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2014年1月25日 (土)

北大西洋のミステリー:消滅したクジラの事例

翻訳協力:蔦村 的子、校正協力:日原 直子

2013年11月26日 Yales Environment 360 Report by Rebecca Kessler

絶滅の危機に瀕しているNorth Atlantic right whale(タイセイヨウセミクジラ)は、通常の餌場であるアメリカ合衆国およびカナダの沿岸沖から姿を消していて、その多数はほかの場所に出現しており、科学者たちは気候変動がこの変化の背景にあるのではないかと思っている。

毎年夏と秋に、絶滅の危機にあるタイセイヨウセミクジラは、動物プランクトンを腹一杯食べるために、ノヴァスコシアとニューブランズウィックの間にあるファンディ湾に群れる。
研究者たちはこの毎年行われる饗宴を、1980年以来詳細に記録し続けてきたが、この祝宴には、種全体のかなりの部分を占める、ゆうに100頭を超えるクジラが通常は参加している。
それが今年に限り、それほど数が集まらなかった。
わずか12頭のRight whale(セミクジラ類)が、やってきただけである。
この数は、ニューイングランド水族館の34年にわたるモニタリング計画においても、記録的に低い。
そしてこの出来事は、出現頭数が少なかったほかの2つの年、2010年と2012年のすぐ後で起こっているのである。

この絶滅寸前の海棲哺乳類の数は、近年カチカチと音を立てて増加しており、500個体をちょうど超えたばかりである。
だから、ファンディ湾に出現した頭数が少なかったことを、種全体の衰退の前兆であると考える者は誰もなかった。
セミクジラ類はほかのどこかに行ってしまったに違いない。
でもどこへ行ってしまったのであろう?
そしてさらに重要なことには、なぜファンディー湾から姿を消したのであろうか?

「私たちのクジラは、35年を超える研究によって予測していた、通常の生息地からいなくなってしまってたのです」と、モニタリング計画を実施している同水族館のシニア・サイエンティストのMoira Brown氏は語る。
「毎日毎日出かけて行って、さっぱりセミクジラ類を見ることがないのは、衝撃的なことです。」

タイセイヨウセミクジラのこの行動変化は、北西大西洋全体で生じている重大な気候関連の生態系の変動を背景に起きている。
Brown氏とほかのセミクジラ類研究者は、この種の食物摂取行動もしくは移動パターンの変化を、地球温暖化を含めたいずれかの要因が原因であると結論づける覚悟はできていない。
ただ彼らにとって確かなことは、セミクジラ類の新しい巡回経路が、食物供給地域が移動したシグナルに違いないということである。
Calanus finmarchicus注)と呼ばれる動物プランクトンは、クジラの主な食料である。
研究者たちは、今年の夏、ファンディ湾でその動物プランクトンが異常に減少していたことを報告している。
そのうえ、いつになくセミクジラ類がたくさんいるケープコッド湾に、その動物プランクトンがますます結集してきており、あまりにその数が多いため、普段は目に見えないこの生き物が水をはっきりとした色で染めていると、ほかの研究者たちは記録している。

別の生態系変化も、アメリカ合衆国およびカナダの東部沿岸沖にある北西大西洋で、進行中である。
最近の研究によると、メイン湾などでは海水の表面温度が上昇しており、cod(タラ)やred hake(レッドヘイク)を含む様々な海洋生物種が、その活動範囲を北方に変えているということである。
増加する降水量、北極海の氷の急速な消滅、そしてグリーンランドおよびカナダで起きている氷床の溶解、これらすべてにより、真水が北西大西洋へとさらに流れ込むと予想されている。
それにより海水の層化と、食物連鎖の底辺に属する植物プランクトンや動物プランクトンの量とその分布の変化が起きていると、研究では明らかにしている。

セミクジラ類がいなくなったことは、海洋生物学者を絶えず悩ませているミステリーであり、マサチューセッツ州ニューベッドフォードで今月行われるセミクジラ類の専門家の年次会合で論議を呼んでいる話題である。
タイセイヨウセミクジラは、かつて個体数が何千頭にも達したことがあり、何世紀にもわたる捕鯨のあとで絶滅という恐ろしい考えにさいなまれた、地球上で最も珍しい動物の一つである。
セミクジラ類は1935年と1949年に行われた捕鯨会議のもとで保護されていたが、今日では船舶との衝突事故や、漁具に絡まったりすることが重大な脅威となっている。

