バルカン半島のエジプトハゲワシを救え
和訳協力:オダウド 陽子、校正協力:木谷 咲子
2013年12月5日 IUCN Red List News Release
エジプト神話で、豊穣と母性の守護のシンボルであるエジプトハゲワシ(学名:Neophron percnopterus)は、ヨーロッパに生息する4種のハゲワシの中では一番小型の種だ。
このハゲワシの特徴は、白い冠毛、とがった羽毛と白いくさび形の尾にある。
個体数が近年急激に減少しており、IUCN(国際自然保護連合)加盟団体であるPPNEA(Protection and Preservation of Natural Environment in Albania、NGO団体)は、アルバニアとその周辺地域においてエジプトハゲワシを絶滅の危機から救おうと尽力している団体の一つである。
エジプトハゲワシの個体数は、全世界で21,000頭~67,000頭と推定され、絶滅危惧種に関するIUCNレッドリストの絶滅危惧IB類(EN)に指定されている。
バルカン半島に生息する旧北区の種であるエジプトハゲワシのつがいの数は80ペアを下回るが、そのうち約10ペアはまだアルバニアで繁殖を続けている。
人類の活動は自然環境を変え、それがエジプトハゲワシ存続にとっての多くの脅威となっている。
例えば、中毒、感電死、食糧の減少、攪乱、渡りルート上に存在する脅威、生息地の変化、などが挙げられる。
エジプトハゲワシの死亡原因については、それでもなおさらに詳しく調査する必要がある。
ブルガリア、ギリシャ、およびその近隣諸国でのエジプトハゲワシの種の存続のため、Bulgarian Society for the Protection of Birds(BSPB、ブルガリア鳥類保護協会)は、Hellenic Ornithological Society(HOS、ギリシャ鳥類学会)、World Wildlife Fund-Greece(WWFギリシャ)、英国王立鳥類保護協会(RSPB)と協力して、EU環境基金LIFE+のプロジェクトとして"The Return of the Neophron"「(仮)エジプトハゲワシの復活」を立ち上げている。
IUCN加盟団体のPPNEAも、アルバニアでプロジェクトに参加している。
研究のための重要な取り組みの一つとして、バルカン半島に生息するエジプトハゲワシ個体群に、衛星追跡タグを取り付ける作業がある(渡りルートの研究はこちら)。
これによって、彼らの渡りの経路をより理解し、死亡原因についてもさらに知ることができる。
Mashkulloraと名付けられたエジプトハゲワシの幼鳥は、アルバニアで最初に追跡タグが取り付けられた個体だったが、残念ながら越冬地に向かう途中、ペロポネソス付近で溺死してしまった。
アルバニア語で「Kali i Qyqes」(カッコウの馬)と呼ばれるエジプトハゲワシ。
多様な地形に富むアルバニアの国土には、彼らの生息場所に適した多くの断崖が存在している。
エジプトハゲワシのほとんどはアルバニア南部(ジロカストラ州やヴロラ州)に生息しているが、北部の一部の州で目撃されることは非常に少ない。
アルバニアでは、過去6年間で、エジプトハゲワシの個体数は50%も減少している。
絶滅を防ぐためには早急な対策と、死亡原因のより深い理解が不可欠だ。
PPNEAは協力団体と共に取り組みに加わり、アルバニアのエジプトハゲワシを絶滅から守ろう、という声を高める、来年度に実施する的を絞った保全活動もすでに計画している。
http://www.iucnredlist.org/news/save-the-egyptian-vulture-on-the-balkans
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