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2014年1月21日 (火)

日本では飼育下繁殖が野生のウナギを救うか

翻訳協力:石塚 信子、校正協力:木田 直子

2013年10月10日 Yales Environment 360 Report by Winifred Bird

ウナギの生息数が世界的に急減しているので、日本の科学者たちは競って水産養殖の大きな問題を解決しようとしている。
つまり、飼育下でウナギのライフサイクルを再現し、アジアの卓越した珍味として商業的に産出するという課題である。

今泉均氏は、日本の南、鹿児島県志布志市の増養殖研究所で、キルティングされた銀色のテントを押しやり、漆黒の闇に足を踏み入れ懐中電灯をつけた。
背の高いチューブ型の水槽が現れ、中には、懐中電灯の光を跳ね返して細長い魚が泳いでいる。
ニホンウナギの幼生で、6日前に生まれたばかりである。骸骨のような頭部に大きな黒い目に透明で平たい体。
ある意味、まるで異世界からやってきた小さな訪問客のような風貌だ。
そしてある意味、実際にそうなのだ。

「これは、通常、大洋の真ん中でしか見られません」と、当研究所の水産養殖研究員である今泉氏は言う。

日本は、世界一のウナギ消費国である。
この地で焼かれ、甘辛いタレをからめられ、ご飯の上に載せて食されるウナギの大半は養魚場からのものであるが、そこでは、卵から孵しているわけではない。
世界中の川や沿岸水域から、2インチ(約5cm)のガラスウナギ(透明な体でウナギらしい形を持つ)という野生の幼生を捕獲してくるのである。
ごく最近まで、科学者たちは、ウナギが性的成熟期を迎えて産卵を行う大洋での生態についてほとんど無知であった。

今では、アジア、ヨーロッパ、北アメリカ、そのほか多くの生息地で野生のウナギが絶滅の危機に瀕している。
日本の食文化(そして経済)における世襲財産がウナギとともに消滅しないようにと、研究者たちは、飼育下でウナギを育て、完全養殖を実現しよう必死である。
政府の援助による水産総合研究センター増養殖研究所志布志庁舎の今泉氏とその同僚たちも、この野心的なプロジェクトの最前線で働く科学者たちである。

2010年、数十年に及ぶ研究の成果として、彼らは初めて飼育下で二世代のウナギを育てることに成功した。

彼らの成功は、野生の幼生に頼らずまた大量に殺すことのない水産養殖の可能性を示した。
しかし、残された問題もまだ多い。
商業的にまかなえるほどの規模でウナギを産出する方法を編み出せるだろうか?
もしそれが可能なら、その結果確立される完全養殖によるウナギ水産業界は、環境的に持続可能だろうか?
野生のウナギの生息数を回復させる役に立つだろうか?

その答えは、フィリピンから日本の川、湖、そして河口付近に生息するニホンウナギ(Anguilla japonica)にとってだけでなく、世界中のウナギの品種にとって重要である。
環境NGOグリーンピースの最近の分析によると、世界中で捕られたウナギの少なくとも70 %が日本にやってきている。
昨年は、約半分が日本国内でガラスウナギから飼育され、残りは中国や台湾の養魚場から成魚で輸入された。

多くの国が、その価格が極めて高いアジア向けにガラスウナギを輸出している。
米国においては、メイン州の漁師たちはこの春、1ポンド(約450g)2000ドル(約20万円、1ドル=102円 2013年12月11日現在)でガラスウナギを売り、春の2ヶ月で10万ドル(約1,000万円)を越える利益があった者もいる。
ガラスウナギは川や河口にて網で捕らえられ、アジアへ空輸される。
アジアでは、コンクリートの囲いに入れられ、伝統的料理として給仕するのに適した体長である1フィート(30cm)ほどになるまで育てられる。

