に記載されている西部太平洋コククジラの生存のためには、非常に重要である。
繁殖期および採餌から子育て出産エリアへの長距離にわたる移動中は、クジラは食餌行動をとらない。
数万kmにわたる、哺乳類では最も長い移動の一つとして知られるクジラの旅では、十分な食物、体重、および体力の獲得が極めて重要である。

サハリンエネルギー測量調査および合同の影響軽減とモニタリングプログラムを開発実施した経験に基づき、著者らは、環境保護の観点から取り扱いに慎重を要する地域における地震探査に適用され得るより広いアプローチを提案する。
しかし、このような調査では、それぞれその固有の環境条件を考慮に入れなければならない。
たとえば、地方特有の種、環境上の特徴、同地域におけるほかの計画事業の歴史と性質である。

「地震探査中の影響を最小限に抑える鍵は、海洋生物の分布や移動に関してあらかじめ知り、それに応じて測量調査のタイミングを決定することにあります」と、WGWAPのSeismic Survey and Noise Task Forces((仮)地震探査および騒音対策特別委員会)の議長であり、International Whaling Commission(IWC:国際捕鯨委員会)科学委員会会長で、論文の共著者であるGreg Donovan博士は言う。
「サハリンにおけるケースでは、氷が溶けていてもほとんどのクジラはまだ到着していない春、できるだけ早い時期に調査を実施しなければならないことを意味します」。

研究では以下の内容についても必要性を推奨している。

・基礎的な生態学的データの収集
・詳細な事前計画、コミュニケーション、ならびに調査計画および影響軽減アプローチへの批評的評価の実施
・調査エリアの限定および推定騒音レベルを制限して調査による騒音の影響を最小限に抑えること
・調査の開始前、最中、および終了後の騒音レベル、クジラの居場所および行動を、視覚・音響の面でリアルタイムにモニタリングすること
・動物があまりに地震探査活動地域の近くにいたり、または地震探査活動に強い反応を示した時には調査を中止すること
・今後の計画および影響の軽減のために情報を提供するために、結果に対する系統的な解析を行うこと

世界中で地震探査を計画している政府や会社の中には、サハリン・エナジー・インベストメント社の測量調査における経験とAquatic Mammals誌の論文に記載されている信頼できるアプローチに、すでに興味を示しているものもある。

専門家のコメント

・論文の筆頭研究者で、WGWAPメンバーでもあるデューク大学のDoug Nowacek博士と、カリフォルニア大学サンタクルーズ校出身でWGWAPに関係する科学者で、Southall Environmental Associates, Inc.の会長兼上席研究員であるBrandon Southall博士:
「大洋における地震探査業務の環境への影響を減らす方法に関する私たちのガイドラインが、世界中のエネルギー会社や環境局のマニュアルに織り込まれることを願っています」。

・論文の共同著者で、WGWAPの(仮)地震探査および騒音対策特別委員会の議長であり、また国際捕鯨委員会科学委員会会長のGreg Donovan博士:
「私たちの研究論文は、この業界での経験や実務知識と、音響学者および海洋哺乳類科学者からの厳密な応用科学とを利用し、地震探査により起こり得る影響を最小化し、用いられた影響軽減策の効力を量的に評価するために、広く適用できる枠組みを開発しています。私たちの目標は、サハリンで学んだ教訓をまとめ、地震探査の目的あるいは地域内に分布する種に関係なく、環境保護の観点から信頼のできる方法で地震探査を行えるようにするアプローチを発展させることです」。

・IUCNのJulia Marton-Lefevre事務局長:
「私たちは、専門委員会およびサハリン・エナジー・インベストメント社による海洋生物を守る責任あるエネルギー開発への公約を誇りに思い、沖合で操業しているほかの会社にもこうした価値ある勧告を必須の行動として採用するよう求めます。IUCNは、石油・ガス業界が環境への影響を認識するだけでなく、自然を犠牲にすることなくエネルギーの必要性を満たす解決策の一環となるべきだと思うのです」。

・IUCNの(仮)世界海洋・極地プログラムのディレクターCarl Gustaf Lundin氏:
「実際、西部太平洋コククジラなどの海洋生物種は、その生息域の近くで操業するすべての会社の団結した努力によってのみ、救われ得るのです。WGWAPは、企業、科学者、および自然保護団体が、私たちの海と大洋の持続可能な未来を保証するために、どのように協働できるかのモデルとなります。私たちは、サハリン・エナジー・インベストメント社とはもう10年間も協力関係にあります。この会社の地震探査に対するアプローチは、WGWAPと共同開発したもので、最高レベルの環境基準に従う、責任ある石油・ガス事業者がとり得る予防的アプローチの一例に過ぎません。私たちが学んだ教訓を分かち合い、サハリンおよび世界中の企業がその業務を改善するのを手助けしたいと、切に願っています」。

