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2013年10月 5日 (土)

ついに鉛弾がカリフォルニアコンドルを全滅させてしまうのか

翻訳協力:高橋 舞、校正協力:石原 洋子
 
2013年5月7日 YALE Environment 360  By Ted Williams
 
北米で最大の鳥、カルフォルニアコンドルは飼育下繁殖プログラムによって絶滅から守られ、野生個体数が増加した。
しかし、コンドルは新しい致命的な脅威に直面している。
―狩猟者が使う弾丸の鉛が脅威になっているのだ。
 
毛深いマンモスが牙の高さほどのサバンナをかき分けているのを見ているようだった。
氷河期の残存種がグランドキャニオン上空の突風の中を回転して急降下した。
北米で最も大きく、おそらく最も絶滅の危険にさらされている鳥、カルフォルニアコンドルの羽についているタグの番号が双眼鏡で見えた。
 
1982年には地球上で22羽しか残っていなかった。
そして、U.S. Fish and Wildlife Service(米国魚類・野生生物局)がすべてのコンドルを捕獲し、野生から撤退させ、捕獲飼育するとの決断を公表したことは、大半の環境保護界を憤慨させた。
Friends of the Earth(フレンズ・オブ・ジ・アース)創設者のDavid Brower氏は“尊厳死”を懇願したが、1993年に保護団体のペレグリンファンド(The Peregrine Fund)が飼育下繁殖プログラムを引き受け、プロクラムは驚くべき成功をおさめた。
わずか3年後、コンドルの放鳥がアリゾナ州北部で始まったのだ。
 
今日では234羽(そのうち194羽が捕獲飼育されたもの)が野生に生息している。
しかしコンドルが今後生き残れるかどうかの見通しは、かろうじて1982年より良いだけである。
コンドルは毒に侵されているのだ。
鉛弾は骨に当たると粉々になりやすく、肉や内臓に有毒な破片がしみ込み、コンドルの命を奪う。
腐肉食の鳥や哺乳類はみな、ハンターが獲物を解体した後に残した有毒な内臓を食べるのである。
 
2013年4月16日、州下院公園・野生動物委員会(Parks and Wildlife Committee of the state assembly)が9対5の票で同意し、鉛弾による狩猟がカリフォルニア州で禁止される法案が可決された。
2012年の米国科学アカデミー(National Academy of Science)の研究によると、法案なしではカルフォルニアコンドルの絶滅は避けられないという。
 
脊椎動物が鉛を摂取すると、体はカルシウムや体に良い金属と誤って生命維持に不可欠な組織に取り入れる。
そうすると、貧血、けいれん、麻痺、そして脳、腎臓、肝臓の低下などの症状が出る。
一般的に人間は、運動能力や認識能力の低下にかかわらず、鉛中毒でも生き延びることができる。
(1970年代にアメリカのガソリンから鉛が取り除かれた後、子供たちのIQ値が平均で6ポイント上がったという研究がある。)
しかし野生生物は厳しい自然世界で生き延びるために、細部な点まで調整していなければならない。
したがって、鉛中毒になった野生哺乳動物や野鳥は滅多に生き残れないのだ。
 
今日、野生のコンドルは、血液中に鉛が存在するため、人の手で生命の維持が施されている状態にある。
カリフォルニアコンドルは定期的に捕獲され、カルシウム化合物の薬剤によって解毒されなければならない。
しかし、その薬は鉛と一緒に栄養分も取り除くためにコンドルを弱くし、1か月以上は放鳥できない。
カルフォルニア大学サンタクルーズ校(University of California, Santa Cruz)の研究では、検査された48%のコンドルと1997年から2010年に検査を受け治療されたコンドルの48%から血液中に死の危険性を伴うほどの量の鉛が見つかった。
 
2008年にカルフォルニア州は、コンドルの生息域の中心と推測されている、中部と南部の郡の全域または一部、および7つのシカ狩猟区域で鉛弾を使った狩猟を禁止した。
しかし、この法律はあまり効を奏していない。
コンドルたちは、自分たちがどこに住むべきか、鉛弾の使用禁止区域とは別の考えがあるようだ。
 
