サヘルサハラ地域の生物多様性に関する会議で、砂漠にすむレイヨウ類の保護におけるCMSの役割を強調
翻訳協力:吉野 由美子、校正協力:加藤 哲子
2013年5月9日 CMS News
2013年5月2~4日にモロッコのアガディールで開催されたSahelo-Saharan Interest Group(SSIG/(仮)サヘルサハラ地域利益団体)の会議の期間中、この地域のレイヨウ類の保護を促進する活動におけるCMSの役割が強調された。
レイヨウ類には、アダックスやダマガゼルのように深刻な絶滅の危機にさらされている種や、シロオリックスのように野生ではすでに絶滅してしまい、保護飼育されたものの中からもとの生息地に再導入するしか復元の方法がない種も含まれる。
1994年以来、CMSはサヘルサハラ地域のレイヨウ類の保護の共同作戦の先頭に立ってきた。
共同作戦の目的は、この大型哺乳類のグループを元の状態に戻し、地域における自然保護と地域の継続的発展を促進することである。
計画は、まず条約のボン条約科学委員会によって提案され、その後、1994年のナイロビでの締約国会議で採択された。
1998年には、チュニジアのジェルバ島で開かれた特別会合に集まったすべての国によって、保全のための活動計画が採択された。
この活動計画を実行するため、ここ数年の間に二つの大きなプロジェクトが展開されてきた。
一つめは、2003年から2010年までの期間に、the Fonds Francais pour l'Environnement Mondial(FFEM/フランス地球環境基金)との共同出資で行われたもの、二つめは2006年から2012年の期間にヨーロッパ連合との共同出資で行われたものである。
この計画の第三段階を行うための資金援助については、フランス開発庁の認可がおりている。
この継続的な保護活動の努力が成し遂げた画期的なできごとの一つは、ニジェール政府によってTermit tin Toumma自然保護区が指定されたことである。
Termit tin Toumma自然保護区は97,000平方kmにも及ぶ広大な区域で、この地域に残された砂漠の生物多様性の最後の拠点の一つであり、Saharan cheetah(サハラ砂漠の中西部とサヘル地域に生息するチーターの亜種)の個体群が生き残っている。
会議期間中、この地区の広範囲に及ぶガゼルの密猟も大きく取り上げられた。
密猟は、以前はラクダに乗って行われていたが、今ではバイクや四輪駆動車を使った組織的な集団によって行われている。
また、子どものガゼルを捕まえて取引する慣習もある。
マリでのゾウの保護に関する興味深い事例研究として、マリの北部地域で武装集団が横行した際、the WILD Foundation ((仮)WILD財団)によるthe Mali Elephant Project((仮)マリ・ゾウプロジェクト)がどのように対処したかという事例が紹介された。
氏族の指導者や長老たちは密猟を防ぐため責任を持って取り組み、同時に若者たちを募ってゾウの殺戮に関する情報を集める警戒ネットワークを作った。
6頭のゾウが殺されたが、大量殺戮の可能性があったことを考えれば、被害はわずかであった。
SSIGは、サハラ砂漠における生物多様性の保護に共通認識を持って関わっている組織の一つである。
SSIGの会議は、北アフリカや中東の乾燥地域内で野生動物の保護活動をしているすべての人たちのための討論の場であり、2001年の発足以来、毎年開催されている。
この会議では人々が一堂に会してアイデアやプロジェクトを共有し、サヘルサハラ地域の野生動物と人々のために、堅固な協力の伝統を継続する機会を提供している。
会議の進行はSahara Conservation Fund((仮)サハラ保護基金)が担い、会議では多種多様な時事問題を網羅した一連の発表とディスカッションが行われる。
http://www.cms.int/news/PRESS/nwPR2013/05_may/nw_090513_ssig.html
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