フィジー最大の海洋保護区はサメの宝庫
WCSと西オーストラリア大学の研究により、海洋保護区には近隣の漁業海域の2~4倍ものreef sharks(珊瑚礁域に生息するサメの仲間)が生息していることが分かった。
翻訳協力:三尾 美里、校正協力:樋口 由紀
2013年7月11日 WCS Press Releases
Wildlife Conservation Society(WCS、野生生物保護協会)と西オーストラリア大学の研究により、フィジー最大の海洋保護区には、漁業が許可されている周辺海域よりも多くのサメが生息していることが分かった。
これにより、海洋保護区がサメにとって有益となりえることが証明された。
禁漁区でのサメの個体数調査により、フィジーのバヌアレブ島の南海岸に位置するNamena Reserve((仮)ナミーナ海洋保護区)のサメの生息数は、漁業が許可されている近隣海域よりも、2~4倍多いことが判明した。
この研究は、雑誌Coral Reefsの最新号で報告されている。
著者はWCSと西オーストラリア大学に所属するJordan Goetze氏と西オーストラリア大学のLaura Fullwood氏である。
研究者たちは、2009年7月4日~28日の3週間にわたりナミーナでの調査を行った。
ナミーナは、1997年に設立された60平方kmの海洋保護区で、地元社会によって管理されている。
サメを調査するために、Goetze氏とWCSフィジーチームはstereo baited remote underwater video systems(餌を付けたリモート式の水中ステレオビデオ装置)を使って、保護区内と保護区外でそれぞれ8か所、どちらも浅い場所(5~8m)と深い場所(25~30m)でデータを採集した。
「本研究は、フィジーの海洋保護区が珊瑚礁域のサメ類に有益であることを証明するだけではなく、新しいステレオビデオ技術を使った非破壊的な方法でこのような結果が得られることを示しています」と、論文の主執筆者であるGoetze氏は説明した。
60分毎の録画ビデオに捉えられた異なる5種のサメの映像から、サメの生息数データを得ることができた。
さらに、Goetze氏と調査団は、サメがカメラから8m内にいる時はいつでも体長や大きさを推定して、この値からナミーナ海洋保護区におけるサメのバイオマス量を推定することができた。
保護区外で漁業が許可されている海域では、サメの生息数は少なかった。
地元フィジー社会では伝統的に、サメは畏敬の対象とされてきたので、サメを食べることは通常タブーであることを研究者たちは指摘した。
WCSの研究者たちがこれまでに示してきたように保護区境界内では隣接する海域に比べて餌となる魚が著しく多く、そのため保護区内のサメ密度が高いのに違いない、と著者は主張している。
サメ製品の需要の高まりにつれて価格が上がり、サメの捕獲へと駆り立てられる地元住民もいる。
同時に、フィジーのサメ個体数は海外の漁船団にも脅かされている。
世界的に、漁獲高の上昇によって世界のサメの種の多くが激減している。
「フィジーからのニュースは、海洋保護区が珊瑚礁域のサメの個体数に好影響を与えうるという確実な証拠を示しています」と、WCS海洋プログラム代表のCaleb McClennen博士は語った。
「サメの個体数は、サメ製品、中でもアジア市場におけるヒレの需要のために、世界的に減少しています。我々は彼ら古代捕食者および彼らが生息する生態系を保護する管理戦略を確立する必要があります」。
本研究はDavid and Lucile Packard財団、Gordon and Betty Moore財団、Stavros Niarchos財団、西オーストラリア大学(UWA)Marine Science Honours program((仮)海洋科学オナーズプログラム)からの惜しみない支援により実現した。
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