州全体に渡る禁止令は議決前だが、コンドルはアリゾナ州やユタ州でも腐肉を食べているので、法案が通っても結果が出るとは限らない。
1996年から166羽ほどの捕獲飼育鳥が2つの州に再導入され、その内38羽は鉛中毒で命を落としている。
だが、カリフォルニア州の法案は、コンドルの生存の可能性を与え、保護政策の前例となるかもしれない。
 
少なくとも130種類の鳥、哺乳類や爬虫類が弾丸から鉛を摂取するため、全国的な禁止は不可欠だ。
2013年3月22日、30人のすぐれた科学者、教授、公衆衛生に関する大家らが、カルフォルニア大学サンタクルーズ校に集められ、狩猟での鉛弾の使用は人間と野生生物に許容できない危険を与えるため廃止するべきだ、という声明に署名した。
 
その危険は受け入れがたいだけではない。不必要なものだ。
粉砕しにくく、遥かに毒素が少ない銅弾は鉛と同様かそれ以上の働きをし、少し値段が高いだけだ。
西部全体に渡って、タカやワシは大型哺乳類の内臓やvarmint huntersと呼ばれる人たちに仕留められ、取り残されたプレーリードッグの死骸を食べ、死んでいっている。
補助金がなくなるまでの5年間に渡り、カンザス州のオーデュボン協会は、varmint hunterたちに銅弾を鉛弾と同じ価格で提供したが、誰も買わなかった。
Varmint huntersはただずっと鉛を使ってきたという理由だけで鉛を好んだ。
 
他のハンターたちは鉛をそれほど常用しない。
サンタバーバラに住むAnthony Prieto氏は、銅弾のみ使うコンドル回復チームのボランティアメンバーで、無毒弾丸の使用と、ハンターに撃った獲物の死骸を土に埋めるように主張するグループ、”Project Gut Pile”の創設者である。
「今では鉛の代わりに銅があるのです。死骸を埋めるだけでは十分ではありません。腐肉を食べる動物は死骸を掘り返してしまうのです。鉛を禁止する必要があります」 と彼は話す。
3年前、Project Gut Pileは、米国環境保護庁(U.S. Environmental Protection Agency)に鉛弾の禁止を請願したが、ガンロビー(銃規制に反対して国会議員に働きをかける人)によって却下された。
 
アメリカではペンキ、パイプ、ガソリンから鉛を除去し、タイヤの重りからも除去している最中である。
しかし、アメリカ人はまだ弾丸について銃の所持権と混同している。
一方、ロシア人は鉛弾の危険性を把握し始めている。
少なくとも軍での鉛弾使用は禁止され、2014年にその法律が実施される。
 
ハンターの擁護を主張する全米ライフル協会(National Rifle Association、NRA)のような団体が、少なくともハンター自身が鉛入りの肉で中毒にならないように、鉛弾の使用の削減を呼びかけるかもしれないと思う人もいるだろう。
しかし、全米ライフル協会は鉛弾規制の提案は、アメリカから武器を取り上げる陰謀だと決めつけている。
 
全米ライフル協会と、ガンロビーを行うもう1つの強力な団体であるサファリクラブインターナショナル(Safari Club International、SCI)は、鉛の破片を摂取することが人間に害するという見解を軽蔑、拒絶し、「メンバーが鉛弾で撃てなくなればメンバーが弱体化してしまう」と主張する。
“canned hunts”(トロフィーハンティングの1つ。飼育されていくらか飼い慣らされた動物の狩り)の宣伝で評判を落としたサファリクラブインターナショナルは、メンバーが獲ったシカを経済的に恵まれないアメリカ中の家庭に配布しているという良いイメージを得ようとしている。
それらの家庭は鉛弾以外の鉛からの被害が比較的高い。
2007年、ノースダコタ州立大学の医学教授、William Cornatzer博士が集めたデータに基づき、ノースダコタ州とミネソタ州保健省は17,000ポンド(約7711.03キログラム)の寄付された鉛入りの鹿肉を押収した。
 
