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2014年3月12日 (水)

保全活動――復活途上の種を救え

翻訳協力:鹿島 光江、校正協力:井上 舞

2013年10月23日 IUCN Redlist News Release

ウミガメという世界で最も絶滅の恐れがある種を救うことから、特異な両生類を絶滅の瀬戸際から引き戻すことまで、知識と熱意をもち、強固なパートナーシップを活かすことができれば、どのような保全活動への取り組みも成功の見込みはある。
これは今年、10周年を記念してARKiveが打ち出したメッセージである。

ほかに類を見ない野生生物の画像のコレクションを通じて、野生生物の慈善団体であるWildscreenのイニシアティブをとるARKiveは、情報を発信する基地となり、保全活動のための会話を促進する場になった。
生物が多種多様であることの重要性を強調し、自然界に関心を寄せるよう人々を啓蒙し、刺激し続けた10年を記念して、ARKiveは10種を選び、それを呼び物にすることによって保全活動の旗を掲げている。
その10種とは、継続して積極的な動きをとれば、今後10年の間に状況が改善する見通しが立っている種である。

ARKiveが選んだ種は、IUCN(国際自然保護連合)のSpecies Survival Commission(SSC、種の保存委員会)から派遣された専門家との協議を経て選択された。
選ばれた種はさまざまな分類群におよび、我々とともにこの地球を共有している生物が素晴らしい多様性に満ちていることを示している。
選ばれた種は、アフリカ最古の謎めいた哺乳類の1種であるJuliana's golden-mole(Neamblysomus julianae、ジュリアナキンモグラ)から、たった10年で個体数が99.9%も減少してしまったAsian white-backed vulture(Gyps bengalensis、ベンガルハゲワシ)にまでおよぶ。
こうした種を選んだ目的は、野生生物が直面している、数かぎりない脅威に対する認識を高めることにあり、また的を絞った保全活動がいかに効果的であるかを示している。

「ARKiveは世界の優れた野生生物の映画製作者、カメラマン、自然保護活動家や科学者と共に働き、自然界をより深く理解するよう促し、それを保全する必要性を訴えています」と、WildscreenのCEOであるRichard Edwards氏は述べている。
「10周年を迎えた今年、われわれは、地球上の生命の見事な多様性だけではなく、世界中で行なわれている極めて重要な保全への取り組みについても称えたいと思いました。そして皆で共に意識を高め、知識を共有し、積極的な行動をとることによって、保全活動はうまくいく可能性があり、実際にうまくいっているのだということを強調したいのです」。

特に印象的な保全活動として、大きくて飛べない無脊椎動物であるオーストラリアに固有の種、Lord Howe Island stick insect(Dryococelus australis、ロードハウナナフシ)のエピソードが挙げられる。
一種独特なこの虫は、かつてロードハウ島のいたる所にいたのだが、この島に偶然持ち込まれたネズミのためにほぼ絶滅状態に陥り、もともと生息していた場所の南東にある大きな岩の上、180m2の範囲で生き残るのみとなった。
これほどまでに減ってしまった理由はなぜか。
それを詳細につきとめる科学的知識がなければ、この興味深い種は、今ごろ増加の一途をたどる絶滅種のリストに加えられていたかもしれない。
だが科学的な調査を行い、その理由を理解したことに加え、適切な保全対策を有意義に適用したおかげで、ロードハウナナフシをその後数年間で、本来の生息環境に再導入することができたと考えられている。

的を絞った保全活動の結果として危機を脱出しつつあるもう一つの種が、東タンザニアの Kihansi River Gorge(キハンシ峡谷)の2haの生息地でのみ見られる珍しい小型の両生類、Kihansi spray toad(Nectophrynoides asperginis、キハンシヒキガエル)である。
両生類に破壊的なダメージを与える真菌による病気のために、個体数が壊滅的に減少したことに加え、キハンシヒキガエルは生息地を失う影響をこうむった。
2000年に キハンシ川にダムが建設されたおかげで、滝しぶきによって湿り気を得ていたこの小さなヒキガエルの生息地である湿地は干上がってしまい、それに続いてこの両生類はあっという間に減少し、IUCN Red List of Threatened Species™(絶滅危惧種に関するIUCNレッドリスト)でExtinct in the Wild(野生絶滅)と指定されるに至った。

