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2013年9月27日 (金)

人から野生動物へ――アフリカの保護地域で広がる抗生剤耐性

翻訳協力:山本 麻知子、校正協力:菊地 清香

2013年4月25日 African conservation foundation news

Virginia Tech(バージニア工科大学)の研究者チームが、人から野生動物に抗生剤耐性が広がりつつあることを発見した。
人の数が限られた保護地区で特にその傾向が顕著であることがわかった。

ボツワナでの研究によると、シママングースの場合、集落よりも保護区に生息する試験群や群れのほうが多剤耐性が高かった。

この研究では、人とマングースの間で便の微生物が容易に行き来しており、疫病伝播の可能性が高まっていることも明らかにされている。

バージニア工科大学College of Natural Resources and Environment(自然資源・環境学部)の野生生物学の准教授であるKathleen Alexander氏はこう話す。
「この調査では、人と動物と自然環境が連動していることが明らかになりました。保護区に指定されている地域でも同じです。新しい抗生剤ができる見込みがなければ、野生動物の間で大規模に抗生剤耐性が広がると、人や動物の健康に対する深刻な脅威となります。人と動物の間で微生物が行き来すれば、病気が発生する脅威も増すことになるのです」

The National Science Foundation(NSF、米国国立科学財団)の出資による、人と動物の間でいかに病原菌が移動するのかを調査した研究プロジェクトの内容が、2013年4月24日、EcoHealth誌上に発表された。

『人と野生動物の境界面における病原菌移動の追跡:シママングースと大腸菌』と題したこの論文を共同発表したのは、バージニア州ポーツマス出身で、バージニア工科大学の野生動物科学修士課程の学生Risa Pesapane氏と、微生物学者であり、同大学College of Agriculture and Life Sciences(農学・生命科学部)の食品工学の准教授Monica Ponder氏、そして論文責任者のAlexander氏である。

Alexander氏とPonder氏の二人は同大学のFralin Life Science Institute(フレイリン生命科学研究所)の研究員でもある。

獣医でありnonprofit Center for African Resources: Animals, Communities, and Land Use (CARACAL)の研究者であるAlexander氏は、この地域でシママングースの長期生態学的研究を行なっている。

研究者たちはシママングースの糞のサンプルを、ボツワナのチョベ国立公園内に生息する3つの群れと、公園外の集落に生息する3つの群れから採取した。

「シママングースはゴミをあさり、し尿や野外で見つけた人間のものの中から昆虫を探します」とAlexander氏はいう。
「マングースは他の野生生物や人と接触する上に、広い地域に分布しているので、微生物をやり取りする典型的な生き物なのです。そして、人と野生生物が接触することで病原菌が伝染する可能性が出てきます」。

1つの群れを除き、調査対象となったすべてのマングースがその行動範囲がある程度人の住む領域に重なっていた。
2つの調査対象群の行動範囲には保護区のエコツーリズム施設があり、マングースは人や開発地域と接触していた。
「しかし集落に生息する群れよりもその接触率はずっと低い」、と論文にはある。

糞のサンプルは保護区に生息しているマングースと、その周りにある集落に生息するマングースの群れから採取された。
また人のし尿は、マングースの行動範囲内にある下水処理施設や外に漏れ出したもの、または茂みの中につくられた穴を掘っただけの公衆便所や野外で排泄されたものから採取された。

研究チームは人と野生生物の間における微生物伝達の可能性を探るため、人や動物の腸で一般的に見られる大腸菌をモデル微生物として利用した。
そして人由来のバクテリアの重要な特徴とされる抗生剤耐性の度合いを評価した。

研究者はまた、患者が持つ抗生剤耐性を調査してその地域における耐性のパターンを特定するため、現地の病院からデータを集めた。
アフリカの様々な地域同様、ボツワナでも抗生剤は広く使われており、投与に対する規制はほとんどない。

プロジェクトではアンピシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ストレプトマイシンなど調査地域で調達可能な9つの抗菌剤と、その地域では入手不可能な獣医学薬剤であるセフチオフルについて検査を行った。

すると、シママングースの57%から抗生剤耐性を持つ大腸菌が見つかった。
「耐性は、サンプルとした群れの全ての個体で確認された」、と論文にある。

シママングースが最も耐性を示したのはアンピシリンであり、ドキシサイクリン、テトラサイクリン、ストレプトマイシンがそれに続いた。
しかし、最も警戒すべきは多剤耐性の発生率である。

「意外に思われるかもしれませんが、保護区内の群れと保護区外の群れとの間には顕著な違いがありました」、とAlexander氏は話した。

保護区の外にあるKazungula(カズングラ)の町に生息する1つの群れは、サンプルのマングースの中で多剤耐性のレベルが最も低く、保護区内でエコツーリズム施設の近くに生息する群れは多剤耐性のレベルが最も高かった。