ここ数十年で、ウナギの生息数は世界的に急速に減少しているが、それは、ダム建設、水質汚染やほかの環境にまつわる脅威のためである。
現在、ヨーロッパ、北アメリカ、そして日本の生物学者や規制機関は、人気沸騰のガラスウナギ漁にますます懸念をよせている。
多くの幼生が捕獲されることで、さらに生息数が減ると思われるからである。
欧州連合は加盟国に対し、ガラスウナギ漁を抑制する管理計画を作成するように求めている。
米国の職員たちは、成魚のアメリカウナギ(Anguilla rostrata)の生息数が歴史的な少なさに陥ったため、ガラスウナギ漁に対してより厳しい規制をしている。
メイン州では、2009年に5,200ポンド(約2,360kg)であったガラスウナギの捕獲量が、2012年には4倍の20,700ポンド(約9,380kg)となった。

日本の養殖漁業は依然として国産と輸入のニホンウナギに多く大きく依存しているが、間もなくこれは変わることだろう。
日本でのガラスウナギの捕獲量は1960年代の全盛期の5%にも満たなくなっており、2013年の2月には、環境省がニホンウナギを絶滅危惧種とに指定した。
IUCN(国際自然保護連合)は、現在、ニホンウナギの生息地域全体の生息数を査定している。
IUCNが全面的にニホンウナギを絶滅危惧種に指定した場合、貿易規制が行われる可能性も高まる。
環境NGOグリーンピース・ジャパンの海洋生態系問題担当である花岡和佳男氏は、これにより、世界各地のニホンウナギが危機に陥るかもしれないと述べている。

「タスマニア、インドネシア、オーストラリア、フィリピン諸島などでは、スーパーマーケットが代わりの品を探しています」と同氏は言う。
「けれど、漁業が適切に管理されなければ、これらの代替物も同じことになるだけです」。

完全養殖は魅惑的な選択肢を提供する。日本の養殖家たちは、1800年後半からウナギのサイクルの中間期を管理している。業界は必ずしも持続可能ではない(ウナギは魚粉を与えられ、化石燃料で温められた温室に置かれる)が、効率的である。
Satoshi Inoue氏は、今泉氏の研究所に近い孤立した谷あいで年間25万匹のウナギを育てているが、コンクリートの囲いの中に7~10ヶ月入れられても、死ぬのは1%未満であると言う。
化学製品も抗生物質もほとんど使わない。
しかし、ウナギのライフサイクルの初期と末期を再現することはまだ難しい。

主要な問題は多くの魚類に共通であると、ミシガン大学で持続可能な水産業を研究しているJames Diana氏は次のように語る。

「海洋で放卵する種の多くは、プランクトンの中で浮遊するごく小さな卵を産み、99.999%の死亡率に苦しみ、最初の一年を終えるのもままなりません。養殖は、そのような全生涯におけるできごととの闘いです。淡水で放卵する種は、もっと卵が大きく、幼生は丈夫で死亡率も低く、われわれも養殖に成功しています」。

問題は、ライフサイクルの多くの「障害」を魚に無事に通過させることだと同氏は説明する。
たとえば、性的成熟は、光の度合い、水温、塩分などの環境的要因の複雑な組み合わせによって引き起こされる。
幼生の必要とする栄養を満たすこともまたやっかいである。
なぜなら、その食糧のほとんどがプランクトンだが、成魚とは全く異なるからである。

このような困難にもかかわらず、スズキやヒラメなどのような海洋で放卵する種に関しては完全養殖が行われている。
日本の研究者たちは、クロマグロの完全養殖も実現したが、商業的に産出するには、まだ十分効率的とはいえない。

ウナギの場合、科学者たちが直面した最初の障害は産卵であった。

「いかに長く幼生のウナギを飼育しても、自然にそれが成熟するわけではありません」と、今泉氏は説明する。
さらに悪いことに、野生のウナギの性別のバランスは同じなのに、養殖ウナギのほとんどは雄となる。
性別を決定し産卵を促す自然の条件を模倣することは今のところ不可能だ。

その代わりに、科学者たちは人間のカップルが不妊治療院で受けるような厳しいホルモン療法を開発し、そこに性転換を加えた。
今泉氏は、適切な時期に繁殖用のタンクに入れる前に、数ヶ月をかけてウナギ達を繁殖に向けて準備させる。
その結果、かなりの確率で受精卵を供給できるようになった。
しかし、何度も注射し、ほかの品種からのホルモンを与えることはウナギにとってもストレスであり、健康な幼生の数も少なくなってしまう。
今泉氏は、遺伝子的に組み替換えられたホルモンでも実験を行い、よりよい結果が得られるかどうかを模索している。

