タツノオトシゴに関するクラウドソーシング
スマートフォンの新アプリがタツノオトシゴの科学的知識と保護に希望を与える
翻訳協力:神原 里枝、校正協力:井上 舞
2013年10月25日 IUCN Redlist News Release
ブリティッシュコロンビア大学、Zoological Society of London(ロンドン動物学会)、そしてシカゴのジョン・G・シェッド水族館から海洋保護論者らが集まり、新しいスマートフォンアプリを開発した。
このスマートフォンアプリによって、最も謎に包まれた絶滅危惧種である海洋生物―タツノオトシゴ―に関する新たな発見につながり、また研究が困難だとされるそのほかの種についても、同様の効果を生み出すことが期待されている。
新アプリ「iSeahorse Explore」を起動し、スマートフォンで数回タッチすれば、誰でも、世界のどこにいても、市民科学者として海洋保護に貢献することができるのだ。
このiPhoneアプリは、野生のタツノオトシゴを見かけたら、いつでも手間をかけることなく目撃記録を残せるようにと考案されたものだ。
「タツノオトシゴに関しては、ここ数年で重要かつ科学的な大進歩を遂げてきましたが、極めて謎めいた生き物であることに変わりはありません」と、Project Seahorse(タツノオトシゴプロジェクト)の責任者であり、IUCN(国際自然保護連合)のSSC(種の保存委員会)の内部組織の1つであるSeahorse, Pipefish & Stickleback Specialist Group((仮)タツノオトシゴ・ヨウジウオ類・トゲウオ類専門家グループ)委員長のAmanda Vincent博士は語った。
タツノオトシゴは、小さい上、周囲の環境に紛れ込む可能性があることから、野生での研究が難しい。
絶滅危惧種に関するIUCNレッドリストに掲載されている48種のタツノオトシゴのうち、26種はData Deficient(情報不足)にカテゴライズされている。
つまり、これらの種は生き残っているのか、絶滅しているのか、もしくはその中間に位置するのか、それを把握する情報が不十分というわけだ。
「タツノオトシゴは乱獲や破壊的な漁業活動、さらに生息地の喪失などから絶滅の危機に瀕しているとわれわれは認識しています。今、やるべきなのは保護活動を最も必要とする個体群とその生息地を特定することです」と、タツノオトシゴプロジェクトの共同創設者であり、ロンドン動物学会でGlobal Conservation Programmesの責任者を務めるHeather Koldewey氏は語る。
このアプリと、豊富な機能を備えた姉妹版のウェブサイト「iSeahorse.org」には、市民による最先端の科学グループであるiNaturalist.orgと試験的に提携していることが表示されている。
「iSeahorse」のwebサイトとスマートフォンアプリの次の段階では、ソーシャルメディアの要素を持ちつつ、複雑な個体群を監視し、保護するツールにもなるという新たな機能を付け加える予定である。
「世界中の市民科学者たちと協力し合えば、我々はタツノオトシゴや絶滅の危機に瀕したそのほかの海洋種のために大躍進を遂げることができるでしょう」。
Vincent博士はそう言い添えている。
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