科学を第一にと、侵略的外来種に対するEUの規制案に235名の専門家が提言
翻訳協力:村田 幸代、校正協力:豊田 実紗
2013年11月27日 IUCN International news release
本日、235名の専門家と36か国(うち23か国はEU加盟国)の団体が、EU全域での侵略的外来種に対する規制について科学的知識に基づいて考案するよう、EUに対する共同声明を発表した。
BirdLife Europe(バードライフ・ヨーロッパ)、IUCN European Union Representative Office(IUCNヨーロッパオフィス)、Neobiota(ドイツの生物学者・生態学者からなる団体)が今回の声明の取りまとめ役となっている。
「侵略的外来種が生物多様性に与える影響は著しいもので、ほかの種の個体数を激減させることもあります。外来種に関する最新の科学的データに基づいて、EUが何を優先的に行わなければならないかを考えるべきです。ヨーロッパのどこにどうやって外来種が導入され、どう繁殖していくのかを知っておくこと、また外来種が現在および将来にどのような影響を与えるかを把握しておくことが重要です。そうして効果のある対策をとることができるのです」と、IUCN SSC Invasive Species Specialist Group(IUCN種の保存委員会・侵入種専門家グループ)代表のPiero Genovesi氏は語る。
「科学的評価グループを立ち上げ、今回の規制案を協力して練り上げていくべきです」。
European Commission(EC、欧州委員会)の侵略的外来種に対する規制案を、科学的知識に基づいて詳細を詰めるよう求めた今回の声明には、数々の大学、研究機関、自然保護団体の代表者が署名し、さらにはヨーロッパ内外の名だたる侵略的外来種の専門家も名を連ねている。
共同声明に署名した専門家は、ECが規制案を作ったことと、EUおよび国内レベルにおいて、有効な対策を行うためには、国際的に足並みをそろえて枠組みを作る必要があると認識している点を評価している。
しかしながら、最も必要なところに対策がなされるように図るには、侵略的外来種に対する戦略と政策が最新の情報に導かれなくてはならないと確信している。
外来種に適切に対処し損なうと、生物多様性条約およびEU targets for 2020(EUが定めた2020年までに生物多様性の損失を阻止するための優先目標)を満たすこともできず、生物多様性に大きなダメージを与えている原因を見逃すということにもなりうる。
バードライフのパートナー団体のRSPB(英国鳥類保護協会)の、Species Policy Officer─Invasive Non-native Species((仮)侵略的外来種チーム・種の保存政策の担当者)であるCarles Carboneras氏は言う。
「生物多様性を保護し、侵略的外来種による社会経済的な損害を最小限に抑えるためには、生物多様性条約の原則に沿った一貫したシステムを作ることです。また代表的ないくつかの外来種を規制の対象にすべきです。今はまだEU内に存在していなくても、将来的に持ち込まれるかもしれない場合はその種もその対象です。何が持ち込まれるかを予測する、あるいは新しい外来種の定着を防ぐ手だてを考えるには、現在の最先端の知識が必要です。そして科学だけがそれを知っているのです」。
侵略的外来種は生物多様性、生態系、経済や人間の健康的な生活に損害をもたらす。
EUにおける損害額は、年間で約1.7兆円(1ユーロ=140.93円、2013年12月8日)を超えている。
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