レプトセファルスと呼ばれる幼生をガラスウナギに変態するまで飼育することは、さらに難しい。
自然界では110日から160日で変態が行われるが、今泉氏の研究所では、平均して250日から300日ほどかかるうえ、その生存率は10%にも満たない。

「これは大きな課題です。なぜならレプトセファルスはそれほど奇妙な幼生であるからです」と、過去50年間、ニホンウナギに関する草分け的研究の多くが行われてきた東京大学の生物学者であるMichael Miller氏は言う。

「幼生の体は薄い筋肉組織層で覆われただけの、エネルギーを貯蓄する透明なゼラチン質でできています。臓器はコンパクトになっているので、幼生はほとんど完璧に透明です」。

2009年、Miller氏の研究チームのリーダーである塚本勝巳氏は、東京から1,000マイル(約1,600km)南東にあるマリアナ海溝付近のニホンウナギの産卵地を正確に指摘した。
この発見は、生態学的に見た産卵と幼生の生活への理解を深めた。

「レプトセファルスは普通の魚の幼生のように動物性プランクトンを食べません。その代わりにマリンスノー(海中懸濁物)を食べます。マリンスノーは植物性プランクトンが海に放出したものと海中の浮遊物が混在してできており、微生物の住処となっています。養殖のために再生することはとても難しいのです」とMiller氏は言う。

今のところ、利用可能な代替物は、主にサメの卵、大豆タンパク質、ビタミンでできているピンクの厚いペーストである。
光を警戒するレプトセファルス(幼生)は、暗い部屋で飼育される。
ペーストを水槽の底に絞り出して光を点灯させると、本能的に幼生たちが下へ泳いで行き、えさにぶちあたる。
この方法は、今泉氏のグループが2010年の歴史的な結果をもたらすには十分に機能したが、えさが水槽を汚すうえ、商業目的で利用するには能率が悪いすぎる。
サメの卵も長期的な解決策ではない。
レプトセファルスが好むサメであるアブラツノザメは、太平洋北西部で絶滅に瀕している。

日本中の研究者たちがこれらの問題を克服し、ガラスウナギを大量に安く産出できる方法を求めて研究を重ねている。
しかし、たとえそれに成功しても、業界の中で広く捕獲から養殖されたガラスウナギへとシフトすることが、野生のウナギに与える影響を予測することは困難である。
IUCNチームの議長であるMatthew Gollock氏は現在、ニホンウナギを査定しているが、大量捕獲は解決されなければならない多くの問題の一つでしかないと述べる。

「われわれは、潮の流れの変化、疾病、公害、漁業、ダムなどの移動への障害、および淡水の生息地の喪失などの因子がすべて、ウナギ科に属する世界中のウナギに影響を与えていると信じています」とGollock氏は言う。
「これらの因子を個別的に排除しても、総括的な問題解決にはならないのです」。

志布志市の研究所では、ウナギ養殖家のInoue氏が、もしガラスウナギを漁業からではなく孵化場から買うチャンスがあれば飛びつくと話す。
3年前にこの仕事を開始したが、シラスウナギの価格は一匹約5ドル(約510円)に急騰し、利益は徹底的に減少している。

「もし、ガラスウナギを育てることができれば、供給も価格も安定するでしょう」と同氏は言う。
しかし、さらに悪いシナリオのほうがあり得ると考えている。
つまり、養殖の技術が進む前に、東アジアからのガラスウナギの輸入が禁止されてしまい、ウナギ料理が非常にレアな贅沢品となり、養殖家たちは生きるためにお互いに闘わなければならなくなるということだ。
もしそんなことになれば、勝利者の仲間入りをするつもりではある。

「中国のガラスウナギ業界は巨大です。ニホンウナギが絶滅危惧種に指定されたからといって、一夜にして消滅するわけではありません。必ず、闇市場で売られることでしょう」とInoue 氏は語る。

そうなったら、闇市場で買うつもりなのだろうか?

「ええ、もちろん」

http://e360.yale.edu/feature/in_japan_captive_breeding_may_help_save_the_wild_eel/2700/

 

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