動物園と自然保護団体が協力して働きかけたことで、キハンシヒキガエルの飼育下繁殖プログラムを立ちあげることに成功し、捕獲当時499個体であった数を、驚くことに6,000個体にまで増やすことができたのだった。
自然保護活動家もまた、人工スプリンクラー装置を設置するという異例の措置をとり、2010年までにキハンシヒキガエルの生息地を回復させた。
2012年12月までに、IUCN-SSCのAmphibian and Re-introduction Specialist Groups(両生類専門家グループおよび再導入専門家グループ)から派遣された科学者を含めた国際的な専門家チームは、キンハシ川に2,000個体のキンハシヒキガエルを再導入した。
そして野性絶滅と分類された両生類動物を本来の生息地に戻すという偉業を成し遂げたのである。

「自然界は、ますます憂慮すべき状況になってきており、多くの種が絶滅の瀬戸際にあります」と、IUCN-SSCの委員長であるSimon Stuart博士は語る。
「とはいえ、保全活動が功を奏し、キハンシヒキガエルの再導入のようなサクセスストーリーによって、我々は大いに勇気づけられるはずです。保全活動は、ほかにも多くの素晴らしい功績をあげていますが、それらもまた世界中の専門家と科学者の献身および決断のおかげで状況が好転しうることを示しています。継続的な努力と支援によって、我々には達成できることがたくさんあるのです」。

Kemp's ridley sea turtle(Lepidochelys kempii、ケンプヒメウミガメ)は、世界中で最も深刻に絶滅が危惧されるウミガメと考えられており、主として卵と成体のカメを乱獲したことを理由に、1950年代と1960年代に著しく減少してしまった。
だが、カメの国際取引の禁止と、エビ網にカメが混獲されるのを防ぐ目的で装備されたTurtle Excluder Devices(TEDs、ウミガメ排除装置)の導入を含め、種を守るための保全に向けた一連の取り組みがなされた後、個体数は今、回復の兆しを見せている。

「生物多様性条約の締約国は、愛知ターゲットを通して、絶滅の恐れのある種が絶滅してしまうのを防ぐことだけではなく、種の保全状況を改善することにも合意しました。ARKiveの10周年記念のキャンペーンは、保全活動が重要であるという意識を高め、その保全活動が実際にうまくいくことを示す理想的な機会なのです」と、IUCNのBiodiversity Conservation Group(生物多様性保全グループ)のディレクターであるJane Smart博士は述べている。
「科学的な専門家の大規模なネットワークとともに、世界が打ち出した重要な目標を達成するため、IUCN Red ListのパートナーであるARKiveと、いっそう密接に協力していくのを楽しみにしています」。

自然保護活動家と科学的な専門家の取り組みが、種の絶滅を防ぐのに不可欠な要素である一方で、ARKiveがしきりに強調するのは、驚くほど多種多様な地球の生物が将来生き残っていくために一般の人々が果たす役割である。
周囲をとりまく自然界についてさらに多くのことを学び、その重要性を理解することによって、人々が日常生活の中で、計り知れない価値を持つ生物種と生態系を保全するために、何らかの行動をとることが期待される。
リサイクル活動に参加したり、プラスチックをなるべく使わないようにしたりすることから、魚介類をより賢く選んだり、自然保護に自らの人生を捧げる科学者や何百もある組織を何らかのかたちでサポートすることまで、地球がより健全であることを目指してさまざまな努力をすることが、我々一人ひとりには可能なのだ。

http://www.iucnredlist.org/news/conservation-in-action-the-road-to-recovery

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