絶滅のおそれのある希少種 野生復帰に成功
翻訳協力:菊地 清香、校正協力:佐々木 美穂子
2013年9月17日 IUCN Redlist News Release
2013年7月2日にLower Vapa村の近くでMontagu's Harrier(Circus pygargus、ヒメハイイロチュウヒ)のひな3羽が農作業中に発見され、パリック動物園の野生生物保護施設に一時的に保護されていたが、この度従来の生息地であるSjenicko-Pester高原に放された。
IUCN(国際自然保護連合)のメンバーであるInstitute for Nature Conservation of Serbia(セルビア自然保護研究所)とReserve Uvac Ltd.は、ひなが自立して生存できることを確認し、パリック動物園の野生生物保護施設の協力で放鳥を行った。
ひな鳥はちょうど1か月前に地元住民のSead Papic氏に発見されたのと同じ場所で放された。
ヒメハイイロチュウヒは希少な猛禽類で、セルビアでは厳格に保護されており、国際的な保護対象種リストにも含まれている。
セルビアではヴォイヴォディナ自治州とSjenicko-Pester高原でしか巣が確認されていない。
今年7月にPester高原で見つかったひなは、近代になってセルビアで営巣が確認されたおそらく初めての例だ。
ヒメハイイロチュウヒ3羽の野生復帰成功が、この絶滅危惧種の保護に寄与した功績は大きい。
また、セルビアの生態系保全全体においても重要な意味がある。
セルビア自然保護研究所のAlexander Dragisic事務局長によると、同国のヒメハイイロチュウヒの推定生息数は近年ではわずか10組から17組ほどだという。
そのヒメハイイロチュウヒが現れたことで、Pester高原の自然の価値が再確認された。
同研究所はPester高原の保護に着手し、特定のイネ類が生育する湿地としてこの地域を守っている。
Pester高原は絶滅危惧Ⅱ類、絶滅危惧IB類、絶滅危惧IA類である多くの生物が生息しており、現にその豊かな鳥類多様性によってすでに2006年にラムサール条約湿地に登録された。
「野鳥を自然の生息地に返すのはいつも難しい挑戦です。ひな鳥は簡単に人に慣れてしまいますから」と、パリック動物園の野生生物保護施設のKristijan Ovari氏は話した。
「今日の活動は、極めて希少な絶滅危惧種の鳥をセルビアの従来の生息地に返したという点でも意味があります。ひなを見つけた住民がすぐに動いてくれたこと、そしてSpecial Nature Reserve Uvac(ユーバ特別自然保護区)、パリック動物園の野生生物保護施設、セルビア自然保護研究所がうまく連携したことが成功につながりました」と、セルビア自然保護研究所のAlexander Dragisic事務局長が続けた。
今回の件に対しユーバ特別自然保護区責任者のBranko Bjelic氏は、Griffon Vulture(Gyps fulvus、シロエリハゲワシ)で知られている同保護区に、人間の活動によって姿を消したEurasian Black Vulture(Aegypius monachus、クロハゲワシ)やLammergeier(Gypaetus barbatus、ヒゲワシ)など、ほかの猛禽類も戻ってくるのではと期待を寄せている。
http://www.iucnredlist.org/news/rare-and-endangered-species-successfully-return-to-nature
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