・WGWAP議長で、IUCNのSpecies Survival Commission(SSC:種の保存委員会)のCetacean Specialist Group(鯨類専門家グループ)のRandall Reeves博士:
「環境保護を真剣に考えるなら、遠くにいて業界との話し合いを傍観している余裕はありません。沖合の石油・ガスの場合は自然へのリスクは巨大ですから、こうしたリスクを測定し最小限に抑えるために、信頼できる科学が必要なのです」。

・WGWAPのメンバーで、Russian Academy of Sciences(ロシア科学アカデミー)のP. P. Shirshov Institute of Oceanology(P.P.シルショフ海洋学研究所)のLaboratory on Noises and Sound Fluctuations((仮)騒音および音響の振動実験室)室長であり、論文の共著者のAlexander Vedenev博士:
「私たちの生活に必要で貴重な生産物を生み出す一方で、企業は、地球的共有物の一部である自然資源に影響を与えます。こうした生産は、価値ある公共の資源に影響を与える可能性のあるリスクを最小限に抑えながら、出来る限り責任をもって行うべきものです。貴重な自然資源の賢明な利用と保護に努めるにあたり、地震探査の計画、実行および解析において責任ある事例に従うことが、すべての当事者にとって最もためになるのです」。

背景
研究論文「海洋哺乳類に力点を置いた、海洋地震探査の環境への影響をモニタリングし、最小限に抑える責任ある実践」の著者には以下のWGWAPの(仮)地震探査および騒音対策特別委員会のメンバーが含まれる:デューク大学のDong Nowacek博士(米)、Shell Global Solution(シェルグローバルソリューションズ社)のKoen Broker氏(オランダ)、IWCのGreg Donovan博士(英)、テキサスA&M大学ガルベストン校のGlenn Gailey博士(米)、JASCO Applied Sciences Ltd.社のRoberto Racca博士(カナダ)、Okapi Wildlife AssociationのRandall Reeves博士(カナダ)、ロシア科学アカデミーP.P.シルショフ海洋学研究所のAlexander Vedenev博士(ロシア)、National Oceanic and Atmospheric Administration(NOAA:米国海洋大気庁)のDavid Weller博士(米)、Southall Environmental Associatesおよびカリフォルニア大学サンタクルーズ校のBrandon Southall博士(米)。

この研究は、2006年から2012年にかけてWGWAPが行った調査の成果である。
IUCNにより招集されたWGWAPによって実施され、サハリン・エナジー・インベストメント社の後援を受けた。
UK Department for Environment, Food and Rural Affairs (DEFRA:英国環境・食料・農村地域省)からIUCNへの助成金は、筆頭著者であるNowacek博士とSouthall博士による原稿執筆時間の確保のために使われた。

キーワード
・環境保護の観点から取り扱いに慎重を要する地域とは、絶滅危惧種を含むか、または、複数の種もしくは多数の個別の生物体にとって非常に重要な子育てもしくは採餌上の生息地を含む地域であるとみなされている。
・モニタリングとは、地震探査が終わった後の影響を検査し、かつその成果を将来の探査計画に当てはめる(たとえば騒音の基準を見直す)ためにデータを収集する計画を指す。
・影響軽減とは、探査が行われる地域で特に動物への影響を排除または最小限に抑えるために計画され、探査中に実施された方法を意味する。このような方法の範囲は広く、安全範囲の設定から地震探査のタイミングまでに渡る。

WGWAPについて
2004年以来、IUCNはサハリン・エナジー・インベストメント社と協力して、企業の操業に関連して西部太平洋コククジラの個体群およびその生息地に課されるリスクを最小限に抑える方法について、助言と勧告を行ってきた。
この広範囲にわたる取り組みの一環として、2006年にIUCNは、独立した科学者たちの常設専門委員会「西部太平洋コククジラ専門委員会(WGWAP)」を設立した。
この専門委員会は、この学問分野に属するロシアの専門家と国際的な専門家11人から成りる。
委員会は、世界最大の石油・ガス操業の一つであるサハリン2プロジェクトにおいて、会社の操業計画および影響軽減策に関して科学的な助言および勧告を提供する。
この積極的かつ効果的な協力を通じて、クジラへのリスクを低減するユニークで全体論的な、最高水準を極めた一連のモニタリングおよび影響軽減策が完成した。
このプロジェクトは、いかに絶滅危惧IA類の種が経済開発と共存できるかを論証し、またこれらの種に関する科学的知識の向上と、サハリンのような環境保護の観点から取り扱いに慎重を要する生息地における石油・ガス操業の、環境管理面での国際的な最優良事例を確立することを目的としている。

http://www.iucn.org/news_homepage/?14297/Keeping-Whales-Safe-in-Sound

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