セミクジラ類がいなくなった場所と同じくらい興味深いのは、セミクジラがいる場所である。
Brown氏の研究チームは、セミクジラ類が晩夏に餌場にしているほかの場所に、かなりの数のセミクジラを見つけている。
この餌場はノヴァスコシア南東部に位置するが、彼らが期待していたものではなかった。
この地域に典型的に見られる「年配の賢いクジラ」とBrown氏が呼ぶクジラの代わりに、彼らが見つけたものは、ファンディ湾で特徴的な、子クジラの集団と母子クジラのペア1組であった。
Brown氏はまた、これまでに報告されたことがない、通常の夏の餌場より遥か北にいるセミクジラ類について信用できる報告を受けた。
そこは、ノヴァスコシアのケープブレトン島付近で、今年の夏2頭が出現し、ニューファンドランド北部で昨年の夏2頭が出現している。

しかし、セミクジラ類に関する真に貴重な発見は、冬のケープコッド湾にあった。
当湾で1984年以来セミクジラのモニタリングを続けている、Provincetown Center for Coastal Studies((仮)プロヴィンスタウン沿岸研究センター)のプログラムディレクターで、言動の激しいCharles Mayo氏によれば、クジラはいつも餌を食べるために冬にこの場所に群れをなして立ち寄るが、ここ4年というものその数は急上昇していると、いうことである。

「衝撃的なことに、私たちは当湾で、平均して北大西洋の全頭数の約半分を目撃しているのです」と、Mayoは言う。
そしてその数は北大西洋全頭数の4分の3にも当たる可能性があるとも。
「これはまさに、セミクジラ類の王国とでも言うべきものです」。

かつてないほど多くのセミクジラ類が立ち寄るだけではなく、3ヶ月も早く、つまり、これまでの2月に対して11月末あるいは12月初めに集まっているのである。
またセミクジラ類は、今や単に食物を得るためだけにやって来るのではない。
というのは、食事の合間に交尾をしているのが見つかっているからである。
もうひとつの最重要な事実は、Mayoによれば、昨年1月にケープコッド湾で幼クジラが1頭誕生したことである。
以前には、それまで知られていたクジラの出産はすべて、1,200マイル南のジョージア州かフロリダ州の沿岸沖で行われていたのである。

セミクジラ集団の内部で起きている、こうした劇的な変化はについて、Brown氏とMayo氏は、この現象をどう理解したらよいのかはよくわからないという。
両者とも、たとえ自分たちの研究チームがセミクジラ類の往来の詳細な記録を取るために長期的に骨を折っても、せいぜいこの動物の生態を小さな窓から覗くことができるにすぎないと、すぐに指摘した。
Brown氏によれば、彼女の追跡している行方不明のクジラは、人に知られていないどこか遠くの動物プランクトンでにぎわう場所で、心ゆくまで食事をしているのかもしれない、ということである。

セミクジラ類が好む餌動物であるCalanus finmarchicusの変動の理由については、よくわかっていない。
容疑者として真っ先に考えられるのは、気候変動によるメイン湾の温暖化である。
2012年には、この湾は、ハッテラス岬からアイスランドにかけて広がる巨大な海洋性の熱波の中心であった。
The Gulf of Main Research Institute((仮)メイン湾研究所)とUniversity of Maine(メイン大学)に勤める生物海洋学であるAndrew Pershing氏によれば、この現象は、気候変動と異常に気温が高かった年が重なったことによる結果だということである。
湾の水温は、平均水温より華氏5度高い水温に達し、世紀末までは予想されなかった状態に近づいている。

Woods Hole Oceanographic Institution(ウッズホール海洋研究所)の海洋生態学者Mark Baumgartner氏によれば、水が暖かいと、Calanus finmarchicusの数はより減少するか、栄養状態が悪くなってしまうか、あるいは、Calanus finmarchicusを運ぶ海流の流れを変えてしまう、ということである。
熱波が放散すると共にセミクジラ類はまもなくファンディ湾に戻ってくるだろうと期待していると、Baumgartner氏は述べる。
だが長期的に見れば、セミクジラ類がいなくなったことは、きたるべき事態の先触れであり得ると、氏は語る。
メイン湾は、Calanus finmarchicusの生息範囲の南端であり、Baumgartner氏とPershing氏は、地球温暖化のせいで動物プランクトンは永久に北方に押しやられてしまうかもしれないと、指摘している。
もしそうならば、Calanus finmarchicusに依存するセミクジラ類および、多くのほかの海洋動物は、おそらくその後を追ってゆくであろうと思われ、この場合、湾内の生態系は革命的変化を遂げることになる。

