コンゴとガボンでのゴリラの再導入、順調に進む
和訳協力:アダムス・雅枝、校正協力:米倉 あかね
2013年10月22日 African Conservation Foundation News
国際的な自然保護に関する学術誌Oryx(オリックス)で本日10月22日に発表された科学的な研究によると、捕獲のために絶滅したアフリカの諸地域へ、ニシローランドゴリラを再導入するAspinall Foundation(ジョン・アスピノール財団)の取り組みは順調に進んでいるようだ。
ニシローランドゴリラは、IUCNによって絶滅危惧IA類に分類されている。
これは今後3世代の間に、野生の個体数が80%減少するという予測に基づいており、地球上でもっとも絶滅の危機に瀕している種と並ぶものだ。
絶滅させられた地域から保護区へのゴリラ再導入は、今もなお論争の的となっているものの、結局、先駆的な長期計画は、成功の兆しを示し始めている。
英国に拠点を置く慈善団体ジョン・アスピノール財団は、各国政府の協力を得て、現在2つのゴリラ個体群を、隣接するコンゴ共和国とガボン共和国に復活させている最中だ。
1996年から2006年の間に再導入されたゴリラは51頭であるが、そのうちの25頭はコンゴのLesio-Louna Reserve(レシオ・ロウナ保護区)に、26頭はガボンのBateke Plateau National Park(バテケ高原国立公園)に放された。
再導入された個体のほとんどが、違法なブッシュミート取引の犠牲となり、日和見主義のハンターによって殺された母ゴリラから幼いころに引き離され、リハビリテーションを受けた孤児のゴリラだ。
孤児となったゴリラの大部分がうつ病や虐待のために亡くなるが、数頭は生き延びて保護され、長期リハビリテーション・プログラムへと引き渡される。
ガボンのプロジェクトで再導入されたゴリラの中には、野生下で生まれた孤児に加えて飼育下で生まれたゴリラ7頭も含まれている。
英国にあるHowletts and Port Lympne Wild Animal Park(ハウレッツ・ポートリム野生動物公園)で行われたジョン・アスピノール財団による飼育下繁殖が成功したゴリラで、アフリカに送り返されたのだ。
献身的な現場スタッフが、両方の再導入地域に放されたゴリラを10年以上も見守ってきた。
International Journal of Primatology((仮)国際霊長類学雑誌)で2012年に発表された先の分析では、再導入プログラムでの導入後の個体群の生存率、出生率と分散に関して、いずれも野生下個体群と同等の値という、成功を収めたことを示している。
200年間に再導入された2つのゴリラ個体群の成長に関するコンピューターシミュレーションモデルを開発するために、この情報を利用して新しい研究がさらに進んでいる。
新しい研究の筆頭著者で、ジョン・アスピノール財団の保全・再導入コーディネーターを務めるTony King氏はこう説明する。
「我々は、再導入されたゴリラが新たな生息地に適応する素晴らしいさまを目の当りにしてきました。また、家族のなかで普通に成長する機会に恵まれなかった孤児のゴリラが多くの出産を経験していることを祝福しています。けれども、再導入の将来の成功を予測するのに役立つように情報をまとめ上げたのはこれが初めてなのです」。
本研究の結果は、再導入されたゴリラ個体群が、200年以上もの間個体群を維持できる可能性が高いことを示唆している。
一方で、より多くの個体を再導入することにより個体群が補強されることで、個体群の存続と遺伝的多様性を保持の可能性を著しく高めることも示している。
「これは、信じられないくらいに役立つ情報なのです。つい先週にはガボンで3頭のゴリラを放しました。そして現在一つの家族ごと、すぐにでも自然に戻そうと準備をしているところです」と、ジョン・アスピノール財団のDamian Aspinall会長は述べた。
モデルの構築は一つの挑戦だった。
「ゴリラは40年以上生きることができますが、通常10歳になるまで繁殖はしません。そしてメスゴリラが、生き残る子孫を産むのは5年に1頭程度です」。
ローランドゴリラ個体群とルワンダの野生のマウンテンゴリラの再導入に力を尽くしてきた共著者のChristelle Chamberlan氏はそう付け加えた。
「再導入されたゴリラ達を10年間モニタリングしてきましたが、それでもゴリラのライフサイクルには我々が知らない多くの側面が依然としてあるのです。予測される再導入の成功が変化するにはどの要因が最も重要であるかを確かめるために、自分たちのモデルをテストしてみました」。
「年ごとの出生率、またはメスの生存率に関する比較的小さな変化が、予測される個体群の長期的成長に大きな変化をもたらしたのです。したがって、健康で繁殖機能が良好なメスのゴリラが多いことは、個体群の存続にきわめて重要です」。
「確かに野心的なプロジェクトといえますね」とKing氏は結んだ。
「これまでの結果は期待以上です。しかしながら、ゴリラはまだ際どい状況の中で生きているのです。再導入された小さな個体群は、常に多くの因子の予測できない変化によって崩壊する危険性をはらんでいます。我々は両地域にもっと多くのゴリラを放つ計画で、このことが個体群存続の可能性を高めるのです。本当に、これはまだ始まったばかりのプロジェクトなのです」。
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