保護区内に生息するこの群れからサンプルとなったマングースのうち少なくとも1匹は、検査された10の抗生剤全てに対して耐性を持っていた。

人の近くに住んでいるマングースにはよくあることだが、エコツーリズム施設の近くに生息する群れは、隣人である人間から与えられたチャンスを利用していたのだ。
従業員宿泊施設のために設備された、ふたのない汚水処理タンクの排水地に巣をつくり、従業員の居住区で食べ物をあさる。
外に置きっぱなしにされた皿の食べ残しを食べることもある。
また、従業員とのある交流が予想もしない結果の原因となった。
調理人が商用に生産された生の鶏肉のゴミをマングースに与えていたのだ。

「こうやってマングースはセフチオフルに対して耐性をつくっていったのでしょう」、とAlexander氏は言った。
公園の中でもこういった影響を受けない地域に生息している群れが耐性を示したのは、アンピシリンのみであった。
「これらの結果は、たとえ人の数が少なくても、人が自然環境に与える影響力は大きいことをはっきりと示しているのです」、とAlexander氏は話した。

この論文では、マングースはその地域の住民と同じ抗生剤耐性を持っているが、そのレベルは低いとされた。
マングースの生息領域から採取された人のし尿のサンプルでは80.3%が少なくとも1つの抗生剤に対して耐性を示した。
現地の病院で検査された人の臨床サンプルでは、さまざまな検出菌種の89.9%に少なくとも1つの抗生剤に対する耐性が見られた。

「この研究は、人のし尿が環境を直接汚染していることが、微生物が野に放たれ、その地域に生息する野生生物に伝染する大きな原因である可能性を直接的に裏付けるものになりました」、とPonder氏は言った。
Ponder氏はバージニア工科大学に来る前、U.S. Centers for Disease Control and Prevention(アメリカ疾病管理予防センター)に在籍していた人物である。
「エコツーリズムの発展は環境保護や経済成長にとっては重要なものですが、エコツーリズムにかかわる人が出すゴミには排泄物や汚水が含まれるので、野生生物を人由来の病原菌や抗生剤耐性にさらすことになる場合もあります。
最終的にそれが、人の健康に対する将来の脅威を増やしているのです」、とAlexander氏は言った。

この研究プロジェクトには、国立科学財団のDynamics of Coupled Natural and Human Systems award、Morris Animal Foundation(モリス動物財団)、WildiZe Foundationが資金を提供した。また、Pesapane氏には、国立科学財団の科学・技術・工学・数学分野のための奨学金が部分的な財政援助として付与された。

「微生物の伝達やマングースにおける抗生剤耐性の累積の影響は、食物網を介して広がっていくでしょう」、と研究者たちは締めくくっている。
「マングースは多くの鳥類、は虫類、そして飼い犬を含む哺乳類の捕食者のえさになります。そのため、野生生物を人の排泄物由来の微生物にさらす影響は連鎖的に伝わっていき、生態系全体において感染しやすい数々の種が影響を受け、そして今度は人間が微生物にさらされることになります。人と自然体系は複雑に結びついているのです」。

研究者たちは、下水設備にふたをつけ、ゴミ容器を野生生物があされないものにし、キッチンから出る鶏肉や家畜生産品のゴミを野生生物にも家畜にも与えることを禁止するよう薦めている。

「私たちが自然環境を変えていくにつれて、その変化が今度は私たち自身の健康にも影響を与える可能性があります。私たちはそのような影響を最低限に抑え、人と野生生物と生態系の健全性を守る継続的な取り組みを促進するため、ボツワナ政府の保健省やMinistry of Environment, Wildlife, and Tourism(環境・野生生物・観光省)とともに活動しています」、とAlexander氏は語った。

「地球の持続可能性や健康に関する問題は多角的なものであり、人と野生生物の接触がこのように複雑になっている状況で健康への脅威に対処するためは、総合的な取り組みが必要不可欠である」ことをこの研究の成果が立証していると、Pesapane氏は話す。

人の健康や幸福、そして自然資源保護の相関性を指摘しながら、Pesapane氏は続けた。
「地域社会の生活の質も向上させなければ、環境保護の問題にとりかかることは不可能なのです。

「国立科学財団出資のプログラム下にあるバージニア工科大学とCARACALの共同プログラムはこの考えを具現化しています。プログラムの対象を拡大してチョベ地区での調査に教育の福祉計画を加えたり、人々の生活の質を改善するためにボツワナ政府と協力体制を作ったりしています」。

2011年12月にバージニア工科大学で野生生物科学の修士号を得たPesapane氏は、現在Rural System Inc.でプロジェクト責任者を任されている。
「Alexander研究室や非営利団体であるCARACALでの経験、大学のfish and wildlife conservation department((仮)魚類・野生生物保護学科)で受けた教育が、地球規模の環境保護活動というやりがいのある仕事にとってのしっかりとした基盤になっています」、とPesapane氏は語った。

Alexander氏はこうまとめる。
「次に私たちがやるべきことは、相互に依存している自然、微生物のやり取りにかかわる人間側の担い手、病気の発生、そして野生生物や自然界における抗生剤耐性の広がりを明らかにしていくことです。このことは現在の人と野生生物の接触に効果的に対処し、人と野生生物と私たちが依存している環境の健やかさを守るために必要不可欠であるといえるでしょう」。

http://www.africanconservation.org/wildlife-news/item/humans-passing-drug-resistance-to-wildlife-in-protected-areas-in-africa

 

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