この地域で移動している種は、セミクジラ類とその餌となる動物ばかりではない。
「まったくのところ、私たちが見ていることは、プランクトンから魚を経て海洋哺乳類や鳥類に至る、食物連鎖がすっかり変わってしまっていることなのです」とBrownは言う。
過去数年の間、彼女の研究チームは、ファンディ湾に生息するsperm whale(マッコウクジラ)に注目してきたが、そこで研究チームが目撃したのは、1980年以来、たったの1頭だけである。
1979年以来セントローレンス湾でクジラの調査を続けているMingan Island Cetacean Study((仮)ミンガン島鯨類研究)の創始者Richard Sears氏によれば、今年の夏、ファンディ湾の北方にあるセントローレンス湾内では、数年前までは一日に数十頭見つけられたfin whale(ナガスクジラ)およびhumpback whale(ザトウクジラ)が、今年の夏は確認数が減少して、ほんのひと握りを超える数となってしまったという。
いつもより1月以上遅れてやって来て、いつものたまり場以外に集まるのはわずかで、クジラの群れは湾の外側に居残っているようだった。
Sears氏は、ザトウクジラが、最近通常のたまり場から遥か北にあるバフィン島を訪れたという、信頼できる報告を耳にした。
Richard氏によれば、彼の研究チームの異例の観察による報告の背景にある理由は明らかではない。
もっとも、この異例の報告は疑いもなく、オキアミや魚というクジラの食物に関連しているのではあるが。

ほかの例では、巣作りがいつもより数週間後に遅れ、羽毛が生えそろうまでひなを育てることに困難を抱えたpuffin(ツノメドリの仲間)が挙げられる。
おそらく、魚の供給状態が変わったせいである。
Leatherback sea turtle(オサガメ)は、これまで秋だったのが2ヶ月遅れて、より大きな群れで、ケープコッドの海域を通り南へ向かっている。
今年の秋、これまでのところ50頭を超える数のオサガメが漁具に絡まっている。
5頭あるいは6頭が平均であるが、それを上回っていると、(仮)プロヴィンスタウン沿岸研究センターにおけるクジラ救出プログラムのディレクターScott Laundry氏は言う。
タラ類、ロブスターおよびnorthern shrimp(アマエビの近縁種)は、現在もしくは最近のメイン湾における漁業の柱であるが、より涼しい北部の海域へ密かに逃げてしまったようである。
black sea bass(ブラックシーバス)やlongfin squid(アメリカケンサキイカ)など南部に生息する種までもが、メイン湾に流入してきている。

野生生物の移動の多くが、気候変動による温暖化現象と一致すると、Pershing氏は語る。
ほかの科学者たちは、温暖化が続くにつれて北西大西洋のような地域における海洋生態系は、ひどく乱れた状態に陥ってしまうかもしれないことを指摘する。
海洋の気温や塩分濃度の変化につれて、そして春の到来が早まり、秋の訪れがより遅くなるにつれて、植物プランクトンの異常発生のタイミングや場所、および動物プランクトンの大量発生のタイミングや場所もまた、移動すると思われる。
そして、多くの種の食物摂取、移動、および繁殖のタイミングを狂わせるのである。

セミクジラ類の繁殖時期は、フロリダ州沿岸沖およびジョージア州沿岸沖でまもなく始まる。
クジラの幼獣が多く、そしてその成体が健康そうに見えるなら、専門家たちは夏場にとりとめもない話をするときに気分がよくなる、とBrown氏は述べる。
一方彼女とそのチームは、来年の夏またセミクジラ類がファンディ湾から姿を消したらどうしようかと、計画を練っているのである。

Brown氏らは、漁師やほかの船員たちに協力を得て、クジラを(いつも観察される場所から)遠く離れた所でも見つけるために、彼らに連絡をとろうとし始めていた。
船員がセミクジラ類を避けるのを助けるために、海洋大気庁により提供された新版の応用ソフトのおかげで、彼らは簡単に目撃情報を報告することができた。
そしてBaumgartner氏は最近、セミクジラ類、ナガスクジラ、ザトウクジラおよびsei whale(イワシクジラ)などの、すべて絶滅の危機に瀕したクジラ類の鳴き声を記録、認識し、報告する、自律型の水中グライダーの開発を指導した。
Brown氏は、未確認のセミクジラ類の生息地があるのではないかと疑がわれ、そしてファンディ湾の水温が上昇したら避難所になる可能性のあるセントローレンス湾に、その水中グライダーを、いろんな向きで放ってみたいと思っている。
科学者らは、鳥がセミクジラ類のいる場所へ導いてくれるかを確かめるために、Calanus finmarchicusを食べる海鳥たちに送信機を取り付けてやるアイデアでさえ議論している。

「何かが変わってしまった」とBrown氏は言う。
「野生動物はその変化に反応しているのです。私たちは、セミクジラ類がどこへ行ってしまったのか調べようとして、追跡しています」。

注)カイアシ類のヒゲナガミジンコ目。カラヌス属に含まれる動物プランクトンの1種。ヒゲナガミジンコ目は主として海洋に分布し、魚類やヒゲクジラの餌として重要な種を含む。中でもカラヌス属は、海産の代表的なグループ。

http://e360.yale.edu/feature/a_north_atlantic_mystery_case_of_the_missing_whales/2715/</p>

 

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