ソトイワシ、カライワシ、ターポンの保全には経済的誘因が効果的
翻訳協力:湊 紗矢可、校正協力:鈴木 洋子
2013年2月25日 IUCN News
今回初めてIUCN(International Union for Conservation of Nature/国際自然保護連合)のレッドリストに関連して、世界的に暖水域に生息する海洋生物であるターポン類、カライワシ類、ソトイワシ類の全種が調査された。既知の17種のうち、ターポン(Megalops atlanticus)とマルクチソトイワシ(Albula glossodonta)の2種が絶滅危惧II類に指定された。ソトイワシ類の1種である Albula vulpes は準絶滅危惧種に、そのほか3種が軽度懸念、11種が情報不足として指定された。
水産科学者、魚類生態学者、自然保護活動家が協力し、娯楽的にも経済的にも重要な沿岸魚がさらされている脅威について、初の共同調査が行われた。
「Bonefish & Tarpon Trust (BTT)は、健全な漁場の保護、低迷した漁業の復興、そして健全な漁場を将来まで確保する手段として、長年ソトイワシとターポンの生息地の研究と保全をサポートしてきました。」と、BTTの代表であり、Mote Marine Laboratoryの名誉上席研究員及び研究論文の主執筆者であるAaron Adams博士は言う。「私達は、IUCNが専門家グループを引率し、世界的な調査を行ったことをうれしく思います。今回の調査は、今後の研究と保全活動、そしてこれらの種への関心を集めるのに大いに役立つでしょう。」
沿岸地域は長年、重要な経済的効果のあるソトイワシやターポン類の遊漁に支えられてきた。この調査で、経済価値の高い遊漁地やキャッチ・アンド・リリースを行っている漁場を支援している地域では、これらの種の生息数が安定していることが判明した。この新たな情報は、遊漁利害関係者が関心を寄せるこれらの種と漁業の将来を守るため、政府が判断をくだす際に役立つ大変重要なデータとなるであろう。
ハンプトン大学の助教であり、研究論文の共同執筆者であるAndrij Horodysky博士は言う。「地元の漁師は、自然保護に強い経済的インセンティブを見出しています。生存期間中に何度もリリースされた魚の経済的影響は、その魚を食用として売った時の価値を上回るからです。発展途上国での同じような漁場づくりは、経済的インセンティブで保全を促すと同時に地方開発とインフラを後押しし、保全に熱心な釣り人を誘致することができるでしょう。」
多くの沿岸漁種について、保全と管理における難題は、世界中で起きている生息地の喪失と生息環境悪化がもたらす脅威への対処だけにとどまらない。もっと差し迫った脅威として、生息数、生息地利用、捕獲といった基本的な情報が全般的に不足していることである。今回の世界的な調査は、ターポン類、ソトイワシ類、カライワシ類がこれらの脅威に度々さらされており、それによって保全と管理プランの策定が大いに抑制されていることを明らかにした。
「これらの種の中には、この地球上で何百万年もの進化を生き抜いてきた種もあるが、今後は生息地の減少や沿岸地域の開発の増加といった多大な困難が待ち受けているかもしれない。」とバージニアにあるオールドドミニオン大学のIUCN Global Species Programme Marine Biodiversity Unit局長のKent Carpenter教授は言う。「多くのターポン類、ソトイワシ類、カライワシ類の生息地は広域に分布しているのですから、地域ごとの保全活動と管理プランを可能な限り実施すべきです。」
これらの種は、地理的な分布域の全域で経済的、文化的に重要であることから、特に発展途上国での種の管理と解明されている脅威への対処に必要な情報を収集することに、より多くの関心を持つべきである。この調査は、そのような取り組みを始める基盤を築いたといえる。
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