欧州議会は野生生物犯罪と闘うための重要な措置を取る
2014年1月20日 IUCN Red List News Release
翻訳協力:六本木 里紗、校正協力:鈴木 洋子
野生生物犯罪に関する決議についての画期的な動議が、1月15日に欧州議会にて承認され、賛成は647票、反対は14票、棄権は0票であった。
決議においては、野生生物犯罪を人身売買や麻薬密売と同等のレベルとみなし、それに対する措置を取るよう呼びかけている。
IUCNはこの決議に強く賛成の意を示し、科学的支援を提供し、ヨーロッパの関連諸機関と協働する準備ができている。
密猟、違法伐採、違法な野生生物製品やその派生物の移動をはじめととして、密輸やそれらの製品の使用なども含む野生生物犯罪は、国境を越えて組織化された深刻な犯罪ビジネスとなっている。
野生生物犯罪は、麻薬密売、模造品、人身売買についで、世界で4番目に被害額の大きな違法行為である。
動物愛護は二の次にされており、そのことは野生生物犯罪に関係する種の保全に最終的に影響を与え、すべての生態系を危険にさらしている。
欧州議会は、野生生物売買が重大な経済的、国家の安全保障上、そして環境上の脅威であり、それが法律に反し、持続可能な発展を妨げるものだと認識している。
それゆえ、最高の政治レベルで、国の実施官庁と国際的執行機関との間での、協調的で包括的な対応が求められている。
決議に対して承認された動議には法的拘束力がないが、野生生物製品の違法取引を制限することにより危機を阻止するために、EU加盟国による新しい措置を求めている。
その動議では、欧州委員会は、違法な野生生物の取引に対するEUの行動計画を策定するよう求められており、EU加盟各国の野生生物の法執行をサポートし、それらの国々が組織だった密猟や違法取引に対抗する際に支援を行っている。
それには、違法製品のブラックリストに載せる需要削減キャンペーンの促進も含まれるべきである。
欧州委員会は、Communication on Wildlife crime((仮)野生生物犯罪に関する情報)を2014年の第1四半期に出版すると発表した。
IUCNは、議会が違法な野生生物取引を阻止し、また自然保護に非常に役立つの決議の動議を支援する措置を求めていることをほめたたえている。
「しかしながら、この問題に関してバランスのとれた立場を保つために、IUCNはEUの諸団体が、よく管理された持続可能な野生生物の利用と取引が、南アメリカのビクーニャや多くのワニ類などの例のように、野生生物を効果的に保全し、種の回復を促す役割を持つことを認識することを推奨しています」と、IUCNヨーロッパオフィスのディレクターであるLuc Bas氏は言う。
また彼は、「決議の動議は残念ながら、保護にあたっての積極的なパートナーとして地域コミュニティーと関わっていく重要性、そして野生生物犯罪と闘う取り組みを確保しながら、地域コミュニティーの利益を考慮に入れる必要性を適切に考えることが出来ていません」と続けた。
2013年4月、国連犯罪防止刑事司法委員会の決議が通過し、2013年7月、国連経済社会理事会にて承認された後、欧州議会は決議に対してのこの新しい動議を提案した。
国連決議は、欧州連合加盟国に、組織化された犯罪集団が関与した際には、野生の動植物の不法取引を重大な犯罪とするよう促した。
http://www.iucnredlist.org/news/european-parliament-takes-important-step-to-combat-wildlife-crime
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