基本的にCornatzer博士は貧困者を中毒させることに反対だ。
Cornatzer博士はサファリクラブインターナショナルのメンバーであり、世界中で狩りをしているが、コンドル生息域での無毒弾丸の使用を主張するペレグリンファンドの役員であることを根拠に、全米ライフル協会は教授が誠実ではないと攻撃した。
そして、全米ライフル協会はアメリカ疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention)とノースダコタ州保健省による追跡調査は「ハンティングにおいての鉛弾の使用制限や禁止の必要性を示すことはない」などと事実に反する主張をした。
 
追跡調査は、鉛弾を使用した狩猟の獲物を体内に摂取することで、血液中の鉛の量が増えることを示している。
しかし、全米ライフル協会の主張が優勢だ。
ノースダコタ州とミネソタ州は妊娠している女性や子供には与えるべきではないとだけ注意し、鉛弾で獲ったシ鹿カ肉を貧困者に配布することを再度認めた。
 
コンドルやその他の腐食動物は、国立公園区域で大量の餌を食べる。
2009年3月5日、合衆国国立公園局で働いている親しい友人が「!」という文字だけの感銘的なメールを送ってきた。
メールにはサービスの理事代行が国立公園で狩猟が認められている場所での鉛弾禁止を命じるメモが添付されていた。
ガンロビーは国立公園局に圧力を加え、禁止令は直ちに修正された。
ハンターは鉛弾を使えるが、公園職員と請負業者は野生のヤギや豚の調教や制御、またはシカやヘラジカの間引きには無毒弾を使わなければならない。
 
連邦政府の生物学者は「我々はなぜコンドルが絶滅するのか、何千ものタカやワシが死んでいっているのかの理由を知っています」と話す。
しかし彼は、銃規制に反対する人々が、情報公開法(Freedom of Information Act)に基づいて政府の情報を使い、彼らの気に入らない情報を公表する研究者を脅すので、匿名を希望し、メールさえもしないでほしいと懇願した。
「さらに耐え難いことに、故意に鉛の破片を肉に加え、貧困で公民権をはく奪された組織のメンバーに与えているのです・・・銃弾に関する決定を下す人たちと、貧しい人々に毒を与えることで”助けている”と壁に賞などを飾る人々は同じ人なのです」。
 
ガンロビーはとにかく一貫している。
25年前、水鳥の鉛弾を使っての猟の代わりに、同じ効力で手頃な価格の無毒鋼鉄製の銃弾に変えようという全国的な活動に対して、全米ライフル協会は次のような警告を出した。
「環境主義を装って鉛弾使用を非難している銃保持反対者は、我々の戦いにおいての足がかりを得ることに成功した・・・我々の敵は武器所持権利の制限に失敗した後、我々の側面を攻撃したのだ」。
 
ハンターの代弁者と名乗る団体ならば狩猟鳥が絶滅したら困ると思うだろう。
しかし、水鳥ハンターがこの国の沼地に花飾りのようにばらまいている致命量の鉛弾を、年間140万羽ものカモが摂取していようと、全米ライフル協会は気にしないのだ。
現在ではハンティング団体、州や連邦政府の野生生物管理者、鳥学者そして環境学者が全米ライフル協会の敵となっている。
カモ類、ガン類やハクチョウなどは、水鳥への鉛弾使用禁止令が全国的に課される1991年まで死に続けた。
そして今日でも(数は前よりも少ないが)、鉛弾の残留物や合法的な高地での鳥の狩猟につかわれる鉛弾によって死んでいっている。
 
鉛弾を使用した狩猟によって引き起こされた、人々や野生生物への危険はほとんど報道されない。
初期に出された唯一の警告は、スポーツ週刊誌Forst&StreamでのGeorge Bird Grinnell氏の発言だ。
「野鳥が餌を砕く砂嚢に散弾が届いたまでは害はない。しかし、粉末になった時・・・猛毒になる」。
これは1894年のことだ。
公益の議論において、ガンロビーはこれほど効果的なのだ。
 
地球上のカルフォルニアコンドルを守るために緊急に行われ、最初の立法上のハードルを乗り越えた活動はどうなったか。
全米ライフル協会によると、強制的な銅弾への切り替えでハンターに迷惑をかけることは、スポーツと合衆国憲法に対する新たな企てであるという。
「カリフォルニアの銃保持反対議員が、狩猟と合衆国憲法修正第2条を毀損する決議を行った」と警戒の叫びをあげた。
 

 

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