アフリカのサイがもう長くはもたないとIUCNの専門家が警告
2013年2月26日 IUCN News
校正協力:松崎 由美子
IUCN(国際自然保護連合)の専門家によって明らかにされた事実によると、2006年以来、アフリカ全土で密猟されたサイは2400頭に迫り、アフリカに生息する2種のサイのどちらも、個体数の増加率が1995年以来最も低くなっている。
IUCNの種の保存委員会(Species Survival Commission : SSC)のアフリカ・サイ専門家グループ(African Rhino Specialist Group)によれば、サイの密猟は、2011年から2012年にかけて43%増えており、これは2012年のサイの個体数のおよそ3%にも及ぶ。専門家は密猟がこのまま増え続ければ、サイの個体数は2年以内に減少し始めるだろうと予測している。
IUCN種の保存委員会のアフリカ・サイ専門家グループ代表Mike Knight氏は次のように話す。「うまく組織された資金の豊富な犯罪組織が、サイの角を絶えずブラックマーケットに供給してその成長を支えています。ここ数年、サイの角の消費はアジアの漢方薬としての用途からステータスの証しといった新しい用途に変化してきました。特にベトナムでの大量消費による需要の急増が、過去20年間の保全活動で得られたかなりの成果を帳消しにしてしまう恐れがあります。」
現在のところ、アフリカには5,055頭のクロサイ(Diceros bicornis)と、20,405頭のシロサイ(Ceratotherium simum)が生息している。過去2年にわたり、両種はわずかに個体数を増やしてきたが、満足している余裕はない。2012年には、アフリカ全土で少なくとも745頭のサイが密猟されたが、これは過去20年で最も多く、 南アフリカだけでも記録的な数となる668頭が殺された。2013年は年明け以来、11時間に1頭の割合でサイが密猟されており、これは2012年の平均よりも高い比率である。
サイの角の違法取引には大規模な犯罪組織が連携して関わっており、サイの角は主にベトナムと中国に運び込まれている。また、世界最大のサイの生息地である南アフリカのクルーガー国立公園には、モザンビークから国境を越えて密猟者が侵入しており、モザンビークもまたサイの密猟に大きな役割を担っていることが明らかになっている。さらにモザンビークはアジア向けの違法なサイの角の主要な中継地点ともなっている。
IUCNの専門家は国際社会、特に主要消費地や流通の中継地点となっているベトナム、中国、モザンビークに向けて、地域的、国際的な貿易法を、特にサイの角に関して強化し施行することによってこの危機に早急に対処してほしいとの呼びかけを行っている。
IUCN種の保存委員会のSimon Stuart議長は以下のように述べている。
「ほかの保全問題に加えて、まん延するサイの密猟に対処するために近年南アフリカとベトナムとで交わされた覚書の調印によって、サイに関係するコミュニティーは勇気づけられました。しかし、両国政府の具体的な行動によって、この覚書を補強する必要があります。野生生物犯罪に対処するためには、知識、情報、専門的技術などをしっかり共有しなければなりませんから、国際的、地域的な協力を強化する必要があります。」
サイの危機に関する最新の事実は、タイのバンコクで3月3日から14日にかけて行われるCITESの第16回締約国会議(CoP16)の直前にもたらされた。サイの角の違法取引は、Cop16で取り上げられる多くの課題の一つとして議論される。
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