鳥は地球の危機的状況を知らせるが、環境保全への出資は経済的に有意義
翻訳協力:中島 薫、校正協力:金森 麻里子
2013年7月1日 IUCN Redlist News Release
世界中での鳥の減少によって、地球環境の急激な悪化が、人間を含む生物全体に影響を及ぼしていることが証明された。
だが、かなり少ない金額で地球を守ることができ、それが人間の未来を守るために必要な投資となることも明らかになった。
これらは、International Union for Conservation of Nature and Natural Resources(IUCN、国際自然保護連合)レッドリストのパートナー団体であるBirdLife International(バードライフ・インターナショナル)による『(仮)世界の鳥の状況―変りゆく世界のための指標』という新しい調査報告書に掲載されたメッセージの一部である。
バードライフ・インターナショナルは、先週カナダのオタワで集会を開いて報告書を発表し、人間と自然が調和して暮らす生物多様性に富んだ世界のための構想を明らかにした。
世界の鳥の状況は悪化しつづけており、多くの種が絶滅に向かって個体数が減少し、減少が急速に進んでいる種もある。
鳥は多くの面で脅威に直面しているが、外来種からの直接的な影響とともに、農業の変化による生息地の破壊や劣化が主な原因となっている。
だが鳥は、人間が自然界全体を見渡せるレンズの役目も果たしている。
「鳥は正確で読み取りやすい環境指標を提供してくれます。それによって、人間は現在の生活様式が世界の生物多様性に与えている負担の程度を明確に知ることができるのです」と、バードライフの科学・情報・政策担当理事のLeon Bennun博士は言った。
バードライフのパートナー団体は、最も重要な自然地域を特定している。
これらは、Important Bird and Biodiversity Areas(IBA、重要生息環境)と呼ばれている。
現在12,000か所以上が記録され、近年は主に海洋環境内のIBAの特定に成果を上げている。
IBAは、生物多様性にとって重要な場所を系統的に特定した世界最大のネットワークだが、現存する保全地域として完全に満たされている場所は、その中の28%に過ぎない。
すべてのIBAを効果的に保護し管理するには、年間578億ドルかかるだろう。
すべての野生生物の中で絶滅の恐れのある種の状態を改善するための活動費用を合わせると、自然環境の保全には年間800億米ドルが見込まれる。
「総額にすれば、大変な金額に聞こえるかもしれませんが、政府予算からすれば、わずかな金額ですし、自然環境保全の請求書ではなく投資と見るべきです。その見返りには、気候変動の緩和から作物受粉にいたるまで様々な恩恵や利益が得られるのですから、自然環境の保全は経済的に意味のあることなのです」と、バードライフの科学部長であるStuart Butchart博士は語る。
「もっと根本的に言えば、生物多様性は地球の生命維持システムを支えているのです。私たちが生き残り繁栄するためには、それに気を配らなければなりません」。
この報告書からは、自然環境保全の活動が上手くいっているという肯定的なメッセージが伝わってくる。
集中的な介入により脅威に立ち向かえば、保全は成功する。
絶滅の瀬戸際からよみがえった種もあり、荒廃した生息地を元の姿に戻すことも可能である。
「効果的な自然環境保全が、妥当な金額で成功しています。今が実現させる時です。その結果、あらゆる面でもっと豊かで健全な世界になるでしょうし、多様性と美しさも失われることはないでしょう」と、Bennun博士は結論づけた。
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