絶滅に瀕するクロスリバーゴリラのシルバーバック、殺害される-カメルーン
翻訳協力:椿 範子、校正協力:森田 みどり
2013年3月23日 African Conservation Foundation Wildlife News
今月初旬、カメルーン北西部Santa県Pinyinに近いレビアレム高地で、1頭のオスのクロスリバーゴリラが銃殺された。
このシルバーバック(成熟したオスのゴリラ)がいるとの報告は、地元に住む女性教師から寄せられた。ゴリラは2013年3月1日早朝、彼女が農場へ向かう途中に、村からおよそ1キロメートル離れた地点で目撃された。Pinyinは、設立が提案されているTofala Hill野生生物保護区からおよそ33kmの場所にある。
「この40歳を超えるシルバーバックの殺害を命じたのは、Pinyinに拠点をおく憲兵隊の隊長でした」と、the Environment and Rural Development Foundation ((仮)環境・農村開発基金、ERuDeF) の野生生物専門家、Neba Bedes氏は言う。「絶滅危惧種のゴリラが、地域住民に危害を与えているのか判断する安全チェックも実施されず、『自己防衛』という名目で殺害されたのです」。
証言によると、ゴリラは銃弾45発のほか、こん棒や石を使って殺害され、血の海に放置されていた。
このシルバーバックの死は、カメルーンと地域の保護活動のみならず、野生生物保護活動全体にとって非常に大きな痛手となる。クロスリバーゴリラは、アフリカで最も希少かつ絶滅の恐れがある類人猿で、世界で最も絶滅が危惧される野生生物25種に数えられる。ナイジェリアとカメルーンの国境地域に生息するゴリラの数は、残りわずか300頭ほどである。
森林・野生生物省の北西部地域代表は、人間の親戚にあたるこのシルバーバックの死を悼み、Tofala Hill野生生物保護区設立に向けた国境地域住民の意識向上に、省としてこれからも努力していくと述べた。
2004年以来ACF(African Conservation Foundation、(仮)アフリカ環境保護基金)はERuDeFと協力し、この貴重な大型類人猿の保護区設立に取り組んできた。この地域には、およそ40頭のクロスリバーゴリラ、150頭以上のカメルーンチンパンジー(またはナイジェリアチンパンジー)のほか、絶滅の恐れがあるさまざまな動植物種が生息している。
保護区の設立予定地域からおよそ33kmの場所にシルバーバックがいたことは、Tofalaのゴリラが隔絶された種ではなく、カメルーン南西部にいるクロスリバーゴリラの亜母集団と遺伝的な関係を継続している証拠となる。
Tofalaでは、クロスリバーゴリラはほとんど目撃されていない。最近では2013年2月24日に、Wabane県の役人がMenjiへ向かう途中Besaliの森の中で目撃した。
さらに、殺害されたシルバーバックが生息地から移動していたことは、Tofalaの森に生き残ったゴリラが、人間による強い圧力に直面していることを証明している。森林の急激な農地への転換や密猟などがこうした圧力となる。
このためERuDeF、ACFおよびその出資者は、カメルーン政府に対しTofala Hill野生生物保護区とレビアレム高地保護地域群で提案されているその他の保護区の設立手続きを速めるよう求めている。
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