ジャマイカツチイグアナにおける20年間の保全活動の成功
翻訳協力:赤瀬 エリサ、校正協力:小林 玲子
2013年10月22日 IUCN Redlist News Release
Jamaican Iguana(Cyclura collei:ジャマイカツチイグアナ)の個体数回復は保全科学において偉大な成功例の1つと考えられている。
1940年代より絶滅が推定されていたが、1990年に、ジャマイカ南部のHellshire Hillsにある人里離れた乾燥熱帯雨林で、少数の個体が発見された。
この発見に刺激を受け、IUCN(国際自然保護連合)のSSC(種の保全委員会)内に Iguana Specialist Group(イグアナ専門家グループ)が設立され、地元の保全パートナーとともに現在まで20年以上にわたり、ジャマイカツチイグアナの野生下で生息する個体を増加させるために取り組んできた。
1991年以降、巣作りをする雌とふ化幼生の年間記録数は6倍以上に増加し、現在、野生の個体数が少なくとも200匹となった。
ジャマイカツチイグアナは絶滅危惧種に関するIUCNレッドリストに絶滅危惧IA類として指定されており、生息地の喪失と侵略的外来種による補食という要因が組み合わさり、その個体群は大いに縮小している。
農業開発や都市開発、木炭製造のための森林伐採は、ジャマイカツチイグアナの熱帯乾燥雨林の生息地を荒廃させ、分断化している。
生息地がまだ良好な状態であるところでは、イヌ、ノラネコ、野生のブタがイグアナを追いやり、森林全体の生態系に影響を与えている。
Hellshire Hillsの熱帯乾燥雨林にあるイグアナの生息地は、世界で最も絶滅の危機が迫る生態系の1つであり、そしてカリブでは最も広範囲に及んでいる生態系でもある。
森林の健康状態はイグアナ次第だ。
というのは、イグアナは果実や花を食べ、種子の発芽や分散を助けるからだ。
それによって、森林における多くの種に利益がもたらされるのである。
ジャマイカツチイグアナは遺伝的に孤立しており、最も近縁なAnegada Rock Iguana (Cyclura pinguis:アネガダツチイグアナ)やGrand Cayman Blue Iguana(Cyclura lewisi:グランドケイマンイワイグアナ)とは、かなり以前に分化していたことがわかる。
それらのイグアナも同様に絶滅の危機に直面しているが、ジャマイカツチイグアナもまた、1800年代後半にジャマイカに入ってきたIndian Mongoose(Herpestes javanicus)と競わなければならない。
マングースは成体のイグアナには敵わないが、卵や幼体のイグアナにとっては貧欲な補食者だ。
現在、ジャマイカ人にとって母国最大の陸生脊椎動物が復帰しているという事実は誇らしいことだ。
イグアナの亜成体の再導入やマングースの捕獲計画導入の前は、幼生やふ化したばかりの幼生をみることは決してなかった。
未だ保全対策に大いに依存している種であるジャマイカツチイグアナは、ジャマイカ政府のConvention on Biological Diversity(生物多様性条約)における関与と同様、数多くの海外の動物園や寄贈者による援助から恩恵を受けている。
しかしながら、ジャマイカツチイグアナの復興計画は現在岐路に立っている。
唯一存在するジャマイカツチイグアナの野生集団が生息するPortland Bight Protected Area(ポートランド湾保護区)において大規模開発が見込まれていることで、種の長期生存計画の主要目的、つまりGoat Islands(ゴート諸島)に安全なイグアナの第2個体群を確立することが阻まれるおそれがある。
この再導入は、現在IUCN-SSCのイグアナ専門家グループより公表されているJamaican Iguana Species Recovery Plan(ジャマイカツチイグアナ回復計画)において優先すべき活動として位置付けられている。
この計画は、ジャマイカの生物多様性の永続的なシンボルを保全する次の段階において計り知れないツールとなることだろう。
「ジャマイカのパートナーとともに、我々は、ジャマイカツチイグアナの復興を保証するジャマイカツチイグアナ回復計画において、9つの目的の活動段階を記述しました」、とRed List Authorityのコーディネーターで、IUCN-SSCのイグアナ専門家グループのプログラム担当官であるTandora Grant氏は語る。
「イグアナのための我々の初めての保全計画ワークショップから20年後となる今年、キングストンで再びお会いできることを楽しみにしております。あの第1回の会合に当専門家グループは端を発しています」。
11月14・15日にジャマイカのキングストンで開かれるIUCN-SSCイグアナ専門家グループの年次総会において、ジャマイカツチイグアナ回復計画が披露される。
http://www.iucnredlist.org/news/20-years-of-conservation-success-for-the-jamaican-iguana
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