アジア国立公園会議、保護地域連携に関する新時代の幕開けを宣言して閉幕
翻訳協力:兵頭 正志、校正協力:山本 麻知子
2013年11月19日 IUCN News story
アジア全域の国立公園および保護地域に関する世界初の会合で、連携のさらなる強化が宣言され、現在のアジアにおけ急成長の勢いをとらえるものとなるだろう。
宣言の目的は、アジア地域の豊かな生物多様性を保護する一方で、保護地域が人類の進歩へ貢献することを確かなものにするところにある。
アジア保護地域憲章(仙台憲章)は、急成長を遂げているアジア地域における保護地域の将来や人々の福利への寄与に関する計画を促進するため、46カ国から800名を超える代表者が仙台に集結し、出した結果である。
この憲章は、保護地域におけるユース宣言と、IUCN(国際自然保護連合)が2014年にオーストラリアのシドニーで開催するWorld Parks Congress(世界公園会議)という、2つの会合の成果を後押しするものである。
それらは災害リスクの軽減および復興、人々の健康、そして持続可能な経済発展や気候変動などを含む、アジア地域だけでなく世界的にも最も切迫している課題に対して、具体的な行動を求めるものである。
「保護地域は単純に美しければいいのではありません」と、IUCNのアジア生物多様性保護プログラムの代表であるScott Perkin氏はこう語る。
「生物多様性の管理、炭素の貯蔵、自然災害からの被害緩和、食糧や水、繊維の供給、そして地域経済の活性化を行うのです。アジア国立公園会議で合意された仙台憲章やそのほかの重要な実施要求が、アジアにおける保護地域の認知度を高め、またその保護地域が人々の幸福を支えていく上で必要不可欠な役割を担っているということを明らかにする一助となることを、我々は期待しています」。
日本の環境省が主催し、IUCNとともに運営されたアジア国立公園会議の焦点の1つに、三陸復興国立公園があった。
ここは2011年に発生した地震と津波による壊滅的な状況から蘇った新たな保護地域であり、住民や地域社会に希望の種を蒔いている。
これは「Green Reconstruction Project(グリーン復興プロジェクト)」という日本で最も大がかりなプロジェクトで、険しいが風光明媚な日本北東の海岸の復興を理念としている。
三陸地域の復興では、自然を元の状態に戻すだけでなく、地域の文化や生活に活力を与え、ビジネスを活性化させる機会を提供する。
三陸復興国立公園の創設は、適切な管理と持続可能な発展という両面を、保護地域が支えていく可能性を象徴している。
アジア国立公園会議は、三陸復興の例や仙台憲章、またそのほかの成果を受けて、代表者の合意をもって閉会し、IUCN開催の世界公園会議へと引き継がれる。
10年に1回しか開催されないIUCNの世界公園会議は、保護地域にとって最も主要な会議であり、そこでは今後10年間の保護地域の管理に対する方針が設定される。
2014年に開催される世界公園会議のテーマ、「Parks, People, Planet-Inspiring Solutions(公園、人、地球-そこから生まれてくる答え)」は、アジア国立公園会議を足掛かりにしたもので、保護地域が自然保護だけでなく、一方では極めて重要な生態系の恩恵を分配し、経済的目標や地域福祉にも貢献する必要不可欠な役割を担っているということを、2015年以降の開発課題の中でさらに明確に示すことになるだろう。
「今回の重要な結果により、アジア地域と世界との連携が深まると確信しています。さらには、来年開催される世界規模の会議『IUCN世界公園会議2014』との連携も深まるに違いありません」と、熊谷嘉隆氏は語る。
同氏は国際教養大学の国際連携部長であり、地域環境研究センター長でもある。
また、IUCNの World Commission on Protected Areas(世界保護地域委員会)東アジア担当の副委員長を務めている。
「仙台憲章は、多様性やアジアの保護地域の活力に満ちた自然、そしてそこに生きる人々をもとらえ、自然保護だけでなく持続可能な発展の促進に関する中心的役割を、この地域の国立公園や社会が担うことができると結論付けています。この重要な宣言は、今後、数年間に行われるIUCNの世界公園会議および保護地域の会議を啓発するはずです」と同氏は話した。
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