カナダ国立公園管理局とハイダ族が海鳥の重要生息地を回復
2013年9月、外来ネズミの駆除により、グアイ・ハアナス諸島に住む文化的・生物学的に重要なウミスズメを保護
翻訳協力:桂 康子、校正協力:石野 精吾
2013年6月 Island Conservation News
Parks Canada(カナダ国立公園管理局)とHaida Nation(ハイダ族)がリーダーシップを取り、海鳥の重要生息地を保護し回復させる取り組みをしている。
カナダで初めての航空機を使った島の生態系からの外来ネズミの駆除である。
この取り組みは、2013年9月にグアイ・ハアナス国立公園・保護区、海洋保護区、ハイダ自然遺産地域で行われる。
「世界の自然保護のリーダーとして、カナダ国立公園管理局は、ハイダ・グアイで繁殖する何百万の海鳥の大部分が棲みかとするグアイ・ハアナスの海鳥保護区の保護と回復に取り組みます」と、グアイ・ハアナス現地監督のErnie Gladstone氏は言う。
「このプロジェクトは生態系の不均衡を修正し、海鳥やほかの生物が元の棲みかに戻って生きることを可能にします。これは健全な生態系の再建にむけての重要なステップです」。
「ハイダ・グアイの森林のある島々の多くにネズミが侵入したということは、昔からの海鳥コロニーのいくつかが消滅したということを意味します」と、ハイダ族長のPeter Lantin氏は言う。
「特に気になるのはウミスズメで、この種は絶滅が危惧されています。現地では"Sgin Xaana"または"夜の鳥"として知られていますが、かつては我々の重要な食料のひとつでした」。
世界中のウミスズメのかなりの割合の個体が、グアイ・ハアナス国立公園・保護区、海洋保護区、ハイダ自然遺産地域の人のいない島々で繁殖する。
ウミスズメはハイダ族にとって文化的に重要な海鳥種のひとつであり、ハイダ族は生計を立てるため、また儀式的目的のためにウミスズメを利用した。
2009年に始まった"夜の鳥回復5ヵ年プロジェクト"は、グアイ・ハアナス内の4島から外来ネズミを駆除し、世界的に重要な海鳥の繁殖地帯である国立公園・保護区内にある営巣地を回復する、カナダ国立公園管理局とハイダ族の共同の取り組みである。
第1段階では、2011年に小さな島々で地上での駆除が実施され、今年始まる第2段階では、航空機による駆除が実施される。
この分野のリーダー的団体であるIsland Conservation(アイランド・コンサベーション
)とCoastal Conservationとのパートナーシップと、また、米国連邦議会によって設立された非政府慈善団体であるUS National Fish and Wildlife Foundation(米国国立立魚類野生生物財団)からの新たな寄付金3960万円(1USドル=99円、9月20日付け)によってこの取組みは支えられている。
世界の成功例を見ると、航空機による駆除は島の崩れやすい生態系の再建に役立っている。
カナダ国立公園管理局は、ニュージーランドとメキシコの専門家達の専門技術を活用している。
オタワでの2013年のBirdlife World Congress(バードライフ世界会議)では、このプロジェクトの第2段階に関して、カナダとハイダ族は、世界の海鳥保護のリーダーとして紹介された。
カナダ国立公園管理局は、カナダの歴史・自然遺産を確実に保護することを活動目的とし、また、カナダ国民と世界の人々を、42の国立公園、167の自然遺産、4つの国定海洋保護区のネットワークというカナダの自然と歴史の中での発見に出会うひとときへと誘う。
グアイ・ハアナスはハイダ族とカナダ政府が共同管理している。
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